kuタl タアixウヌ 一 - chiba uopac.ll.chiba-u.jp/da/curator/900108437/kj00004742141.pdfloids...

7
毛主 〔千葉医学 ,⸮⸮ ㄹ㠰⤠ 〔講座〕 実験的肺高血圧症 ⵍ潮潣牯瑡汩湥 ラット肺高血圧症の病態生理と成因についての検討一一 椙田 隆⪌䦎劋ꪔ嘪渡辺昌平* ⢏몘a日受付⤀ 䭥礠 睯牤猺 原発性肺高血圧症,実験的ラット肺高血圧症, 䵯湯捲潴慬楮e ,右室収縮期圧,右室 肥大,血管作動性物質。 略語一覧:倮 倮 䠮㨠 偲業慲礠 灵汭潮慲礠 桹灥牴敮獩潮 はじめに 原発性肺高血圧症 ⡰物浡特 灵汭潮慲礠 桹灥牴敮- 獩潮㬠 偐䠩 は,現在,原因不明の肺高血圧症をきた す疾患の臨床診断名として用いられている。しかしその 成因,病態生理については,不明な点が多く治療法もい まだ確立されていないのが現状である。近年心臓カテー J レ検査をはじめとする診断技術の進歩と,本症につい ての病態の認識がたかまって,報告例が増加している。 ㄹ㜰 年に, 坡来湶潯牴 らㄩは, 施設で臨床的に本症 と診断された ㄵ6剖検例について, 病理組織学的検索を 行ない,そのうち肺動脈中膜の肥厚,内膜の同心円状の 線維化, 灬數楦潲洠 汥獩潮 を認める ㄱ0症例を血管箪縮 による原発性肺高血圧症と呼び,一つの疾患単位とみな しうることを明らかにした。 ㄹ㘷 年スイス,オーストリ ア,西ドイツを中心として,やせ薬 䍁浩湯牥x 晵m- 慲慴攩 の服用者に 偐H と形態学的に同様の所見を示 す肺高血圧症が流行したこともあって円、注目を集め, ㄹ㜳 年に羽呈O の要請により, ジュネーブにおいて, 偐H についての討議が行われた汽 本邦においては, ㄹ㜴 年われわれは,全国の ㌰0 床以 上の施設に対して, 偐H についてのアンケート調 査を行ない, 自験例および 施設よりご協力いただい た, ㄴ7症例につき自己検索し,第 回日本循環器学会 シンポジウムにおいて,渡辺ら心が発表し注目を集め た。 偐H は稀な疾患であり,世界のいずれの固におい ても疫学調査は実施されていない。本邦では,諸外国に *千葉大学医学部附属肺癌研究施設内科 さきだち, ㄹ㜵 年の厚生省特定疾患に 偐H が取りあげ られ調査研究が行われ,診断基準も試案され,本症に対 し各方面からの解明に多大の努力が払われている。 偐H が比較的稀な疾患であることから,臨床実験的試みを行 うには,多大の困難を伴うこともあり,そのため適切な 動物実験モデルの作成が切望されている。従来より行わ れている代表的な実験的肺高血圧症作成としては, 左右短絡作成によるもの, 肺静脈高血圧症によるも の, 肺塞栓症によるもの, 低酸素負荷によるも の, 㔩 䵯湯捲潴慬楮e によるもの, 等がある。本稿 で、は,われわれが, ヒト肺高血圧症のモデ、ノレとして,研 究している 䵯湯捲潴慬楮e ラット肺高血圧症について, 現在までの成績を中心に述べてみたい。 実験モデ、j レ一一䵯湯捲潴慬楮e ラット肺高血圧 症について 実験方法 われわれは, 匭D 系ラット雄 ⠴ -5 週齢,体重㘰- 㠰朩 % 䵯湯捲潴慬楮e 溶液を ㌰ⴴ0 浧⽫g 割合で上背部に一回皮下注射し0 C 室温下,水およ び市販の固形飼料を与え飼育する。注射後 ㌭4 週後に 右室肥大と,いちじるしい右室内圧上昇を認める実験的 肺高血圧症を 㤰% 以上の確率で作成することに成功して いる。右室内圧の測定は,ネンブターノレ麻酔後,気管切 開を行ない, 䡡牶慲d のレスピレーターに接続し,右 外頚静脈よりポリエチレンカテーテルを右室内に掃入 し記録した。また心臓はホルマリン固定後右室自由壁 䍒嘩 と左室および心室中隔部 ⡌嘫匩 2 分割し, 呁䭁午䤠 单䝉呁 呁䭁奕䭉 䭕剉奁䵁 慮搠 午佉 䕉圠䄠吠 䅎䅂䔺 䕸灥物浥湴慬 灵汭潮慲礠 桹灥牴敮獩潮ⵓ瑵摩敳 潮 灡瑨潰桹獩潬潧礠 慮搠 整楯汯杹 潦 䵯湯捲潴慬楮攭楮摵捥搠 灵汭潮慲礠 桹灥牴敮獩潮 楮 瑨攠 牡琮- 䑥灡牴浥湴 潦 䍨敳琠 䵥摩捩湥 䥮獴楴畴攠 潦 偵汭潮慲礠 䍡湣敲 剥獥牣h 卣桯潬 潦 䵥摩捩湥 䍨楢愠 啮楶敲獩瑹 䍨楢愠 ㈸〮 散敩癥搠 景爠 灵扬楣慴楯n 䑥捥浢敲 ㄹ㜹⸠

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Page 1: kuタl タアIxウヌ 一 - Chiba Uopac.ll.chiba-u.jp/da/curator/900108437/KJ00004742141.pdfloids ヘ24ヤネノョSノモウニ「B ア フ Pyrrolizidine alkaloids ャョィCチノc

毛主

〔千葉医学 5659651980)

〔講座〕 実験的肺高血圧症

一-Monocrotaline ラット肺高血圧症の病態生理と成因についての検討一一

椙 田 隆栗山喬之渡辺昌平

(昭和54年12月25日受付)

Key words 原発性肺高血圧症実験的ラット肺高血圧症 Monocrotaline右室収縮期圧右室

肥大血管作動性物質

略語一覧P P H Primary pulmonary hypertension

はじめに

原発性肺高血圧症 (primarypulmonary hyperten-

sion PPH)は現在原因不明の肺高血圧症をきた

す疾患の臨床診断名として用いられているしかしその

成因病態生理については不明な点が多く治療法もい

まだ確立されていないのが現状である近年心臓カテー

テJレ検査をはじめとする診断技術の進歩と本症につい

ての病態の認識がたかまって報告例が増加している

1970年に Wagenvoortら1)は 51施設で臨床的に本症

と診断された 156剖検例について 病理組織学的検索を

行ないそのうち肺動脈中膜の肥厚内膜の同心円状の

線維化 plexiform lesionを認める110症例を血管箪縮

による原発性肺高血圧症と呼び一つの疾患単位とみな

しうることを明らかにした 1967年スイスオーストリ

ア西ドイツを中心としてやせ薬 CAminorexfum-

arate)の服用者に PPHと形態学的に同様の所見を示

す肺高血圧症が流行したこともあって円注目を集め

1973年に羽THOの要請により ジュネーブにおいて

PPHについての討議が行われた汽

本邦においては 1974年われわれは全国の 300床以

上の1000施設に対して PPHについてのアンケート調

査を行ない 自験例および 64施設よりご協力いただい

た 147症例につき自己検索し第 38回日本循環器学会

シンポジウムにおいて渡辺ら心が発表し注目を集め

た PPHは稀な疾患であり世界のいずれの固におい

ても疫学調査は実施されていない本邦では諸外国に

千葉大学医学部附属肺癌研究施設内科

さきだち 1975年の厚生省特定疾患に PPHが取りあげ

られ調査研究が行われ診断基準も試案され本症に対

し各方面からの解明に多大の努力が払われている PPH

が比較的稀な疾患であることから臨床実験的試みを行

うには多大の困難を伴うこともありそのため適切な

動物実験モデルの作成が切望されている従来より行わ

れている代表的な実験的肺高血圧症作成としては 1)

左右短絡作成によるもの 2)肺静脈高血圧症によるも

の 3)肺塞栓症によるもの 4)低酸素負荷によるも

の 5) Monocrotalineによるもの 等がある本稿

ではわれわれが ヒト肺高血圧症のモデノレとして研

究している Monocrotalineラット肺高血圧症について

現在までの成績を中心に述べてみたい

1 実験モデjレ一一Monocrotaline ラット肺高血圧

症について

a実験方法

われわれは S-D系ラット雄 (4-5週齢体重60-

80g)に2 Monocrotaline溶液を 30-40mgkg の

割合で上背部に一回皮下注射し250C 室温下水およ

び市販の固形飼料を与え飼育する注射後 3-4週後に

右室肥大といちじるしい右室内圧上昇を認める実験的

肺高血圧症を90以上の確率で作成することに成功して

いる右室内圧の測定はネンブターノレ麻酔後気管切

開を行ない Harvardのレスピレーターに接続し右

外頚静脈よりポリエチレンカテーテルを右室内に掃入

し記録したまた心臓はホルマリン固定後右室自由壁

CRV)と左室および心室中隔部 (LV+S)に2分割し

TAKASHI SUGITATAKAYUKI KURIYAMA and SHOI王EIW A T ANABE Experimental pulmonary

hypertension-Studies on pathophysiology and etiology of Monocrotaline-induced pulmonary hypertension

in the rat-

Department of Chest MedicineInstitute of Pulmonary Cancer ReserchSchool of Medicine Chiba

UniversityChiba 280 Received for publicationDecember 251979

60 椙田

各々の重量を測定し Fulton5)らの方法にしたがい

RVLV+Sの比を求め右室肥大の指標とした肺臓

は各葉をすべて切り出し検討した

b結果

Monocrotaline注射後約 6時間より軽い自発運動

摂飼量の減少が認められる 3週自に入ると呼吸は頻

数鼻口唇部の粘膜面のチアノーゼ顔面の浮腫がみ

られるようになり ときどき摂飼以外はほとんど自発

運動がなくなる体重の減少も認められる 4週目に入

ると一部に下痢血尿腹水が認められるものがある

死亡した例では肉眼的に肺はうっ血し右室は肥大

し肝は柔らかく暗赤色を呈しているものが多い黄色

透明の胸水の認められるものもある 4週から 5週にか

けてほとんどが死亡する

肺脈管系の病理組織学的変化

時間で肺胞上62注射後すでにMonocrotaline

皮の浮腫性腫大および肺小動脈および静脈周囲の浮腫が

時間で肺小動静脈周囲気管支周囲7248みられ

に円形細胞の浸潤がみられる 7日目でこれらの穆出

性変化はさらに強くなるが 14日目以後穆出性変化は

消退していき増殖性変化が強くなる肺胞腔には変

性脱落した上皮空胞変性を示す大型の細胞明瞭な

核小体と大きな核をもっ大細胞が多数みられるようにな

るまた肺筋性動脈でも中膜の肥大が明らかになる

日目では肺小動脈血管壁の硝子化類線維素変2821

性および血栓形成も一部に認められる (Fig 1)

肺小動脈における中膜肥厚の度合いと右室収縮期圧の

関係

Monocrotaline投与後経時的に施行した右頚静脈

隆他

よりの右心カテーテノレ法の右心内圧の検査では右室収

縮期圧は対照群(無処置群)では全経過を通じ19土

74mmHgであり実験群では 14日目 32土86mmHg

21日目 61土75mmHg26-28日目 84t27 mmHg

と上昇し肺高血圧症の発生が認められる各時期の筋

性肺動脈(外径20-30μ)についてモノレフオメトリーを

行ない 外径Rと中膜の厚さ Dを求め DRを中膜肥

厚の度合いとして求め右室収縮期圧と中膜肥厚度の関

係をみると Fig 2に示したようによい相関がみら

れへ これはわれわれがヒト原発性肺高血圧症(全国諸

施設より提供いただいた剖検例 33例の自己検索したも

の)の肺動脈収縮期圧と肺筋性動脈の中膜肥厚度との関

係にも類似し7L 中膜肥大をもって血圧上昇の形態学

的表現とみてよいことがわかるまた肺動脈圧上昇に対

して心臓でも右室肥大 (RVLV+Sの増加)の変化も

著明に認められる

c Monocrotaline ラット肺高血圧症についての考

Monocrotalineは豆科植物 CrotalariaSpectabilis

の種子より抽出された Pyrrolizidinealkaloidである

一般に Pyrrolizidinealkaloids自体は世界各地の植

物に認められているものであるがその多くは無毒であ

る有毒な Pyrrolizidinealkaloids を含む植物は

1970年までに判明しているものだけで 16種類ありア

メリカオストラリア南アメリカジャマイカカ

ナダニュージーランド等に分布しているそのうちあ

る種の動物に右室肥大と肺高血圧性血管病変をおこすも

のとして Crotalaria Spectabilis (Monocrotaline)

Crotalaria FulvaCFulvine)Crotalaria Laburnoides

2hrs 6hrs 24hrs 48hrs 72hrs

刈veolo-臼 plllaryArl閲

Exsudative Changes

Epithelial De伊問問tion

Throm加sis

Smafl Pulm Vessels ω

Subintimal Edema

向rivascularInflltration

mw

Medlal Degeneration

コ帥凶』

』帥

LO一30一』在宅

7daY8 14ωys 21 days 28days gt---一一ーーー+

一lt圃園自

EMm

nv

nL

一一O

hAω 伺

MediαI Hypertro凶y 正

7 14 21 28doys

Fig 1 Sequential changes of pulmonary tissue after subcutaneous single injection of

Monoclotaline in rats

61

03

実験的肺高血圧症

Right Ventricular Systolic Pressure tRVSp)VS Medial Thickness

t[何)

9白

05

04 包代 lsquo

9R=~I 196 ~ 10P-O11661 (r2=0 74)

伴う肺血管病変は従来より多くの研究者によりヒト

の原発性肺高血圧症の動物モデノレに相当するものとして 02 有用であるとされたしかし近年 Wagenvoortら21)

a

Control

は Fulvineを投与したラットに肺動脈のみならず7 days 14 days a

auA

21 days

01 26-28 days

10 20 30 4050 100 mmHg

RVSlsquoR

Fig 2 Relation between right ventricular syst-

olic pressure(RVSP)and medial thic-

kness (expressed as DR at small pulm-

onary arteryexternal diameter of whi-

ch is 20ー 30 p)in the control and test

rats A close correlation between the

medial thickness of small pulmonary

artery and the value of RVSP is rev-

ealed

(C Bagamoyoensis)Senecio Jacobaea (Senecionine)

が報告されている Pyrrolizidinealkialoidsの投与に

よる動物実験は 1911年 Cushnyの実験(ウシ)以来

ウマヒツジブタイヌサノレモJレモットハムス

ターラットマウスニワトリシチメンチョウカ

エノレ等種々の動物を用いて研究されている叱動物の

種差により障害される臓器に差が認められている上記

の動物の肝病変についての研究が多く認められる肺病

変についてはラットヘマウス10〉シチメンチョウ10

プタlDヒツジ 18

等の報告があるが処置した動物で確実にほぼ全例に右

室肥大と肺高血圧性血管病変を示すものはいまのとこ

ろラットだけである 1961年 Lalichら加が Crota-

laria Spectabi1isの種子を 01の割で ラットに経

口投与することで肺動脈炎の発生を認め Kay らゆ

がその時同時に肺動脈中膜肥厚右室肥大右室内

圧上昇を伴っていることを報告し現在では dietary

pulmonary hypertension の典型的モデルとされてい

るこれらの植物の種子の経口摂取あるいはその抽出

物質である MonocrotalineFulvineを注射すること

15hウマ〉14ウサギ〉 〉17〉サノレ16イヌ

によりどのような機序で右室肥大を伴う肺血管病変が

おこるかは現在でも不明である Mattocks20)らによ

れば Pyrrolizidine alkaloids 自体が有毒ではなく

それが肝臓で脱水素され非常に活性のある Pyrrol誘導

体となり肺で血管に作用を行うとされているこの過

程は急速に進み一度投与された Pyrrolizidinealka-

loidsは24時間以内に完全に代謝されるといわれる こ

れらの Pyrrolizidinealkaloidsを小動物特に幼若ラ

ットに投与することにより引きおこされる右室肥大を

肺静脈系特に細静脈に平滑筋細胞と腰原線維の増生に

よる著明な血管壁肥厚と内腔の狭窄を認め肺動脈系に

のみ変化のみられるヒトの原発性肺高血圧症のモデノレ

としてはその有用性を減ずるといっているしかし

われわれの検索(Monocrutaline)では内径40μ 以上の

静脈では壁の明瞭な肥厚内腔の狭窄はみられなかっ

たが肺静脈外膜周囲に細胞浸潤を伴う穆出性変化およ

び内膜細胞の腫大性変化が一部認められたその他動

脈周囲気管支周囲における炎性変化および肺胞壁に間

質性肺炎様病変も一部認められたまた肝臓腎臓の病

変も認められ この Monocrotaline投与動物をもっ

てヒト原発性肺高血圧症のモデノレとすることには多

少の無理があることが考えられるしかし経時的に測

定した右室内圧値が示すように 1回皮下注射により

週間)のうちにこれ程確実にかっ進4(3短時間

行性に高度の肺高血圧症を示す実験モデソレは他に現在

のところ存在しないわれわれはヒト肺高血圧症の成

因を解明するのに好都合なモデルと考え肺高血圧症に

みられる動脈系の種々の変化を病態生理学的見地より

解析するのに大いに役立つものと考えている

2 Monocrotalineラット肺高血圧症の成立因子の

検討

a免疫抑制剤の投与と Monocrotaline肺高血圧症

の発生についてm

Munocrotaline投与初期にみられる肺脈管系の諺出

性細胞性反応の肺高血圧症に対する役割を解明する目的

でラットに Monocrotaline注射前あるいは後に

immunosuppressive agentsすなわち ①Predonis-

olone 100 mgkgをMonocroalitne注射 1目前(p群)

②6-Mercaptoprine 100 mgkgを Monocrotaline注射

後 3日目 (6崎 M 群) Actinomycine D 01 mgkg

dayを Monucrotaline注射前 3日関連続 (A群)④

62 椙田

Radiationを Monocrotaline注射前 1日4000R全身で

処置 (R群) を用い右室血圧上昇の程度右室肥大の

程度および肺臓の病理組織学的検索を対照群 (Mo-

nocrotaline単独投与群)と比較検討を行った R群で

は3週 4週目で右室収縮期圧が対照群に比しやや低値

を示し p群 6-M群 A群では差は認められなかっ

た病理組織学的には肺胞壁の円形細胞浸潤の抑制が

各群に共通して認められた肺小血管外膜周囲の円形細

胞浸潤の抑制は R群で最も強く P群で中等度であっ

た一方肺胞上皮の変性脱落像は対照群以外の各群

に共通した所見であった上にのベた成績から各種免

疫抑制剤ないし免疫抑制作用をもっ radiation を

Monocrotaline肺高血圧症の発生過程に作用させるこ

とによりすくなくとも Monoclotaline肺高血圧症に

みる穆出性細胞性反応を抑制しえたことまた一部の実

験群においては右室内圧上昇の抑制をみたことは注

目に値しよう以上のことから Monocrotaline肺高血

圧症にみる肺胞壁穆出性細胞浸潤の肺高血圧の発症に対

する役割は大きいものとはいい難いさらにこれらの細

胞反応を抑制することにより形態学的のみからすれ

ばヒト原発性肺高血圧症により類似した実験モデルを

作りえたものと恩われる

b持続酸素投与の Monocrotaline肺高血圧症に対

する影響

Hypoxiaが筋性肺動脈の撃縮をひきおこすことは

一般に認められている事実である Monocrotaline投

与後のラットに初期に認められる肺脈管系の変化と

hypoxiaとの関係をみるために Monocrotaline注射

直後より高濃度酸素 (60)下で飼育し肺高血圧症

の成立にいかなる影響をおよぼすかをみるために実験を

行った高濃度酸素の持続投与は右室収縮期圧右室

肥大を対照群と比し有意に抑制することが認められ

さらに平均生存日数の延長が認められた詳細について

は現在検討中であるが持続高濃度酸素投与は Mo

nocrotaline投与後の右室圧上昇の抑制にとって有効な

因子であることが明らかになった

c Angiotensin IIと Monocrotaline肺高血圧症と

の関連について23)

近年肺はガス交換の働きの他に vasoactive substa-

nceの代謝に密接な関係のある臓器であることが解明さ

れてきている angiotensin 1から angiotensin IIへ

の変換が主として肺に多く含まれている転換酵素

(angiotensin 1convertingenzyme)によって行われ

ていることが明らかにされ renin-angiotensin系に占

める肺の役割に関心がもたれるようになった Angio-

隆他

tensin IIは動脈壁の平滑筋に直接働き強い血管収

縮作用をもち現在まで生体で得られる最も強力な昇圧

物質であるといわれる Berkovら却は低酸素負荷時

の肺血管墜縮には微量の angiotensin IIが不可欠で

あるといい石原北村ら25)は種々の血管平滑筋収縮

剤の肺動脈切片に対する反応は低濃度の angiotensin

Eの存在により著明に増強されることを報告している

われわれは穆出性細胞性反応の変化と hypoxiaと

上記の変化に注目し Monocrotaline肺高血圧症の成因

に renin-angiotensin系が関与しているか否かを追求

する目的で angiotensin 1が angiotensin IIに変換

するのに必要である転換酵素を阻害する angiotensin

Iconverting engyme inhibitor (SQ20881)の慢性

投与の影響について実験を行ってみた Monocrotaline

投与直後のラットに 8時間ごとに SQ-20881を2mg

kgを3週間連続投与した群においては 対照群と同様

に右室肥大肺小動脈の中膜の肥厚右室内圧の上昇

を著明に示した故に angiotensin IIは Monocrota-

lineラット肺高血圧症には 主役を演じているとは考

えられないことがわかった

d血管作動性物質と Monocrotaline肺高血圧症と

の関連について

ヒト原発性肺高血圧症例では acetylcholinetolaz-

olinereserpineなどの投与により肺動脈圧が一過性

に低下することが報告されておりこの事実は肺血管室華

縮の存在を裏付けていると考えられる Monocrotaline

ラット肺高血圧症については絶えず昇圧因子が作用し

ていることがその形態学的観察より予想されるがそ

の精細なメカニズムは不明である肺高血圧状態の持続

に対してどのような神経的薬理的調節機構が関与して

いるかは成因とも関連して興味ある問題である

Monocrotaline肺高血圧症における肺動脈の機能的

性状についてm

われわれは Monocrotaline肺高血圧症ラットの頚

静脈に acetylcholineを注入し右室内圧の変化を観

察した実験群では 10pgkg という微量に対しでも

右室内圧の一過性低下を認めた一方対照群では 10

pgkgでもほとんど変化は認められなかったこれら

の事実は Monocrotaline肺高血圧症では acetylch-

oline感受性の増加があり少なくとも その肺高血圧

が cholinergic receptor の blockによるものでない

ことを示し肺動脈壁の変化が器質的に硬化したもの

ではなく緊張緩和しうるものでありまた絶えず肺

動脈圧を上昇させる因子が作用していることを示唆して

いると考えられる

63 実験的肺高血圧症

e 各種血管作動性物質抑制剤投与による検討27)

そこでわれわれはいかなる昇圧因子がどのように

作用しているかを解明する目的で肺血管に収縮的に作

用すると思われる種々の血管作動性物質の合成阻害剤

措抗剤の慢性投与を行って Monocrotaline肺高血圧

症の成立におよぼす影響を検討した

Monocrotaline肺高血圧症の成立におよぼす α-rec-

eptorの関与について

α-receptorの関与をみる目的で a-blocker である

Phenoxybenzamine (P 0 B)の慢性投与の影響を検討

した Monocrotaline投与後のラットに毎日 13mgkg

POBを腹腔内に投与した実験群では 3週後の 右

室内圧 右室肥大は対照群との聞で 明らかな有意差

(PltOOl)を認めたこのことは Monocrotaline注射

直後から POBを投与することにより右室肥大を伴

なう肺高血圧症の成立を完全ではないが明らかに有

意に抑制したすなわち α-receptor の関与が大きいこ

とを考えさせる

Monocrotaline肺高血圧症の成立におよぼす serot-

oninの関与について

従来より諸家により Ivlonocrotaline肺高血圧症の

成立と mast cellの増殖の関係28)serotoninとの関

係29〉に検討が加えられてきたがいまだ解決されてい

ないそれ故肺血管に対し収縮作用をもっ serotonin

の関与を検討するためその合成阻害剤 PChlorophe

nylalanine (PCP A) を Monocrotaline投与ラット

に 500mgkgの割で 7日毎に腹腔内に投与した(実

験群)その結果は実験群は対照群 (Monocr前 aline

単独投与)に比し右室肥大値は有意に小さかった (p

く005)又右室収縮期圧は抑制傾向をみたとれより

serotoninがある程度関与していることが示唆される

Monocrotaline肺高血圧症の成立におよぼす pros-

taglandinsの関与について

Prostaglandinsは arachidonic acidより合成される

がその合成阻害剤 Indomethacineを Monocrotaline

投与ラットに 7mgkgを5日毎に腹腔内投与した(実

験群)対照群と比し実験群は右室肥大では抑制傾

向があり右室収縮期圧では圧抑制の明らかな差が認め

られた(plt001)これより prostaglandinsも Mon-

ocrotaline肺高血圧症の成立にある程度関与しているこ

とが示唆される

Monocrotaline肺高血圧症におよぼす s-receptor

[Ca+つの関与について

s-blockerである Propranolol平滑筋の収縮に必要

な [Ca++Jの関与を検討するため [Ca++J括抗剤であ

る Nifedipineについてそれぞれ検討したがこれらは

明らかな推計学的に有意の抑制傾向はみられなかった

以上の各種薬剤の慢性投与実験から Monocrotaline

肺高血圧の成立には主として adrenergicα-receptor

serotoninprostaglandinsの作用を介する機序がそれ

ぞれおそらくは相互に複雑に関与していることが示唆

されたこのことは最も強力に抑制しえた POBの

場合においてもそれのみでは完全に抑制することが出

来なかったことからも明らかである一方 Monocrota-

lineの投与により肺を主座とした初期の穆出性病変

さらに肺脈管の病的状態が血管作動性物質の相互関与

により生ずることは肺血管内皮細胞がきわめて重要な

役割りを血管作動性物質の代謝にもつことを示唆する

ものとしてわれわれは今後検討をつづけるつもりであ

f Monocrotaline肺高血圧症における液性因子に

ついての検討ω

1回注射で投与された Monocrotalineは生体内で

急速に分解され 24時間以内に代謝され排出されるとい

われているこのことはこの時期が Monocrotaline

肺高血圧症の成立にきわめて重要であると考えられ

るそれ故 Monocrtoaline投与後の初期にー側肺血

管床のみに代謝物質を作用させることによって以後いか

なる変化が肺血管に生じ以後経過を追って どのよう

な機序が展開し肺高血圧はいかなる変化をうけるであ

ろうか以上のような考えにたって Monocrotaline

注射時にすでに人工的にー側肺(左肺)に無気肺を作

成することによって一側肺の血流を社絶させ Mon-

ocrotalineの代謝物質を他側肺(右肺)だけにある期

間作用させる実験を行ったラットに連続 5日間の気胸

作製の 2日目に Monocrotalineを投与し 3週後に型

のごとく諸値を測定した (Fig3)実験群CP+M群)

の右心室血圧値は対照群 (M群)に比し明らかに低

値を示した右室肥大の程度も同様に低値を示した

外直径が主に20-50μ の肺小動脈でのモノレフオメトリ

ーでは中膜の肥厚度(外直径 2R 中膜の厚さ 2D

2D2R )は P十M群右肺80土18-176土33

左肺9129-188t36M群右肺20217

-28643左肺 2012 3-356土86であり

実験群は明らかに対照群よりも小さくまた一例をのぞ

いて左右の肺の聞に中膜の肥厚度の差異は推計学的に

認められなかった実験群でなぜ左右差が認められなか

ったかの問題があるがこの点については初期の Py-

rroleによる血管壁の傷害の変化は 3週後には治療し

てしまうとも想像されるが明確な原因は今後の追求を

P P+M M P P十M M

Fig 3 E旺ectof right ventricular systolic pres-sure (R VSP)right ventricular hype-

rtrophy (expressed as RVLV+S) in

three groups (P arti五cialpneumoth-

orax P+ M artificial pneumothorax

+ MonocrotalineM monocrotaline)

A significant reduction of RV L V + S

and RVSP value is observed in P+M group as compared to those value of

M group

必要とする肺の血管内皮細胞が血管作動性物質の代

謝に深く関わっているらしいと考えるならば Monoc-

rotaline投与により 血管作動性物質の代謝に異常が

おこり結果として肺動脈系にたえず昇圧因子が作用す

る所ヘー側無気肺作成により昇圧因子に対抗する作

用機序(神経系統血管作動性物質)が働いていたとも

考えられるが成因機序は不明であるしかしこの事実

は Monocrotaline注射初期における肺血管床が以後

発症する肺血圧上昇と密接な関係があることが示唆され

るとともに Monocrotaline投与後にみられる肺小動

脈の中膜肥厚は初期の Monocrotaline代謝物質の作

用の結果よりもその後に生ずる圧上昇の影響と考えら

れるわれわれが行ってきたラットの Monocrotaline

肺高血圧症の実験においてこれほど明らかに右室圧上

昇右室肥大を抑制し得たものはいままでの各種薬剤

投与ではなかったまたこのような点に関する内外の報

告もみない薬剤ではなく肺循環動態を変化させるこ

とにより抑制しえたということはその解釈は極めて困

難であるが興味深いものなので今後も種々の方法によ

ってその機序を追求していきたいと考えている

おわりに

以上ヒト原発生肺高血圧症の病態生理成因および

治療法を解明するために有用であると考えられる肺高

血圧症実験モデルとして研究を行っている Monocrota-

lineラット肺高血圧症についての われわれの実験結

果を中心に検討を加えた今後もよりヒト原発性肺高

隆他

血圧症に近い動物モデルの改良と開発が進められその

成因解明に至ることが望まれる

稿を終るにあたり種々ご協力頂いた筑波大学基礎

医学系病理小形岳三郎教授に謝意を表します

なお本研究については千葉大学猪鼻奨学会研究補

助金千葉大学環境科学研究機構よりの補助金厚生省

特定疾患「原発性肺高血圧症」調査研究費補助金およ

び厚生省特定疾患「呼吸不全J調査研究費補助金によっ

たことを付記する

文 献

1) WagenvoortC A and WagenvoortN

Primary pulmonary hypertension A path-

ologic study of the lung vessels in 156 clini-

cally diagnosed cases Circulation 421163-

11831970

2) GurtnerH PGertshMSalzman C

Scherrer MSluckiP and WyssF

Haufen sich die primar Vaskularen For

man des chronischen Cor pulmonale Sch-

weiz Med Wschr 981579-15891968

3) Report on a WHO meeting Primary pulm-

onary hypertension WHOGeneva1975

4) WatanabeS and OgataT Clinical and

experimental study upon primary pulmonary

hypertension Jap Circul J 40603-610

1976

5) FultonR MHutchinsonE C and Mo-

rganJ A Ventricular weight in cardiac

hypertrophy Br Heart J14413-4201952

6)栗山喬之椙田 隆滝沢弘隆渡辺昌平 小

形岳三郎肺高血圧症の実験的研究ー肺動脈圧

上昇と肺脈管系の形態学的変化の相関一 日胸

疾会誌 14694-5051976

7)椙田 隆栗山喬之滝沢弘隆渡辺昌平 小

形岳三郎原発性肺高血圧症の臨床的ならびに

病理学的研究(第 1報)ー肺の組織学的所見と

臨床所見との対比一特定疾患原発性肺高血圧症

調査研究班研究業績集 1976年 109-114

8) McLeanE K The toxic action of pyrr-

olizidine (Senecio) alkaloids Parmacological

Rewiews 22429-4831970

9) SchoentalR and HeadM A Pathol

ogical changes in rats as a result of treatm-

ent with monocrotaline Br Cancer 9

65 実験的肺高血圧症

229-2371955

10) HarrisD NAndersonR C and Chen

KK The action of senecionine integerr-

iminejacobinelongilobine and spartiodine

especially in the liver J PharmacolExp

Ther 78372-3741942

11) AllenJ R Crotalaria spectabilis toxi-

city studies in turkeys Avian Dis 7318-

3241963

12) EmmelM WSandersA and Henley

W W Crotalaria spectabilis seed pois-

oning in swine J Am Vet Med Ass 39 43-491935

13) LawsL Toxicity of crotalaria mucronata

to sheep Aust Vet J 44453-4551968

14) BullLBCulvenorC C J and Dick

A T The pyrrolzidine alkaloids Chap

7 John Wiley ampSons Inc New York1968

15) RoseA L GardnerC AMc Connell

J D and Bul1 LB Field and experim-

ental investigation of ldquowalk-about disease

of horses (Kimberly horse disease) in Nor-

thern Australia Part 1 Aust Vet J 33

25-331957

16) KhaninM N The aetiology and patho-

genesis of toxic hepatitis with ascietes

Arkh Pathol1835-451956

17) ChesneyC F and AllenJ R Endoca-

rdial五hrosisassociated with monocrotaline-

induced pulmonary hypertension in nonhu

man primates (Macacaarctoides) Am J

VetRes 341577-15811973

18) LalichJ J and MerkowL Pulmonary

arteritis produced in rats by feeding crota-

laria spectabilis Lab Invest 10744-750 1961

19) KayJ MHarrisP and HeathD

Pulmonary hypertension produced in rats by

ingestion of crotalaria spectabilis seeds

Thorax22176-1791967

20) MattocksA R Toxicity of pyrrolizidine

alkaloids Nature 217723ー7281968

21) WagenvoortC AWagenvortN and

DijkH J Effect of fulvine on pulmon-

ary arteries and vein of the rat Thorax

29522-5291974

22)栗山喬之椙田 隆滝沢弘隆渡辺昌平 小

形岳三郎肺高血圧症の実験的研究(第E報)

Monocrotaline肺高血圧症の成立に対する

Immunosuppressive Agents の影響 日胸疾

会誌14(増刊号) 1361976

23)椙田 隆栗山喬之滝沢弘隆渡辺昌平 小

形岳三郎肺高血圧症の実験的研究 (m)Mon-

ocrotaline肺高血圧症の成立に及ぼす Angio-

tensin 1-Converting Enzyme Inhibitor (SQ

20881)投与の影響特定疾患原発性肺高血圧症

調査研究班研究業績集 1977143-147

24) BerkovS and MelmonK L Effect of

Angiotensin II blockade on hypoxic pulm-

onary vasoconstriction in vitro and in vivo

in the rat Clin Res 224991974

25)石原陽子北村諭小坂樹徳原沢直美肺

における VasoactiveSubstanceの代謝と作用

第7報ウサギ肺動脈系および大動脈系におけ

る Angiotensin IIの作用について 日胸疾会

誌 14373-378

26)栗山喬之椙田 隆渡辺昌平 小形岳三郎

肺高血圧症の実験的研究 (IV)Monocrotaline

肺高血圧症における Vasoactivesubstanceの

役割 特定疾患原発性肺高血圧症調査研究班研

究業績集 1977139-142

27)栗山喬之椙田 隆渡辺昌平 小形岳三郎

血管作動性物質の代謝と肺高血圧症 日胸疾会

誌 16418-4241978

28) Takeoka0ArgeunieD M and Lalich

J J Stimulation of Mast cells in rat fed

various chemicals Am J Path 40545-

5541962

29) KayJ MCrawfordN and HeathD

Blood 5Hydroxytryptamine in rats with

pulmonary hypertension produced by ingest-

ion of crotalaria spectabilis seeds Experie-

ntia 24 1149-11501968

30)椙田 隆沢田晶夫栗山喬之渡辺昌平小

形岳三郎肺高血圧の実験的研究-Monocrota-

line肺高血圧症における液性因子の検討一特

定疾患呼吸不全調査研究班研究業績集 1979

153-159

Page 2: kuタl タアIxウヌ 一 - Chiba Uopac.ll.chiba-u.jp/da/curator/900108437/KJ00004742141.pdfloids ヘ24ヤネノョSノモウニ「B ア フ Pyrrolizidine alkaloids ャョィCチノc

60 椙田

各々の重量を測定し Fulton5)らの方法にしたがい

RVLV+Sの比を求め右室肥大の指標とした肺臓

は各葉をすべて切り出し検討した

b結果

Monocrotaline注射後約 6時間より軽い自発運動

摂飼量の減少が認められる 3週自に入ると呼吸は頻

数鼻口唇部の粘膜面のチアノーゼ顔面の浮腫がみ

られるようになり ときどき摂飼以外はほとんど自発

運動がなくなる体重の減少も認められる 4週目に入

ると一部に下痢血尿腹水が認められるものがある

死亡した例では肉眼的に肺はうっ血し右室は肥大

し肝は柔らかく暗赤色を呈しているものが多い黄色

透明の胸水の認められるものもある 4週から 5週にか

けてほとんどが死亡する

肺脈管系の病理組織学的変化

時間で肺胞上62注射後すでにMonocrotaline

皮の浮腫性腫大および肺小動脈および静脈周囲の浮腫が

時間で肺小動静脈周囲気管支周囲7248みられ

に円形細胞の浸潤がみられる 7日目でこれらの穆出

性変化はさらに強くなるが 14日目以後穆出性変化は

消退していき増殖性変化が強くなる肺胞腔には変

性脱落した上皮空胞変性を示す大型の細胞明瞭な

核小体と大きな核をもっ大細胞が多数みられるようにな

るまた肺筋性動脈でも中膜の肥大が明らかになる

日目では肺小動脈血管壁の硝子化類線維素変2821

性および血栓形成も一部に認められる (Fig 1)

肺小動脈における中膜肥厚の度合いと右室収縮期圧の

関係

Monocrotaline投与後経時的に施行した右頚静脈

隆他

よりの右心カテーテノレ法の右心内圧の検査では右室収

縮期圧は対照群(無処置群)では全経過を通じ19土

74mmHgであり実験群では 14日目 32土86mmHg

21日目 61土75mmHg26-28日目 84t27 mmHg

と上昇し肺高血圧症の発生が認められる各時期の筋

性肺動脈(外径20-30μ)についてモノレフオメトリーを

行ない 外径Rと中膜の厚さ Dを求め DRを中膜肥

厚の度合いとして求め右室収縮期圧と中膜肥厚度の関

係をみると Fig 2に示したようによい相関がみら

れへ これはわれわれがヒト原発性肺高血圧症(全国諸

施設より提供いただいた剖検例 33例の自己検索したも

の)の肺動脈収縮期圧と肺筋性動脈の中膜肥厚度との関

係にも類似し7L 中膜肥大をもって血圧上昇の形態学

的表現とみてよいことがわかるまた肺動脈圧上昇に対

して心臓でも右室肥大 (RVLV+Sの増加)の変化も

著明に認められる

c Monocrotaline ラット肺高血圧症についての考

Monocrotalineは豆科植物 CrotalariaSpectabilis

の種子より抽出された Pyrrolizidinealkaloidである

一般に Pyrrolizidinealkaloids自体は世界各地の植

物に認められているものであるがその多くは無毒であ

る有毒な Pyrrolizidinealkaloids を含む植物は

1970年までに判明しているものだけで 16種類ありア

メリカオストラリア南アメリカジャマイカカ

ナダニュージーランド等に分布しているそのうちあ

る種の動物に右室肥大と肺高血圧性血管病変をおこすも

のとして Crotalaria Spectabilis (Monocrotaline)

Crotalaria FulvaCFulvine)Crotalaria Laburnoides

2hrs 6hrs 24hrs 48hrs 72hrs

刈veolo-臼 plllaryArl閲

Exsudative Changes

Epithelial De伊問問tion

Throm加sis

Smafl Pulm Vessels ω

Subintimal Edema

向rivascularInflltration

mw

Medlal Degeneration

コ帥凶』

』帥

LO一30一』在宅

7daY8 14ωys 21 days 28days gt---一一ーーー+

一lt圃園自

EMm

nv

nL

一一O

hAω 伺

MediαI Hypertro凶y 正

7 14 21 28doys

Fig 1 Sequential changes of pulmonary tissue after subcutaneous single injection of

Monoclotaline in rats

61

03

実験的肺高血圧症

Right Ventricular Systolic Pressure tRVSp)VS Medial Thickness

t[何)

9白

05

04 包代 lsquo

9R=~I 196 ~ 10P-O11661 (r2=0 74)

伴う肺血管病変は従来より多くの研究者によりヒト

の原発性肺高血圧症の動物モデノレに相当するものとして 02 有用であるとされたしかし近年 Wagenvoortら21)

a

Control

は Fulvineを投与したラットに肺動脈のみならず7 days 14 days a

auA

21 days

01 26-28 days

10 20 30 4050 100 mmHg

RVSlsquoR

Fig 2 Relation between right ventricular syst-

olic pressure(RVSP)and medial thic-

kness (expressed as DR at small pulm-

onary arteryexternal diameter of whi-

ch is 20ー 30 p)in the control and test

rats A close correlation between the

medial thickness of small pulmonary

artery and the value of RVSP is rev-

ealed

(C Bagamoyoensis)Senecio Jacobaea (Senecionine)

が報告されている Pyrrolizidinealkialoidsの投与に

よる動物実験は 1911年 Cushnyの実験(ウシ)以来

ウマヒツジブタイヌサノレモJレモットハムス

ターラットマウスニワトリシチメンチョウカ

エノレ等種々の動物を用いて研究されている叱動物の

種差により障害される臓器に差が認められている上記

の動物の肝病変についての研究が多く認められる肺病

変についてはラットヘマウス10〉シチメンチョウ10

プタlDヒツジ 18

等の報告があるが処置した動物で確実にほぼ全例に右

室肥大と肺高血圧性血管病変を示すものはいまのとこ

ろラットだけである 1961年 Lalichら加が Crota-

laria Spectabi1isの種子を 01の割で ラットに経

口投与することで肺動脈炎の発生を認め Kay らゆ

がその時同時に肺動脈中膜肥厚右室肥大右室内

圧上昇を伴っていることを報告し現在では dietary

pulmonary hypertension の典型的モデルとされてい

るこれらの植物の種子の経口摂取あるいはその抽出

物質である MonocrotalineFulvineを注射すること

15hウマ〉14ウサギ〉 〉17〉サノレ16イヌ

によりどのような機序で右室肥大を伴う肺血管病変が

おこるかは現在でも不明である Mattocks20)らによ

れば Pyrrolizidine alkaloids 自体が有毒ではなく

それが肝臓で脱水素され非常に活性のある Pyrrol誘導

体となり肺で血管に作用を行うとされているこの過

程は急速に進み一度投与された Pyrrolizidinealka-

loidsは24時間以内に完全に代謝されるといわれる こ

れらの Pyrrolizidinealkaloidsを小動物特に幼若ラ

ットに投与することにより引きおこされる右室肥大を

肺静脈系特に細静脈に平滑筋細胞と腰原線維の増生に

よる著明な血管壁肥厚と内腔の狭窄を認め肺動脈系に

のみ変化のみられるヒトの原発性肺高血圧症のモデノレ

としてはその有用性を減ずるといっているしかし

われわれの検索(Monocrutaline)では内径40μ 以上の

静脈では壁の明瞭な肥厚内腔の狭窄はみられなかっ

たが肺静脈外膜周囲に細胞浸潤を伴う穆出性変化およ

び内膜細胞の腫大性変化が一部認められたその他動

脈周囲気管支周囲における炎性変化および肺胞壁に間

質性肺炎様病変も一部認められたまた肝臓腎臓の病

変も認められ この Monocrotaline投与動物をもっ

てヒト原発性肺高血圧症のモデノレとすることには多

少の無理があることが考えられるしかし経時的に測

定した右室内圧値が示すように 1回皮下注射により

週間)のうちにこれ程確実にかっ進4(3短時間

行性に高度の肺高血圧症を示す実験モデソレは他に現在

のところ存在しないわれわれはヒト肺高血圧症の成

因を解明するのに好都合なモデルと考え肺高血圧症に

みられる動脈系の種々の変化を病態生理学的見地より

解析するのに大いに役立つものと考えている

2 Monocrotalineラット肺高血圧症の成立因子の

検討

a免疫抑制剤の投与と Monocrotaline肺高血圧症

の発生についてm

Munocrotaline投与初期にみられる肺脈管系の諺出

性細胞性反応の肺高血圧症に対する役割を解明する目的

でラットに Monocrotaline注射前あるいは後に

immunosuppressive agentsすなわち ①Predonis-

olone 100 mgkgをMonocroalitne注射 1目前(p群)

②6-Mercaptoprine 100 mgkgを Monocrotaline注射

後 3日目 (6崎 M 群) Actinomycine D 01 mgkg

dayを Monucrotaline注射前 3日関連続 (A群)④

62 椙田

Radiationを Monocrotaline注射前 1日4000R全身で

処置 (R群) を用い右室血圧上昇の程度右室肥大の

程度および肺臓の病理組織学的検索を対照群 (Mo-

nocrotaline単独投与群)と比較検討を行った R群で

は3週 4週目で右室収縮期圧が対照群に比しやや低値

を示し p群 6-M群 A群では差は認められなかっ

た病理組織学的には肺胞壁の円形細胞浸潤の抑制が

各群に共通して認められた肺小血管外膜周囲の円形細

胞浸潤の抑制は R群で最も強く P群で中等度であっ

た一方肺胞上皮の変性脱落像は対照群以外の各群

に共通した所見であった上にのベた成績から各種免

疫抑制剤ないし免疫抑制作用をもっ radiation を

Monocrotaline肺高血圧症の発生過程に作用させるこ

とによりすくなくとも Monoclotaline肺高血圧症に

みる穆出性細胞性反応を抑制しえたことまた一部の実

験群においては右室内圧上昇の抑制をみたことは注

目に値しよう以上のことから Monocrotaline肺高血

圧症にみる肺胞壁穆出性細胞浸潤の肺高血圧の発症に対

する役割は大きいものとはいい難いさらにこれらの細

胞反応を抑制することにより形態学的のみからすれ

ばヒト原発性肺高血圧症により類似した実験モデルを

作りえたものと恩われる

b持続酸素投与の Monocrotaline肺高血圧症に対

する影響

Hypoxiaが筋性肺動脈の撃縮をひきおこすことは

一般に認められている事実である Monocrotaline投

与後のラットに初期に認められる肺脈管系の変化と

hypoxiaとの関係をみるために Monocrotaline注射

直後より高濃度酸素 (60)下で飼育し肺高血圧症

の成立にいかなる影響をおよぼすかをみるために実験を

行った高濃度酸素の持続投与は右室収縮期圧右室

肥大を対照群と比し有意に抑制することが認められ

さらに平均生存日数の延長が認められた詳細について

は現在検討中であるが持続高濃度酸素投与は Mo

nocrotaline投与後の右室圧上昇の抑制にとって有効な

因子であることが明らかになった

c Angiotensin IIと Monocrotaline肺高血圧症と

の関連について23)

近年肺はガス交換の働きの他に vasoactive substa-

nceの代謝に密接な関係のある臓器であることが解明さ

れてきている angiotensin 1から angiotensin IIへ

の変換が主として肺に多く含まれている転換酵素

(angiotensin 1convertingenzyme)によって行われ

ていることが明らかにされ renin-angiotensin系に占

める肺の役割に関心がもたれるようになった Angio-

隆他

tensin IIは動脈壁の平滑筋に直接働き強い血管収

縮作用をもち現在まで生体で得られる最も強力な昇圧

物質であるといわれる Berkovら却は低酸素負荷時

の肺血管墜縮には微量の angiotensin IIが不可欠で

あるといい石原北村ら25)は種々の血管平滑筋収縮

剤の肺動脈切片に対する反応は低濃度の angiotensin

Eの存在により著明に増強されることを報告している

われわれは穆出性細胞性反応の変化と hypoxiaと

上記の変化に注目し Monocrotaline肺高血圧症の成因

に renin-angiotensin系が関与しているか否かを追求

する目的で angiotensin 1が angiotensin IIに変換

するのに必要である転換酵素を阻害する angiotensin

Iconverting engyme inhibitor (SQ20881)の慢性

投与の影響について実験を行ってみた Monocrotaline

投与直後のラットに 8時間ごとに SQ-20881を2mg

kgを3週間連続投与した群においては 対照群と同様

に右室肥大肺小動脈の中膜の肥厚右室内圧の上昇

を著明に示した故に angiotensin IIは Monocrota-

lineラット肺高血圧症には 主役を演じているとは考

えられないことがわかった

d血管作動性物質と Monocrotaline肺高血圧症と

の関連について

ヒト原発性肺高血圧症例では acetylcholinetolaz-

olinereserpineなどの投与により肺動脈圧が一過性

に低下することが報告されておりこの事実は肺血管室華

縮の存在を裏付けていると考えられる Monocrotaline

ラット肺高血圧症については絶えず昇圧因子が作用し

ていることがその形態学的観察より予想されるがそ

の精細なメカニズムは不明である肺高血圧状態の持続

に対してどのような神経的薬理的調節機構が関与して

いるかは成因とも関連して興味ある問題である

Monocrotaline肺高血圧症における肺動脈の機能的

性状についてm

われわれは Monocrotaline肺高血圧症ラットの頚

静脈に acetylcholineを注入し右室内圧の変化を観

察した実験群では 10pgkg という微量に対しでも

右室内圧の一過性低下を認めた一方対照群では 10

pgkgでもほとんど変化は認められなかったこれら

の事実は Monocrotaline肺高血圧症では acetylch-

oline感受性の増加があり少なくとも その肺高血圧

が cholinergic receptor の blockによるものでない

ことを示し肺動脈壁の変化が器質的に硬化したもの

ではなく緊張緩和しうるものでありまた絶えず肺

動脈圧を上昇させる因子が作用していることを示唆して

いると考えられる

63 実験的肺高血圧症

e 各種血管作動性物質抑制剤投与による検討27)

そこでわれわれはいかなる昇圧因子がどのように

作用しているかを解明する目的で肺血管に収縮的に作

用すると思われる種々の血管作動性物質の合成阻害剤

措抗剤の慢性投与を行って Monocrotaline肺高血圧

症の成立におよぼす影響を検討した

Monocrotaline肺高血圧症の成立におよぼす α-rec-

eptorの関与について

α-receptorの関与をみる目的で a-blocker である

Phenoxybenzamine (P 0 B)の慢性投与の影響を検討

した Monocrotaline投与後のラットに毎日 13mgkg

POBを腹腔内に投与した実験群では 3週後の 右

室内圧 右室肥大は対照群との聞で 明らかな有意差

(PltOOl)を認めたこのことは Monocrotaline注射

直後から POBを投与することにより右室肥大を伴

なう肺高血圧症の成立を完全ではないが明らかに有

意に抑制したすなわち α-receptor の関与が大きいこ

とを考えさせる

Monocrotaline肺高血圧症の成立におよぼす serot-

oninの関与について

従来より諸家により Ivlonocrotaline肺高血圧症の

成立と mast cellの増殖の関係28)serotoninとの関

係29〉に検討が加えられてきたがいまだ解決されてい

ないそれ故肺血管に対し収縮作用をもっ serotonin

の関与を検討するためその合成阻害剤 PChlorophe

nylalanine (PCP A) を Monocrotaline投与ラット

に 500mgkgの割で 7日毎に腹腔内に投与した(実

験群)その結果は実験群は対照群 (Monocr前 aline

単独投与)に比し右室肥大値は有意に小さかった (p

く005)又右室収縮期圧は抑制傾向をみたとれより

serotoninがある程度関与していることが示唆される

Monocrotaline肺高血圧症の成立におよぼす pros-

taglandinsの関与について

Prostaglandinsは arachidonic acidより合成される

がその合成阻害剤 Indomethacineを Monocrotaline

投与ラットに 7mgkgを5日毎に腹腔内投与した(実

験群)対照群と比し実験群は右室肥大では抑制傾

向があり右室収縮期圧では圧抑制の明らかな差が認め

られた(plt001)これより prostaglandinsも Mon-

ocrotaline肺高血圧症の成立にある程度関与しているこ

とが示唆される

Monocrotaline肺高血圧症におよぼす s-receptor

[Ca+つの関与について

s-blockerである Propranolol平滑筋の収縮に必要

な [Ca++Jの関与を検討するため [Ca++J括抗剤であ

る Nifedipineについてそれぞれ検討したがこれらは

明らかな推計学的に有意の抑制傾向はみられなかった

以上の各種薬剤の慢性投与実験から Monocrotaline

肺高血圧の成立には主として adrenergicα-receptor

serotoninprostaglandinsの作用を介する機序がそれ

ぞれおそらくは相互に複雑に関与していることが示唆

されたこのことは最も強力に抑制しえた POBの

場合においてもそれのみでは完全に抑制することが出

来なかったことからも明らかである一方 Monocrota-

lineの投与により肺を主座とした初期の穆出性病変

さらに肺脈管の病的状態が血管作動性物質の相互関与

により生ずることは肺血管内皮細胞がきわめて重要な

役割りを血管作動性物質の代謝にもつことを示唆する

ものとしてわれわれは今後検討をつづけるつもりであ

f Monocrotaline肺高血圧症における液性因子に

ついての検討ω

1回注射で投与された Monocrotalineは生体内で

急速に分解され 24時間以内に代謝され排出されるとい

われているこのことはこの時期が Monocrotaline

肺高血圧症の成立にきわめて重要であると考えられ

るそれ故 Monocrtoaline投与後の初期にー側肺血

管床のみに代謝物質を作用させることによって以後いか

なる変化が肺血管に生じ以後経過を追って どのよう

な機序が展開し肺高血圧はいかなる変化をうけるであ

ろうか以上のような考えにたって Monocrotaline

注射時にすでに人工的にー側肺(左肺)に無気肺を作

成することによって一側肺の血流を社絶させ Mon-

ocrotalineの代謝物質を他側肺(右肺)だけにある期

間作用させる実験を行ったラットに連続 5日間の気胸

作製の 2日目に Monocrotalineを投与し 3週後に型

のごとく諸値を測定した (Fig3)実験群CP+M群)

の右心室血圧値は対照群 (M群)に比し明らかに低

値を示した右室肥大の程度も同様に低値を示した

外直径が主に20-50μ の肺小動脈でのモノレフオメトリ

ーでは中膜の肥厚度(外直径 2R 中膜の厚さ 2D

2D2R )は P十M群右肺80土18-176土33

左肺9129-188t36M群右肺20217

-28643左肺 2012 3-356土86であり

実験群は明らかに対照群よりも小さくまた一例をのぞ

いて左右の肺の聞に中膜の肥厚度の差異は推計学的に

認められなかった実験群でなぜ左右差が認められなか

ったかの問題があるがこの点については初期の Py-

rroleによる血管壁の傷害の変化は 3週後には治療し

てしまうとも想像されるが明確な原因は今後の追求を

P P+M M P P十M M

Fig 3 E旺ectof right ventricular systolic pres-sure (R VSP)right ventricular hype-

rtrophy (expressed as RVLV+S) in

three groups (P arti五cialpneumoth-

orax P+ M artificial pneumothorax

+ MonocrotalineM monocrotaline)

A significant reduction of RV L V + S

and RVSP value is observed in P+M group as compared to those value of

M group

必要とする肺の血管内皮細胞が血管作動性物質の代

謝に深く関わっているらしいと考えるならば Monoc-

rotaline投与により 血管作動性物質の代謝に異常が

おこり結果として肺動脈系にたえず昇圧因子が作用す

る所ヘー側無気肺作成により昇圧因子に対抗する作

用機序(神経系統血管作動性物質)が働いていたとも

考えられるが成因機序は不明であるしかしこの事実

は Monocrotaline注射初期における肺血管床が以後

発症する肺血圧上昇と密接な関係があることが示唆され

るとともに Monocrotaline投与後にみられる肺小動

脈の中膜肥厚は初期の Monocrotaline代謝物質の作

用の結果よりもその後に生ずる圧上昇の影響と考えら

れるわれわれが行ってきたラットの Monocrotaline

肺高血圧症の実験においてこれほど明らかに右室圧上

昇右室肥大を抑制し得たものはいままでの各種薬剤

投与ではなかったまたこのような点に関する内外の報

告もみない薬剤ではなく肺循環動態を変化させるこ

とにより抑制しえたということはその解釈は極めて困

難であるが興味深いものなので今後も種々の方法によ

ってその機序を追求していきたいと考えている

おわりに

以上ヒト原発生肺高血圧症の病態生理成因および

治療法を解明するために有用であると考えられる肺高

血圧症実験モデルとして研究を行っている Monocrota-

lineラット肺高血圧症についての われわれの実験結

果を中心に検討を加えた今後もよりヒト原発性肺高

隆他

血圧症に近い動物モデルの改良と開発が進められその

成因解明に至ることが望まれる

稿を終るにあたり種々ご協力頂いた筑波大学基礎

医学系病理小形岳三郎教授に謝意を表します

なお本研究については千葉大学猪鼻奨学会研究補

助金千葉大学環境科学研究機構よりの補助金厚生省

特定疾患「原発性肺高血圧症」調査研究費補助金およ

び厚生省特定疾患「呼吸不全J調査研究費補助金によっ

たことを付記する

文 献

1) WagenvoortC A and WagenvoortN

Primary pulmonary hypertension A path-

ologic study of the lung vessels in 156 clini-

cally diagnosed cases Circulation 421163-

11831970

2) GurtnerH PGertshMSalzman C

Scherrer MSluckiP and WyssF

Haufen sich die primar Vaskularen For

man des chronischen Cor pulmonale Sch-

weiz Med Wschr 981579-15891968

3) Report on a WHO meeting Primary pulm-

onary hypertension WHOGeneva1975

4) WatanabeS and OgataT Clinical and

experimental study upon primary pulmonary

hypertension Jap Circul J 40603-610

1976

5) FultonR MHutchinsonE C and Mo-

rganJ A Ventricular weight in cardiac

hypertrophy Br Heart J14413-4201952

6)栗山喬之椙田 隆滝沢弘隆渡辺昌平 小

形岳三郎肺高血圧症の実験的研究ー肺動脈圧

上昇と肺脈管系の形態学的変化の相関一 日胸

疾会誌 14694-5051976

7)椙田 隆栗山喬之滝沢弘隆渡辺昌平 小

形岳三郎原発性肺高血圧症の臨床的ならびに

病理学的研究(第 1報)ー肺の組織学的所見と

臨床所見との対比一特定疾患原発性肺高血圧症

調査研究班研究業績集 1976年 109-114

8) McLeanE K The toxic action of pyrr-

olizidine (Senecio) alkaloids Parmacological

Rewiews 22429-4831970

9) SchoentalR and HeadM A Pathol

ogical changes in rats as a result of treatm-

ent with monocrotaline Br Cancer 9

65 実験的肺高血圧症

229-2371955

10) HarrisD NAndersonR C and Chen

KK The action of senecionine integerr-

iminejacobinelongilobine and spartiodine

especially in the liver J PharmacolExp

Ther 78372-3741942

11) AllenJ R Crotalaria spectabilis toxi-

city studies in turkeys Avian Dis 7318-

3241963

12) EmmelM WSandersA and Henley

W W Crotalaria spectabilis seed pois-

oning in swine J Am Vet Med Ass 39 43-491935

13) LawsL Toxicity of crotalaria mucronata

to sheep Aust Vet J 44453-4551968

14) BullLBCulvenorC C J and Dick

A T The pyrrolzidine alkaloids Chap

7 John Wiley ampSons Inc New York1968

15) RoseA L GardnerC AMc Connell

J D and Bul1 LB Field and experim-

ental investigation of ldquowalk-about disease

of horses (Kimberly horse disease) in Nor-

thern Australia Part 1 Aust Vet J 33

25-331957

16) KhaninM N The aetiology and patho-

genesis of toxic hepatitis with ascietes

Arkh Pathol1835-451956

17) ChesneyC F and AllenJ R Endoca-

rdial五hrosisassociated with monocrotaline-

induced pulmonary hypertension in nonhu

man primates (Macacaarctoides) Am J

VetRes 341577-15811973

18) LalichJ J and MerkowL Pulmonary

arteritis produced in rats by feeding crota-

laria spectabilis Lab Invest 10744-750 1961

19) KayJ MHarrisP and HeathD

Pulmonary hypertension produced in rats by

ingestion of crotalaria spectabilis seeds

Thorax22176-1791967

20) MattocksA R Toxicity of pyrrolizidine

alkaloids Nature 217723ー7281968

21) WagenvoortC AWagenvortN and

DijkH J Effect of fulvine on pulmon-

ary arteries and vein of the rat Thorax

29522-5291974

22)栗山喬之椙田 隆滝沢弘隆渡辺昌平 小

形岳三郎肺高血圧症の実験的研究(第E報)

Monocrotaline肺高血圧症の成立に対する

Immunosuppressive Agents の影響 日胸疾

会誌14(増刊号) 1361976

23)椙田 隆栗山喬之滝沢弘隆渡辺昌平 小

形岳三郎肺高血圧症の実験的研究 (m)Mon-

ocrotaline肺高血圧症の成立に及ぼす Angio-

tensin 1-Converting Enzyme Inhibitor (SQ

20881)投与の影響特定疾患原発性肺高血圧症

調査研究班研究業績集 1977143-147

24) BerkovS and MelmonK L Effect of

Angiotensin II blockade on hypoxic pulm-

onary vasoconstriction in vitro and in vivo

in the rat Clin Res 224991974

25)石原陽子北村諭小坂樹徳原沢直美肺

における VasoactiveSubstanceの代謝と作用

第7報ウサギ肺動脈系および大動脈系におけ

る Angiotensin IIの作用について 日胸疾会

誌 14373-378

26)栗山喬之椙田 隆渡辺昌平 小形岳三郎

肺高血圧症の実験的研究 (IV)Monocrotaline

肺高血圧症における Vasoactivesubstanceの

役割 特定疾患原発性肺高血圧症調査研究班研

究業績集 1977139-142

27)栗山喬之椙田 隆渡辺昌平 小形岳三郎

血管作動性物質の代謝と肺高血圧症 日胸疾会

誌 16418-4241978

28) Takeoka0ArgeunieD M and Lalich

J J Stimulation of Mast cells in rat fed

various chemicals Am J Path 40545-

5541962

29) KayJ MCrawfordN and HeathD

Blood 5Hydroxytryptamine in rats with

pulmonary hypertension produced by ingest-

ion of crotalaria spectabilis seeds Experie-

ntia 24 1149-11501968

30)椙田 隆沢田晶夫栗山喬之渡辺昌平小

形岳三郎肺高血圧の実験的研究-Monocrota-

line肺高血圧症における液性因子の検討一特

定疾患呼吸不全調査研究班研究業績集 1979

153-159

Page 3: kuタl タアIxウヌ 一 - Chiba Uopac.ll.chiba-u.jp/da/curator/900108437/KJ00004742141.pdfloids ヘ24ヤネノョSノモウニ「B ア フ Pyrrolizidine alkaloids ャョィCチノc

61

03

実験的肺高血圧症

Right Ventricular Systolic Pressure tRVSp)VS Medial Thickness

t[何)

9白

05

04 包代 lsquo

9R=~I 196 ~ 10P-O11661 (r2=0 74)

伴う肺血管病変は従来より多くの研究者によりヒト

の原発性肺高血圧症の動物モデノレに相当するものとして 02 有用であるとされたしかし近年 Wagenvoortら21)

a

Control

は Fulvineを投与したラットに肺動脈のみならず7 days 14 days a

auA

21 days

01 26-28 days

10 20 30 4050 100 mmHg

RVSlsquoR

Fig 2 Relation between right ventricular syst-

olic pressure(RVSP)and medial thic-

kness (expressed as DR at small pulm-

onary arteryexternal diameter of whi-

ch is 20ー 30 p)in the control and test

rats A close correlation between the

medial thickness of small pulmonary

artery and the value of RVSP is rev-

ealed

(C Bagamoyoensis)Senecio Jacobaea (Senecionine)

が報告されている Pyrrolizidinealkialoidsの投与に

よる動物実験は 1911年 Cushnyの実験(ウシ)以来

ウマヒツジブタイヌサノレモJレモットハムス

ターラットマウスニワトリシチメンチョウカ

エノレ等種々の動物を用いて研究されている叱動物の

種差により障害される臓器に差が認められている上記

の動物の肝病変についての研究が多く認められる肺病

変についてはラットヘマウス10〉シチメンチョウ10

プタlDヒツジ 18

等の報告があるが処置した動物で確実にほぼ全例に右

室肥大と肺高血圧性血管病変を示すものはいまのとこ

ろラットだけである 1961年 Lalichら加が Crota-

laria Spectabi1isの種子を 01の割で ラットに経

口投与することで肺動脈炎の発生を認め Kay らゆ

がその時同時に肺動脈中膜肥厚右室肥大右室内

圧上昇を伴っていることを報告し現在では dietary

pulmonary hypertension の典型的モデルとされてい

るこれらの植物の種子の経口摂取あるいはその抽出

物質である MonocrotalineFulvineを注射すること

15hウマ〉14ウサギ〉 〉17〉サノレ16イヌ

によりどのような機序で右室肥大を伴う肺血管病変が

おこるかは現在でも不明である Mattocks20)らによ

れば Pyrrolizidine alkaloids 自体が有毒ではなく

それが肝臓で脱水素され非常に活性のある Pyrrol誘導

体となり肺で血管に作用を行うとされているこの過

程は急速に進み一度投与された Pyrrolizidinealka-

loidsは24時間以内に完全に代謝されるといわれる こ

れらの Pyrrolizidinealkaloidsを小動物特に幼若ラ

ットに投与することにより引きおこされる右室肥大を

肺静脈系特に細静脈に平滑筋細胞と腰原線維の増生に

よる著明な血管壁肥厚と内腔の狭窄を認め肺動脈系に

のみ変化のみられるヒトの原発性肺高血圧症のモデノレ

としてはその有用性を減ずるといっているしかし

われわれの検索(Monocrutaline)では内径40μ 以上の

静脈では壁の明瞭な肥厚内腔の狭窄はみられなかっ

たが肺静脈外膜周囲に細胞浸潤を伴う穆出性変化およ

び内膜細胞の腫大性変化が一部認められたその他動

脈周囲気管支周囲における炎性変化および肺胞壁に間

質性肺炎様病変も一部認められたまた肝臓腎臓の病

変も認められ この Monocrotaline投与動物をもっ

てヒト原発性肺高血圧症のモデノレとすることには多

少の無理があることが考えられるしかし経時的に測

定した右室内圧値が示すように 1回皮下注射により

週間)のうちにこれ程確実にかっ進4(3短時間

行性に高度の肺高血圧症を示す実験モデソレは他に現在

のところ存在しないわれわれはヒト肺高血圧症の成

因を解明するのに好都合なモデルと考え肺高血圧症に

みられる動脈系の種々の変化を病態生理学的見地より

解析するのに大いに役立つものと考えている

2 Monocrotalineラット肺高血圧症の成立因子の

検討

a免疫抑制剤の投与と Monocrotaline肺高血圧症

の発生についてm

Munocrotaline投与初期にみられる肺脈管系の諺出

性細胞性反応の肺高血圧症に対する役割を解明する目的

でラットに Monocrotaline注射前あるいは後に

immunosuppressive agentsすなわち ①Predonis-

olone 100 mgkgをMonocroalitne注射 1目前(p群)

②6-Mercaptoprine 100 mgkgを Monocrotaline注射

後 3日目 (6崎 M 群) Actinomycine D 01 mgkg

dayを Monucrotaline注射前 3日関連続 (A群)④

62 椙田

Radiationを Monocrotaline注射前 1日4000R全身で

処置 (R群) を用い右室血圧上昇の程度右室肥大の

程度および肺臓の病理組織学的検索を対照群 (Mo-

nocrotaline単独投与群)と比較検討を行った R群で

は3週 4週目で右室収縮期圧が対照群に比しやや低値

を示し p群 6-M群 A群では差は認められなかっ

た病理組織学的には肺胞壁の円形細胞浸潤の抑制が

各群に共通して認められた肺小血管外膜周囲の円形細

胞浸潤の抑制は R群で最も強く P群で中等度であっ

た一方肺胞上皮の変性脱落像は対照群以外の各群

に共通した所見であった上にのベた成績から各種免

疫抑制剤ないし免疫抑制作用をもっ radiation を

Monocrotaline肺高血圧症の発生過程に作用させるこ

とによりすくなくとも Monoclotaline肺高血圧症に

みる穆出性細胞性反応を抑制しえたことまた一部の実

験群においては右室内圧上昇の抑制をみたことは注

目に値しよう以上のことから Monocrotaline肺高血

圧症にみる肺胞壁穆出性細胞浸潤の肺高血圧の発症に対

する役割は大きいものとはいい難いさらにこれらの細

胞反応を抑制することにより形態学的のみからすれ

ばヒト原発性肺高血圧症により類似した実験モデルを

作りえたものと恩われる

b持続酸素投与の Monocrotaline肺高血圧症に対

する影響

Hypoxiaが筋性肺動脈の撃縮をひきおこすことは

一般に認められている事実である Monocrotaline投

与後のラットに初期に認められる肺脈管系の変化と

hypoxiaとの関係をみるために Monocrotaline注射

直後より高濃度酸素 (60)下で飼育し肺高血圧症

の成立にいかなる影響をおよぼすかをみるために実験を

行った高濃度酸素の持続投与は右室収縮期圧右室

肥大を対照群と比し有意に抑制することが認められ

さらに平均生存日数の延長が認められた詳細について

は現在検討中であるが持続高濃度酸素投与は Mo

nocrotaline投与後の右室圧上昇の抑制にとって有効な

因子であることが明らかになった

c Angiotensin IIと Monocrotaline肺高血圧症と

の関連について23)

近年肺はガス交換の働きの他に vasoactive substa-

nceの代謝に密接な関係のある臓器であることが解明さ

れてきている angiotensin 1から angiotensin IIへ

の変換が主として肺に多く含まれている転換酵素

(angiotensin 1convertingenzyme)によって行われ

ていることが明らかにされ renin-angiotensin系に占

める肺の役割に関心がもたれるようになった Angio-

隆他

tensin IIは動脈壁の平滑筋に直接働き強い血管収

縮作用をもち現在まで生体で得られる最も強力な昇圧

物質であるといわれる Berkovら却は低酸素負荷時

の肺血管墜縮には微量の angiotensin IIが不可欠で

あるといい石原北村ら25)は種々の血管平滑筋収縮

剤の肺動脈切片に対する反応は低濃度の angiotensin

Eの存在により著明に増強されることを報告している

われわれは穆出性細胞性反応の変化と hypoxiaと

上記の変化に注目し Monocrotaline肺高血圧症の成因

に renin-angiotensin系が関与しているか否かを追求

する目的で angiotensin 1が angiotensin IIに変換

するのに必要である転換酵素を阻害する angiotensin

Iconverting engyme inhibitor (SQ20881)の慢性

投与の影響について実験を行ってみた Monocrotaline

投与直後のラットに 8時間ごとに SQ-20881を2mg

kgを3週間連続投与した群においては 対照群と同様

に右室肥大肺小動脈の中膜の肥厚右室内圧の上昇

を著明に示した故に angiotensin IIは Monocrota-

lineラット肺高血圧症には 主役を演じているとは考

えられないことがわかった

d血管作動性物質と Monocrotaline肺高血圧症と

の関連について

ヒト原発性肺高血圧症例では acetylcholinetolaz-

olinereserpineなどの投与により肺動脈圧が一過性

に低下することが報告されておりこの事実は肺血管室華

縮の存在を裏付けていると考えられる Monocrotaline

ラット肺高血圧症については絶えず昇圧因子が作用し

ていることがその形態学的観察より予想されるがそ

の精細なメカニズムは不明である肺高血圧状態の持続

に対してどのような神経的薬理的調節機構が関与して

いるかは成因とも関連して興味ある問題である

Monocrotaline肺高血圧症における肺動脈の機能的

性状についてm

われわれは Monocrotaline肺高血圧症ラットの頚

静脈に acetylcholineを注入し右室内圧の変化を観

察した実験群では 10pgkg という微量に対しでも

右室内圧の一過性低下を認めた一方対照群では 10

pgkgでもほとんど変化は認められなかったこれら

の事実は Monocrotaline肺高血圧症では acetylch-

oline感受性の増加があり少なくとも その肺高血圧

が cholinergic receptor の blockによるものでない

ことを示し肺動脈壁の変化が器質的に硬化したもの

ではなく緊張緩和しうるものでありまた絶えず肺

動脈圧を上昇させる因子が作用していることを示唆して

いると考えられる

63 実験的肺高血圧症

e 各種血管作動性物質抑制剤投与による検討27)

そこでわれわれはいかなる昇圧因子がどのように

作用しているかを解明する目的で肺血管に収縮的に作

用すると思われる種々の血管作動性物質の合成阻害剤

措抗剤の慢性投与を行って Monocrotaline肺高血圧

症の成立におよぼす影響を検討した

Monocrotaline肺高血圧症の成立におよぼす α-rec-

eptorの関与について

α-receptorの関与をみる目的で a-blocker である

Phenoxybenzamine (P 0 B)の慢性投与の影響を検討

した Monocrotaline投与後のラットに毎日 13mgkg

POBを腹腔内に投与した実験群では 3週後の 右

室内圧 右室肥大は対照群との聞で 明らかな有意差

(PltOOl)を認めたこのことは Monocrotaline注射

直後から POBを投与することにより右室肥大を伴

なう肺高血圧症の成立を完全ではないが明らかに有

意に抑制したすなわち α-receptor の関与が大きいこ

とを考えさせる

Monocrotaline肺高血圧症の成立におよぼす serot-

oninの関与について

従来より諸家により Ivlonocrotaline肺高血圧症の

成立と mast cellの増殖の関係28)serotoninとの関

係29〉に検討が加えられてきたがいまだ解決されてい

ないそれ故肺血管に対し収縮作用をもっ serotonin

の関与を検討するためその合成阻害剤 PChlorophe

nylalanine (PCP A) を Monocrotaline投与ラット

に 500mgkgの割で 7日毎に腹腔内に投与した(実

験群)その結果は実験群は対照群 (Monocr前 aline

単独投与)に比し右室肥大値は有意に小さかった (p

く005)又右室収縮期圧は抑制傾向をみたとれより

serotoninがある程度関与していることが示唆される

Monocrotaline肺高血圧症の成立におよぼす pros-

taglandinsの関与について

Prostaglandinsは arachidonic acidより合成される

がその合成阻害剤 Indomethacineを Monocrotaline

投与ラットに 7mgkgを5日毎に腹腔内投与した(実

験群)対照群と比し実験群は右室肥大では抑制傾

向があり右室収縮期圧では圧抑制の明らかな差が認め

られた(plt001)これより prostaglandinsも Mon-

ocrotaline肺高血圧症の成立にある程度関与しているこ

とが示唆される

Monocrotaline肺高血圧症におよぼす s-receptor

[Ca+つの関与について

s-blockerである Propranolol平滑筋の収縮に必要

な [Ca++Jの関与を検討するため [Ca++J括抗剤であ

る Nifedipineについてそれぞれ検討したがこれらは

明らかな推計学的に有意の抑制傾向はみられなかった

以上の各種薬剤の慢性投与実験から Monocrotaline

肺高血圧の成立には主として adrenergicα-receptor

serotoninprostaglandinsの作用を介する機序がそれ

ぞれおそらくは相互に複雑に関与していることが示唆

されたこのことは最も強力に抑制しえた POBの

場合においてもそれのみでは完全に抑制することが出

来なかったことからも明らかである一方 Monocrota-

lineの投与により肺を主座とした初期の穆出性病変

さらに肺脈管の病的状態が血管作動性物質の相互関与

により生ずることは肺血管内皮細胞がきわめて重要な

役割りを血管作動性物質の代謝にもつことを示唆する

ものとしてわれわれは今後検討をつづけるつもりであ

f Monocrotaline肺高血圧症における液性因子に

ついての検討ω

1回注射で投与された Monocrotalineは生体内で

急速に分解され 24時間以内に代謝され排出されるとい

われているこのことはこの時期が Monocrotaline

肺高血圧症の成立にきわめて重要であると考えられ

るそれ故 Monocrtoaline投与後の初期にー側肺血

管床のみに代謝物質を作用させることによって以後いか

なる変化が肺血管に生じ以後経過を追って どのよう

な機序が展開し肺高血圧はいかなる変化をうけるであ

ろうか以上のような考えにたって Monocrotaline

注射時にすでに人工的にー側肺(左肺)に無気肺を作

成することによって一側肺の血流を社絶させ Mon-

ocrotalineの代謝物質を他側肺(右肺)だけにある期

間作用させる実験を行ったラットに連続 5日間の気胸

作製の 2日目に Monocrotalineを投与し 3週後に型

のごとく諸値を測定した (Fig3)実験群CP+M群)

の右心室血圧値は対照群 (M群)に比し明らかに低

値を示した右室肥大の程度も同様に低値を示した

外直径が主に20-50μ の肺小動脈でのモノレフオメトリ

ーでは中膜の肥厚度(外直径 2R 中膜の厚さ 2D

2D2R )は P十M群右肺80土18-176土33

左肺9129-188t36M群右肺20217

-28643左肺 2012 3-356土86であり

実験群は明らかに対照群よりも小さくまた一例をのぞ

いて左右の肺の聞に中膜の肥厚度の差異は推計学的に

認められなかった実験群でなぜ左右差が認められなか

ったかの問題があるがこの点については初期の Py-

rroleによる血管壁の傷害の変化は 3週後には治療し

てしまうとも想像されるが明確な原因は今後の追求を

P P+M M P P十M M

Fig 3 E旺ectof right ventricular systolic pres-sure (R VSP)right ventricular hype-

rtrophy (expressed as RVLV+S) in

three groups (P arti五cialpneumoth-

orax P+ M artificial pneumothorax

+ MonocrotalineM monocrotaline)

A significant reduction of RV L V + S

and RVSP value is observed in P+M group as compared to those value of

M group

必要とする肺の血管内皮細胞が血管作動性物質の代

謝に深く関わっているらしいと考えるならば Monoc-

rotaline投与により 血管作動性物質の代謝に異常が

おこり結果として肺動脈系にたえず昇圧因子が作用す

る所ヘー側無気肺作成により昇圧因子に対抗する作

用機序(神経系統血管作動性物質)が働いていたとも

考えられるが成因機序は不明であるしかしこの事実

は Monocrotaline注射初期における肺血管床が以後

発症する肺血圧上昇と密接な関係があることが示唆され

るとともに Monocrotaline投与後にみられる肺小動

脈の中膜肥厚は初期の Monocrotaline代謝物質の作

用の結果よりもその後に生ずる圧上昇の影響と考えら

れるわれわれが行ってきたラットの Monocrotaline

肺高血圧症の実験においてこれほど明らかに右室圧上

昇右室肥大を抑制し得たものはいままでの各種薬剤

投与ではなかったまたこのような点に関する内外の報

告もみない薬剤ではなく肺循環動態を変化させるこ

とにより抑制しえたということはその解釈は極めて困

難であるが興味深いものなので今後も種々の方法によ

ってその機序を追求していきたいと考えている

おわりに

以上ヒト原発生肺高血圧症の病態生理成因および

治療法を解明するために有用であると考えられる肺高

血圧症実験モデルとして研究を行っている Monocrota-

lineラット肺高血圧症についての われわれの実験結

果を中心に検討を加えた今後もよりヒト原発性肺高

隆他

血圧症に近い動物モデルの改良と開発が進められその

成因解明に至ることが望まれる

稿を終るにあたり種々ご協力頂いた筑波大学基礎

医学系病理小形岳三郎教授に謝意を表します

なお本研究については千葉大学猪鼻奨学会研究補

助金千葉大学環境科学研究機構よりの補助金厚生省

特定疾患「原発性肺高血圧症」調査研究費補助金およ

び厚生省特定疾患「呼吸不全J調査研究費補助金によっ

たことを付記する

文 献

1) WagenvoortC A and WagenvoortN

Primary pulmonary hypertension A path-

ologic study of the lung vessels in 156 clini-

cally diagnosed cases Circulation 421163-

11831970

2) GurtnerH PGertshMSalzman C

Scherrer MSluckiP and WyssF

Haufen sich die primar Vaskularen For

man des chronischen Cor pulmonale Sch-

weiz Med Wschr 981579-15891968

3) Report on a WHO meeting Primary pulm-

onary hypertension WHOGeneva1975

4) WatanabeS and OgataT Clinical and

experimental study upon primary pulmonary

hypertension Jap Circul J 40603-610

1976

5) FultonR MHutchinsonE C and Mo-

rganJ A Ventricular weight in cardiac

hypertrophy Br Heart J14413-4201952

6)栗山喬之椙田 隆滝沢弘隆渡辺昌平 小

形岳三郎肺高血圧症の実験的研究ー肺動脈圧

上昇と肺脈管系の形態学的変化の相関一 日胸

疾会誌 14694-5051976

7)椙田 隆栗山喬之滝沢弘隆渡辺昌平 小

形岳三郎原発性肺高血圧症の臨床的ならびに

病理学的研究(第 1報)ー肺の組織学的所見と

臨床所見との対比一特定疾患原発性肺高血圧症

調査研究班研究業績集 1976年 109-114

8) McLeanE K The toxic action of pyrr-

olizidine (Senecio) alkaloids Parmacological

Rewiews 22429-4831970

9) SchoentalR and HeadM A Pathol

ogical changes in rats as a result of treatm-

ent with monocrotaline Br Cancer 9

65 実験的肺高血圧症

229-2371955

10) HarrisD NAndersonR C and Chen

KK The action of senecionine integerr-

iminejacobinelongilobine and spartiodine

especially in the liver J PharmacolExp

Ther 78372-3741942

11) AllenJ R Crotalaria spectabilis toxi-

city studies in turkeys Avian Dis 7318-

3241963

12) EmmelM WSandersA and Henley

W W Crotalaria spectabilis seed pois-

oning in swine J Am Vet Med Ass 39 43-491935

13) LawsL Toxicity of crotalaria mucronata

to sheep Aust Vet J 44453-4551968

14) BullLBCulvenorC C J and Dick

A T The pyrrolzidine alkaloids Chap

7 John Wiley ampSons Inc New York1968

15) RoseA L GardnerC AMc Connell

J D and Bul1 LB Field and experim-

ental investigation of ldquowalk-about disease

of horses (Kimberly horse disease) in Nor-

thern Australia Part 1 Aust Vet J 33

25-331957

16) KhaninM N The aetiology and patho-

genesis of toxic hepatitis with ascietes

Arkh Pathol1835-451956

17) ChesneyC F and AllenJ R Endoca-

rdial五hrosisassociated with monocrotaline-

induced pulmonary hypertension in nonhu

man primates (Macacaarctoides) Am J

VetRes 341577-15811973

18) LalichJ J and MerkowL Pulmonary

arteritis produced in rats by feeding crota-

laria spectabilis Lab Invest 10744-750 1961

19) KayJ MHarrisP and HeathD

Pulmonary hypertension produced in rats by

ingestion of crotalaria spectabilis seeds

Thorax22176-1791967

20) MattocksA R Toxicity of pyrrolizidine

alkaloids Nature 217723ー7281968

21) WagenvoortC AWagenvortN and

DijkH J Effect of fulvine on pulmon-

ary arteries and vein of the rat Thorax

29522-5291974

22)栗山喬之椙田 隆滝沢弘隆渡辺昌平 小

形岳三郎肺高血圧症の実験的研究(第E報)

Monocrotaline肺高血圧症の成立に対する

Immunosuppressive Agents の影響 日胸疾

会誌14(増刊号) 1361976

23)椙田 隆栗山喬之滝沢弘隆渡辺昌平 小

形岳三郎肺高血圧症の実験的研究 (m)Mon-

ocrotaline肺高血圧症の成立に及ぼす Angio-

tensin 1-Converting Enzyme Inhibitor (SQ

20881)投与の影響特定疾患原発性肺高血圧症

調査研究班研究業績集 1977143-147

24) BerkovS and MelmonK L Effect of

Angiotensin II blockade on hypoxic pulm-

onary vasoconstriction in vitro and in vivo

in the rat Clin Res 224991974

25)石原陽子北村諭小坂樹徳原沢直美肺

における VasoactiveSubstanceの代謝と作用

第7報ウサギ肺動脈系および大動脈系におけ

る Angiotensin IIの作用について 日胸疾会

誌 14373-378

26)栗山喬之椙田 隆渡辺昌平 小形岳三郎

肺高血圧症の実験的研究 (IV)Monocrotaline

肺高血圧症における Vasoactivesubstanceの

役割 特定疾患原発性肺高血圧症調査研究班研

究業績集 1977139-142

27)栗山喬之椙田 隆渡辺昌平 小形岳三郎

血管作動性物質の代謝と肺高血圧症 日胸疾会

誌 16418-4241978

28) Takeoka0ArgeunieD M and Lalich

J J Stimulation of Mast cells in rat fed

various chemicals Am J Path 40545-

5541962

29) KayJ MCrawfordN and HeathD

Blood 5Hydroxytryptamine in rats with

pulmonary hypertension produced by ingest-

ion of crotalaria spectabilis seeds Experie-

ntia 24 1149-11501968

30)椙田 隆沢田晶夫栗山喬之渡辺昌平小

形岳三郎肺高血圧の実験的研究-Monocrota-

line肺高血圧症における液性因子の検討一特

定疾患呼吸不全調査研究班研究業績集 1979

153-159

Page 4: kuタl タアIxウヌ 一 - Chiba Uopac.ll.chiba-u.jp/da/curator/900108437/KJ00004742141.pdfloids ヘ24ヤネノョSノモウニ「B ア フ Pyrrolizidine alkaloids ャョィCチノc

62 椙田

Radiationを Monocrotaline注射前 1日4000R全身で

処置 (R群) を用い右室血圧上昇の程度右室肥大の

程度および肺臓の病理組織学的検索を対照群 (Mo-

nocrotaline単独投与群)と比較検討を行った R群で

は3週 4週目で右室収縮期圧が対照群に比しやや低値

を示し p群 6-M群 A群では差は認められなかっ

た病理組織学的には肺胞壁の円形細胞浸潤の抑制が

各群に共通して認められた肺小血管外膜周囲の円形細

胞浸潤の抑制は R群で最も強く P群で中等度であっ

た一方肺胞上皮の変性脱落像は対照群以外の各群

に共通した所見であった上にのベた成績から各種免

疫抑制剤ないし免疫抑制作用をもっ radiation を

Monocrotaline肺高血圧症の発生過程に作用させるこ

とによりすくなくとも Monoclotaline肺高血圧症に

みる穆出性細胞性反応を抑制しえたことまた一部の実

験群においては右室内圧上昇の抑制をみたことは注

目に値しよう以上のことから Monocrotaline肺高血

圧症にみる肺胞壁穆出性細胞浸潤の肺高血圧の発症に対

する役割は大きいものとはいい難いさらにこれらの細

胞反応を抑制することにより形態学的のみからすれ

ばヒト原発性肺高血圧症により類似した実験モデルを

作りえたものと恩われる

b持続酸素投与の Monocrotaline肺高血圧症に対

する影響

Hypoxiaが筋性肺動脈の撃縮をひきおこすことは

一般に認められている事実である Monocrotaline投

与後のラットに初期に認められる肺脈管系の変化と

hypoxiaとの関係をみるために Monocrotaline注射

直後より高濃度酸素 (60)下で飼育し肺高血圧症

の成立にいかなる影響をおよぼすかをみるために実験を

行った高濃度酸素の持続投与は右室収縮期圧右室

肥大を対照群と比し有意に抑制することが認められ

さらに平均生存日数の延長が認められた詳細について

は現在検討中であるが持続高濃度酸素投与は Mo

nocrotaline投与後の右室圧上昇の抑制にとって有効な

因子であることが明らかになった

c Angiotensin IIと Monocrotaline肺高血圧症と

の関連について23)

近年肺はガス交換の働きの他に vasoactive substa-

nceの代謝に密接な関係のある臓器であることが解明さ

れてきている angiotensin 1から angiotensin IIへ

の変換が主として肺に多く含まれている転換酵素

(angiotensin 1convertingenzyme)によって行われ

ていることが明らかにされ renin-angiotensin系に占

める肺の役割に関心がもたれるようになった Angio-

隆他

tensin IIは動脈壁の平滑筋に直接働き強い血管収

縮作用をもち現在まで生体で得られる最も強力な昇圧

物質であるといわれる Berkovら却は低酸素負荷時

の肺血管墜縮には微量の angiotensin IIが不可欠で

あるといい石原北村ら25)は種々の血管平滑筋収縮

剤の肺動脈切片に対する反応は低濃度の angiotensin

Eの存在により著明に増強されることを報告している

われわれは穆出性細胞性反応の変化と hypoxiaと

上記の変化に注目し Monocrotaline肺高血圧症の成因

に renin-angiotensin系が関与しているか否かを追求

する目的で angiotensin 1が angiotensin IIに変換

するのに必要である転換酵素を阻害する angiotensin

Iconverting engyme inhibitor (SQ20881)の慢性

投与の影響について実験を行ってみた Monocrotaline

投与直後のラットに 8時間ごとに SQ-20881を2mg

kgを3週間連続投与した群においては 対照群と同様

に右室肥大肺小動脈の中膜の肥厚右室内圧の上昇

を著明に示した故に angiotensin IIは Monocrota-

lineラット肺高血圧症には 主役を演じているとは考

えられないことがわかった

d血管作動性物質と Monocrotaline肺高血圧症と

の関連について

ヒト原発性肺高血圧症例では acetylcholinetolaz-

olinereserpineなどの投与により肺動脈圧が一過性

に低下することが報告されておりこの事実は肺血管室華

縮の存在を裏付けていると考えられる Monocrotaline

ラット肺高血圧症については絶えず昇圧因子が作用し

ていることがその形態学的観察より予想されるがそ

の精細なメカニズムは不明である肺高血圧状態の持続

に対してどのような神経的薬理的調節機構が関与して

いるかは成因とも関連して興味ある問題である

Monocrotaline肺高血圧症における肺動脈の機能的

性状についてm

われわれは Monocrotaline肺高血圧症ラットの頚

静脈に acetylcholineを注入し右室内圧の変化を観

察した実験群では 10pgkg という微量に対しでも

右室内圧の一過性低下を認めた一方対照群では 10

pgkgでもほとんど変化は認められなかったこれら

の事実は Monocrotaline肺高血圧症では acetylch-

oline感受性の増加があり少なくとも その肺高血圧

が cholinergic receptor の blockによるものでない

ことを示し肺動脈壁の変化が器質的に硬化したもの

ではなく緊張緩和しうるものでありまた絶えず肺

動脈圧を上昇させる因子が作用していることを示唆して

いると考えられる

63 実験的肺高血圧症

e 各種血管作動性物質抑制剤投与による検討27)

そこでわれわれはいかなる昇圧因子がどのように

作用しているかを解明する目的で肺血管に収縮的に作

用すると思われる種々の血管作動性物質の合成阻害剤

措抗剤の慢性投与を行って Monocrotaline肺高血圧

症の成立におよぼす影響を検討した

Monocrotaline肺高血圧症の成立におよぼす α-rec-

eptorの関与について

α-receptorの関与をみる目的で a-blocker である

Phenoxybenzamine (P 0 B)の慢性投与の影響を検討

した Monocrotaline投与後のラットに毎日 13mgkg

POBを腹腔内に投与した実験群では 3週後の 右

室内圧 右室肥大は対照群との聞で 明らかな有意差

(PltOOl)を認めたこのことは Monocrotaline注射

直後から POBを投与することにより右室肥大を伴

なう肺高血圧症の成立を完全ではないが明らかに有

意に抑制したすなわち α-receptor の関与が大きいこ

とを考えさせる

Monocrotaline肺高血圧症の成立におよぼす serot-

oninの関与について

従来より諸家により Ivlonocrotaline肺高血圧症の

成立と mast cellの増殖の関係28)serotoninとの関

係29〉に検討が加えられてきたがいまだ解決されてい

ないそれ故肺血管に対し収縮作用をもっ serotonin

の関与を検討するためその合成阻害剤 PChlorophe

nylalanine (PCP A) を Monocrotaline投与ラット

に 500mgkgの割で 7日毎に腹腔内に投与した(実

験群)その結果は実験群は対照群 (Monocr前 aline

単独投与)に比し右室肥大値は有意に小さかった (p

く005)又右室収縮期圧は抑制傾向をみたとれより

serotoninがある程度関与していることが示唆される

Monocrotaline肺高血圧症の成立におよぼす pros-

taglandinsの関与について

Prostaglandinsは arachidonic acidより合成される

がその合成阻害剤 Indomethacineを Monocrotaline

投与ラットに 7mgkgを5日毎に腹腔内投与した(実

験群)対照群と比し実験群は右室肥大では抑制傾

向があり右室収縮期圧では圧抑制の明らかな差が認め

られた(plt001)これより prostaglandinsも Mon-

ocrotaline肺高血圧症の成立にある程度関与しているこ

とが示唆される

Monocrotaline肺高血圧症におよぼす s-receptor

[Ca+つの関与について

s-blockerである Propranolol平滑筋の収縮に必要

な [Ca++Jの関与を検討するため [Ca++J括抗剤であ

る Nifedipineについてそれぞれ検討したがこれらは

明らかな推計学的に有意の抑制傾向はみられなかった

以上の各種薬剤の慢性投与実験から Monocrotaline

肺高血圧の成立には主として adrenergicα-receptor

serotoninprostaglandinsの作用を介する機序がそれ

ぞれおそらくは相互に複雑に関与していることが示唆

されたこのことは最も強力に抑制しえた POBの

場合においてもそれのみでは完全に抑制することが出

来なかったことからも明らかである一方 Monocrota-

lineの投与により肺を主座とした初期の穆出性病変

さらに肺脈管の病的状態が血管作動性物質の相互関与

により生ずることは肺血管内皮細胞がきわめて重要な

役割りを血管作動性物質の代謝にもつことを示唆する

ものとしてわれわれは今後検討をつづけるつもりであ

f Monocrotaline肺高血圧症における液性因子に

ついての検討ω

1回注射で投与された Monocrotalineは生体内で

急速に分解され 24時間以内に代謝され排出されるとい

われているこのことはこの時期が Monocrotaline

肺高血圧症の成立にきわめて重要であると考えられ

るそれ故 Monocrtoaline投与後の初期にー側肺血

管床のみに代謝物質を作用させることによって以後いか

なる変化が肺血管に生じ以後経過を追って どのよう

な機序が展開し肺高血圧はいかなる変化をうけるであ

ろうか以上のような考えにたって Monocrotaline

注射時にすでに人工的にー側肺(左肺)に無気肺を作

成することによって一側肺の血流を社絶させ Mon-

ocrotalineの代謝物質を他側肺(右肺)だけにある期

間作用させる実験を行ったラットに連続 5日間の気胸

作製の 2日目に Monocrotalineを投与し 3週後に型

のごとく諸値を測定した (Fig3)実験群CP+M群)

の右心室血圧値は対照群 (M群)に比し明らかに低

値を示した右室肥大の程度も同様に低値を示した

外直径が主に20-50μ の肺小動脈でのモノレフオメトリ

ーでは中膜の肥厚度(外直径 2R 中膜の厚さ 2D

2D2R )は P十M群右肺80土18-176土33

左肺9129-188t36M群右肺20217

-28643左肺 2012 3-356土86であり

実験群は明らかに対照群よりも小さくまた一例をのぞ

いて左右の肺の聞に中膜の肥厚度の差異は推計学的に

認められなかった実験群でなぜ左右差が認められなか

ったかの問題があるがこの点については初期の Py-

rroleによる血管壁の傷害の変化は 3週後には治療し

てしまうとも想像されるが明確な原因は今後の追求を

P P+M M P P十M M

Fig 3 E旺ectof right ventricular systolic pres-sure (R VSP)right ventricular hype-

rtrophy (expressed as RVLV+S) in

three groups (P arti五cialpneumoth-

orax P+ M artificial pneumothorax

+ MonocrotalineM monocrotaline)

A significant reduction of RV L V + S

and RVSP value is observed in P+M group as compared to those value of

M group

必要とする肺の血管内皮細胞が血管作動性物質の代

謝に深く関わっているらしいと考えるならば Monoc-

rotaline投与により 血管作動性物質の代謝に異常が

おこり結果として肺動脈系にたえず昇圧因子が作用す

る所ヘー側無気肺作成により昇圧因子に対抗する作

用機序(神経系統血管作動性物質)が働いていたとも

考えられるが成因機序は不明であるしかしこの事実

は Monocrotaline注射初期における肺血管床が以後

発症する肺血圧上昇と密接な関係があることが示唆され

るとともに Monocrotaline投与後にみられる肺小動

脈の中膜肥厚は初期の Monocrotaline代謝物質の作

用の結果よりもその後に生ずる圧上昇の影響と考えら

れるわれわれが行ってきたラットの Monocrotaline

肺高血圧症の実験においてこれほど明らかに右室圧上

昇右室肥大を抑制し得たものはいままでの各種薬剤

投与ではなかったまたこのような点に関する内外の報

告もみない薬剤ではなく肺循環動態を変化させるこ

とにより抑制しえたということはその解釈は極めて困

難であるが興味深いものなので今後も種々の方法によ

ってその機序を追求していきたいと考えている

おわりに

以上ヒト原発生肺高血圧症の病態生理成因および

治療法を解明するために有用であると考えられる肺高

血圧症実験モデルとして研究を行っている Monocrota-

lineラット肺高血圧症についての われわれの実験結

果を中心に検討を加えた今後もよりヒト原発性肺高

隆他

血圧症に近い動物モデルの改良と開発が進められその

成因解明に至ることが望まれる

稿を終るにあたり種々ご協力頂いた筑波大学基礎

医学系病理小形岳三郎教授に謝意を表します

なお本研究については千葉大学猪鼻奨学会研究補

助金千葉大学環境科学研究機構よりの補助金厚生省

特定疾患「原発性肺高血圧症」調査研究費補助金およ

び厚生省特定疾患「呼吸不全J調査研究費補助金によっ

たことを付記する

文 献

1) WagenvoortC A and WagenvoortN

Primary pulmonary hypertension A path-

ologic study of the lung vessels in 156 clini-

cally diagnosed cases Circulation 421163-

11831970

2) GurtnerH PGertshMSalzman C

Scherrer MSluckiP and WyssF

Haufen sich die primar Vaskularen For

man des chronischen Cor pulmonale Sch-

weiz Med Wschr 981579-15891968

3) Report on a WHO meeting Primary pulm-

onary hypertension WHOGeneva1975

4) WatanabeS and OgataT Clinical and

experimental study upon primary pulmonary

hypertension Jap Circul J 40603-610

1976

5) FultonR MHutchinsonE C and Mo-

rganJ A Ventricular weight in cardiac

hypertrophy Br Heart J14413-4201952

6)栗山喬之椙田 隆滝沢弘隆渡辺昌平 小

形岳三郎肺高血圧症の実験的研究ー肺動脈圧

上昇と肺脈管系の形態学的変化の相関一 日胸

疾会誌 14694-5051976

7)椙田 隆栗山喬之滝沢弘隆渡辺昌平 小

形岳三郎原発性肺高血圧症の臨床的ならびに

病理学的研究(第 1報)ー肺の組織学的所見と

臨床所見との対比一特定疾患原発性肺高血圧症

調査研究班研究業績集 1976年 109-114

8) McLeanE K The toxic action of pyrr-

olizidine (Senecio) alkaloids Parmacological

Rewiews 22429-4831970

9) SchoentalR and HeadM A Pathol

ogical changes in rats as a result of treatm-

ent with monocrotaline Br Cancer 9

65 実験的肺高血圧症

229-2371955

10) HarrisD NAndersonR C and Chen

KK The action of senecionine integerr-

iminejacobinelongilobine and spartiodine

especially in the liver J PharmacolExp

Ther 78372-3741942

11) AllenJ R Crotalaria spectabilis toxi-

city studies in turkeys Avian Dis 7318-

3241963

12) EmmelM WSandersA and Henley

W W Crotalaria spectabilis seed pois-

oning in swine J Am Vet Med Ass 39 43-491935

13) LawsL Toxicity of crotalaria mucronata

to sheep Aust Vet J 44453-4551968

14) BullLBCulvenorC C J and Dick

A T The pyrrolzidine alkaloids Chap

7 John Wiley ampSons Inc New York1968

15) RoseA L GardnerC AMc Connell

J D and Bul1 LB Field and experim-

ental investigation of ldquowalk-about disease

of horses (Kimberly horse disease) in Nor-

thern Australia Part 1 Aust Vet J 33

25-331957

16) KhaninM N The aetiology and patho-

genesis of toxic hepatitis with ascietes

Arkh Pathol1835-451956

17) ChesneyC F and AllenJ R Endoca-

rdial五hrosisassociated with monocrotaline-

induced pulmonary hypertension in nonhu

man primates (Macacaarctoides) Am J

VetRes 341577-15811973

18) LalichJ J and MerkowL Pulmonary

arteritis produced in rats by feeding crota-

laria spectabilis Lab Invest 10744-750 1961

19) KayJ MHarrisP and HeathD

Pulmonary hypertension produced in rats by

ingestion of crotalaria spectabilis seeds

Thorax22176-1791967

20) MattocksA R Toxicity of pyrrolizidine

alkaloids Nature 217723ー7281968

21) WagenvoortC AWagenvortN and

DijkH J Effect of fulvine on pulmon-

ary arteries and vein of the rat Thorax

29522-5291974

22)栗山喬之椙田 隆滝沢弘隆渡辺昌平 小

形岳三郎肺高血圧症の実験的研究(第E報)

Monocrotaline肺高血圧症の成立に対する

Immunosuppressive Agents の影響 日胸疾

会誌14(増刊号) 1361976

23)椙田 隆栗山喬之滝沢弘隆渡辺昌平 小

形岳三郎肺高血圧症の実験的研究 (m)Mon-

ocrotaline肺高血圧症の成立に及ぼす Angio-

tensin 1-Converting Enzyme Inhibitor (SQ

20881)投与の影響特定疾患原発性肺高血圧症

調査研究班研究業績集 1977143-147

24) BerkovS and MelmonK L Effect of

Angiotensin II blockade on hypoxic pulm-

onary vasoconstriction in vitro and in vivo

in the rat Clin Res 224991974

25)石原陽子北村諭小坂樹徳原沢直美肺

における VasoactiveSubstanceの代謝と作用

第7報ウサギ肺動脈系および大動脈系におけ

る Angiotensin IIの作用について 日胸疾会

誌 14373-378

26)栗山喬之椙田 隆渡辺昌平 小形岳三郎

肺高血圧症の実験的研究 (IV)Monocrotaline

肺高血圧症における Vasoactivesubstanceの

役割 特定疾患原発性肺高血圧症調査研究班研

究業績集 1977139-142

27)栗山喬之椙田 隆渡辺昌平 小形岳三郎

血管作動性物質の代謝と肺高血圧症 日胸疾会

誌 16418-4241978

28) Takeoka0ArgeunieD M and Lalich

J J Stimulation of Mast cells in rat fed

various chemicals Am J Path 40545-

5541962

29) KayJ MCrawfordN and HeathD

Blood 5Hydroxytryptamine in rats with

pulmonary hypertension produced by ingest-

ion of crotalaria spectabilis seeds Experie-

ntia 24 1149-11501968

30)椙田 隆沢田晶夫栗山喬之渡辺昌平小

形岳三郎肺高血圧の実験的研究-Monocrota-

line肺高血圧症における液性因子の検討一特

定疾患呼吸不全調査研究班研究業績集 1979

153-159

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63 実験的肺高血圧症

e 各種血管作動性物質抑制剤投与による検討27)

そこでわれわれはいかなる昇圧因子がどのように

作用しているかを解明する目的で肺血管に収縮的に作

用すると思われる種々の血管作動性物質の合成阻害剤

措抗剤の慢性投与を行って Monocrotaline肺高血圧

症の成立におよぼす影響を検討した

Monocrotaline肺高血圧症の成立におよぼす α-rec-

eptorの関与について

α-receptorの関与をみる目的で a-blocker である

Phenoxybenzamine (P 0 B)の慢性投与の影響を検討

した Monocrotaline投与後のラットに毎日 13mgkg

POBを腹腔内に投与した実験群では 3週後の 右

室内圧 右室肥大は対照群との聞で 明らかな有意差

(PltOOl)を認めたこのことは Monocrotaline注射

直後から POBを投与することにより右室肥大を伴

なう肺高血圧症の成立を完全ではないが明らかに有

意に抑制したすなわち α-receptor の関与が大きいこ

とを考えさせる

Monocrotaline肺高血圧症の成立におよぼす serot-

oninの関与について

従来より諸家により Ivlonocrotaline肺高血圧症の

成立と mast cellの増殖の関係28)serotoninとの関

係29〉に検討が加えられてきたがいまだ解決されてい

ないそれ故肺血管に対し収縮作用をもっ serotonin

の関与を検討するためその合成阻害剤 PChlorophe

nylalanine (PCP A) を Monocrotaline投与ラット

に 500mgkgの割で 7日毎に腹腔内に投与した(実

験群)その結果は実験群は対照群 (Monocr前 aline

単独投与)に比し右室肥大値は有意に小さかった (p

く005)又右室収縮期圧は抑制傾向をみたとれより

serotoninがある程度関与していることが示唆される

Monocrotaline肺高血圧症の成立におよぼす pros-

taglandinsの関与について

Prostaglandinsは arachidonic acidより合成される

がその合成阻害剤 Indomethacineを Monocrotaline

投与ラットに 7mgkgを5日毎に腹腔内投与した(実

験群)対照群と比し実験群は右室肥大では抑制傾

向があり右室収縮期圧では圧抑制の明らかな差が認め

られた(plt001)これより prostaglandinsも Mon-

ocrotaline肺高血圧症の成立にある程度関与しているこ

とが示唆される

Monocrotaline肺高血圧症におよぼす s-receptor

[Ca+つの関与について

s-blockerである Propranolol平滑筋の収縮に必要

な [Ca++Jの関与を検討するため [Ca++J括抗剤であ

る Nifedipineについてそれぞれ検討したがこれらは

明らかな推計学的に有意の抑制傾向はみられなかった

以上の各種薬剤の慢性投与実験から Monocrotaline

肺高血圧の成立には主として adrenergicα-receptor

serotoninprostaglandinsの作用を介する機序がそれ

ぞれおそらくは相互に複雑に関与していることが示唆

されたこのことは最も強力に抑制しえた POBの

場合においてもそれのみでは完全に抑制することが出

来なかったことからも明らかである一方 Monocrota-

lineの投与により肺を主座とした初期の穆出性病変

さらに肺脈管の病的状態が血管作動性物質の相互関与

により生ずることは肺血管内皮細胞がきわめて重要な

役割りを血管作動性物質の代謝にもつことを示唆する

ものとしてわれわれは今後検討をつづけるつもりであ

f Monocrotaline肺高血圧症における液性因子に

ついての検討ω

1回注射で投与された Monocrotalineは生体内で

急速に分解され 24時間以内に代謝され排出されるとい

われているこのことはこの時期が Monocrotaline

肺高血圧症の成立にきわめて重要であると考えられ

るそれ故 Monocrtoaline投与後の初期にー側肺血

管床のみに代謝物質を作用させることによって以後いか

なる変化が肺血管に生じ以後経過を追って どのよう

な機序が展開し肺高血圧はいかなる変化をうけるであ

ろうか以上のような考えにたって Monocrotaline

注射時にすでに人工的にー側肺(左肺)に無気肺を作

成することによって一側肺の血流を社絶させ Mon-

ocrotalineの代謝物質を他側肺(右肺)だけにある期

間作用させる実験を行ったラットに連続 5日間の気胸

作製の 2日目に Monocrotalineを投与し 3週後に型

のごとく諸値を測定した (Fig3)実験群CP+M群)

の右心室血圧値は対照群 (M群)に比し明らかに低

値を示した右室肥大の程度も同様に低値を示した

外直径が主に20-50μ の肺小動脈でのモノレフオメトリ

ーでは中膜の肥厚度(外直径 2R 中膜の厚さ 2D

2D2R )は P十M群右肺80土18-176土33

左肺9129-188t36M群右肺20217

-28643左肺 2012 3-356土86であり

実験群は明らかに対照群よりも小さくまた一例をのぞ

いて左右の肺の聞に中膜の肥厚度の差異は推計学的に

認められなかった実験群でなぜ左右差が認められなか

ったかの問題があるがこの点については初期の Py-

rroleによる血管壁の傷害の変化は 3週後には治療し

てしまうとも想像されるが明確な原因は今後の追求を

P P+M M P P十M M

Fig 3 E旺ectof right ventricular systolic pres-sure (R VSP)right ventricular hype-

rtrophy (expressed as RVLV+S) in

three groups (P arti五cialpneumoth-

orax P+ M artificial pneumothorax

+ MonocrotalineM monocrotaline)

A significant reduction of RV L V + S

and RVSP value is observed in P+M group as compared to those value of

M group

必要とする肺の血管内皮細胞が血管作動性物質の代

謝に深く関わっているらしいと考えるならば Monoc-

rotaline投与により 血管作動性物質の代謝に異常が

おこり結果として肺動脈系にたえず昇圧因子が作用す

る所ヘー側無気肺作成により昇圧因子に対抗する作

用機序(神経系統血管作動性物質)が働いていたとも

考えられるが成因機序は不明であるしかしこの事実

は Monocrotaline注射初期における肺血管床が以後

発症する肺血圧上昇と密接な関係があることが示唆され

るとともに Monocrotaline投与後にみられる肺小動

脈の中膜肥厚は初期の Monocrotaline代謝物質の作

用の結果よりもその後に生ずる圧上昇の影響と考えら

れるわれわれが行ってきたラットの Monocrotaline

肺高血圧症の実験においてこれほど明らかに右室圧上

昇右室肥大を抑制し得たものはいままでの各種薬剤

投与ではなかったまたこのような点に関する内外の報

告もみない薬剤ではなく肺循環動態を変化させるこ

とにより抑制しえたということはその解釈は極めて困

難であるが興味深いものなので今後も種々の方法によ

ってその機序を追求していきたいと考えている

おわりに

以上ヒト原発生肺高血圧症の病態生理成因および

治療法を解明するために有用であると考えられる肺高

血圧症実験モデルとして研究を行っている Monocrota-

lineラット肺高血圧症についての われわれの実験結

果を中心に検討を加えた今後もよりヒト原発性肺高

隆他

血圧症に近い動物モデルの改良と開発が進められその

成因解明に至ることが望まれる

稿を終るにあたり種々ご協力頂いた筑波大学基礎

医学系病理小形岳三郎教授に謝意を表します

なお本研究については千葉大学猪鼻奨学会研究補

助金千葉大学環境科学研究機構よりの補助金厚生省

特定疾患「原発性肺高血圧症」調査研究費補助金およ

び厚生省特定疾患「呼吸不全J調査研究費補助金によっ

たことを付記する

文 献

1) WagenvoortC A and WagenvoortN

Primary pulmonary hypertension A path-

ologic study of the lung vessels in 156 clini-

cally diagnosed cases Circulation 421163-

11831970

2) GurtnerH PGertshMSalzman C

Scherrer MSluckiP and WyssF

Haufen sich die primar Vaskularen For

man des chronischen Cor pulmonale Sch-

weiz Med Wschr 981579-15891968

3) Report on a WHO meeting Primary pulm-

onary hypertension WHOGeneva1975

4) WatanabeS and OgataT Clinical and

experimental study upon primary pulmonary

hypertension Jap Circul J 40603-610

1976

5) FultonR MHutchinsonE C and Mo-

rganJ A Ventricular weight in cardiac

hypertrophy Br Heart J14413-4201952

6)栗山喬之椙田 隆滝沢弘隆渡辺昌平 小

形岳三郎肺高血圧症の実験的研究ー肺動脈圧

上昇と肺脈管系の形態学的変化の相関一 日胸

疾会誌 14694-5051976

7)椙田 隆栗山喬之滝沢弘隆渡辺昌平 小

形岳三郎原発性肺高血圧症の臨床的ならびに

病理学的研究(第 1報)ー肺の組織学的所見と

臨床所見との対比一特定疾患原発性肺高血圧症

調査研究班研究業績集 1976年 109-114

8) McLeanE K The toxic action of pyrr-

olizidine (Senecio) alkaloids Parmacological

Rewiews 22429-4831970

9) SchoentalR and HeadM A Pathol

ogical changes in rats as a result of treatm-

ent with monocrotaline Br Cancer 9

65 実験的肺高血圧症

229-2371955

10) HarrisD NAndersonR C and Chen

KK The action of senecionine integerr-

iminejacobinelongilobine and spartiodine

especially in the liver J PharmacolExp

Ther 78372-3741942

11) AllenJ R Crotalaria spectabilis toxi-

city studies in turkeys Avian Dis 7318-

3241963

12) EmmelM WSandersA and Henley

W W Crotalaria spectabilis seed pois-

oning in swine J Am Vet Med Ass 39 43-491935

13) LawsL Toxicity of crotalaria mucronata

to sheep Aust Vet J 44453-4551968

14) BullLBCulvenorC C J and Dick

A T The pyrrolzidine alkaloids Chap

7 John Wiley ampSons Inc New York1968

15) RoseA L GardnerC AMc Connell

J D and Bul1 LB Field and experim-

ental investigation of ldquowalk-about disease

of horses (Kimberly horse disease) in Nor-

thern Australia Part 1 Aust Vet J 33

25-331957

16) KhaninM N The aetiology and patho-

genesis of toxic hepatitis with ascietes

Arkh Pathol1835-451956

17) ChesneyC F and AllenJ R Endoca-

rdial五hrosisassociated with monocrotaline-

induced pulmonary hypertension in nonhu

man primates (Macacaarctoides) Am J

VetRes 341577-15811973

18) LalichJ J and MerkowL Pulmonary

arteritis produced in rats by feeding crota-

laria spectabilis Lab Invest 10744-750 1961

19) KayJ MHarrisP and HeathD

Pulmonary hypertension produced in rats by

ingestion of crotalaria spectabilis seeds

Thorax22176-1791967

20) MattocksA R Toxicity of pyrrolizidine

alkaloids Nature 217723ー7281968

21) WagenvoortC AWagenvortN and

DijkH J Effect of fulvine on pulmon-

ary arteries and vein of the rat Thorax

29522-5291974

22)栗山喬之椙田 隆滝沢弘隆渡辺昌平 小

形岳三郎肺高血圧症の実験的研究(第E報)

Monocrotaline肺高血圧症の成立に対する

Immunosuppressive Agents の影響 日胸疾

会誌14(増刊号) 1361976

23)椙田 隆栗山喬之滝沢弘隆渡辺昌平 小

形岳三郎肺高血圧症の実験的研究 (m)Mon-

ocrotaline肺高血圧症の成立に及ぼす Angio-

tensin 1-Converting Enzyme Inhibitor (SQ

20881)投与の影響特定疾患原発性肺高血圧症

調査研究班研究業績集 1977143-147

24) BerkovS and MelmonK L Effect of

Angiotensin II blockade on hypoxic pulm-

onary vasoconstriction in vitro and in vivo

in the rat Clin Res 224991974

25)石原陽子北村諭小坂樹徳原沢直美肺

における VasoactiveSubstanceの代謝と作用

第7報ウサギ肺動脈系および大動脈系におけ

る Angiotensin IIの作用について 日胸疾会

誌 14373-378

26)栗山喬之椙田 隆渡辺昌平 小形岳三郎

肺高血圧症の実験的研究 (IV)Monocrotaline

肺高血圧症における Vasoactivesubstanceの

役割 特定疾患原発性肺高血圧症調査研究班研

究業績集 1977139-142

27)栗山喬之椙田 隆渡辺昌平 小形岳三郎

血管作動性物質の代謝と肺高血圧症 日胸疾会

誌 16418-4241978

28) Takeoka0ArgeunieD M and Lalich

J J Stimulation of Mast cells in rat fed

various chemicals Am J Path 40545-

5541962

29) KayJ MCrawfordN and HeathD

Blood 5Hydroxytryptamine in rats with

pulmonary hypertension produced by ingest-

ion of crotalaria spectabilis seeds Experie-

ntia 24 1149-11501968

30)椙田 隆沢田晶夫栗山喬之渡辺昌平小

形岳三郎肺高血圧の実験的研究-Monocrota-

line肺高血圧症における液性因子の検討一特

定疾患呼吸不全調査研究班研究業績集 1979

153-159

Page 6: kuタl タアIxウヌ 一 - Chiba Uopac.ll.chiba-u.jp/da/curator/900108437/KJ00004742141.pdfloids ヘ24ヤネノョSノモウニ「B ア フ Pyrrolizidine alkaloids ャョィCチノc

P P+M M P P十M M

Fig 3 E旺ectof right ventricular systolic pres-sure (R VSP)right ventricular hype-

rtrophy (expressed as RVLV+S) in

three groups (P arti五cialpneumoth-

orax P+ M artificial pneumothorax

+ MonocrotalineM monocrotaline)

A significant reduction of RV L V + S

and RVSP value is observed in P+M group as compared to those value of

M group

必要とする肺の血管内皮細胞が血管作動性物質の代

謝に深く関わっているらしいと考えるならば Monoc-

rotaline投与により 血管作動性物質の代謝に異常が

おこり結果として肺動脈系にたえず昇圧因子が作用す

る所ヘー側無気肺作成により昇圧因子に対抗する作

用機序(神経系統血管作動性物質)が働いていたとも

考えられるが成因機序は不明であるしかしこの事実

は Monocrotaline注射初期における肺血管床が以後

発症する肺血圧上昇と密接な関係があることが示唆され

るとともに Monocrotaline投与後にみられる肺小動

脈の中膜肥厚は初期の Monocrotaline代謝物質の作

用の結果よりもその後に生ずる圧上昇の影響と考えら

れるわれわれが行ってきたラットの Monocrotaline

肺高血圧症の実験においてこれほど明らかに右室圧上

昇右室肥大を抑制し得たものはいままでの各種薬剤

投与ではなかったまたこのような点に関する内外の報

告もみない薬剤ではなく肺循環動態を変化させるこ

とにより抑制しえたということはその解釈は極めて困

難であるが興味深いものなので今後も種々の方法によ

ってその機序を追求していきたいと考えている

おわりに

以上ヒト原発生肺高血圧症の病態生理成因および

治療法を解明するために有用であると考えられる肺高

血圧症実験モデルとして研究を行っている Monocrota-

lineラット肺高血圧症についての われわれの実験結

果を中心に検討を加えた今後もよりヒト原発性肺高

隆他

血圧症に近い動物モデルの改良と開発が進められその

成因解明に至ることが望まれる

稿を終るにあたり種々ご協力頂いた筑波大学基礎

医学系病理小形岳三郎教授に謝意を表します

なお本研究については千葉大学猪鼻奨学会研究補

助金千葉大学環境科学研究機構よりの補助金厚生省

特定疾患「原発性肺高血圧症」調査研究費補助金およ

び厚生省特定疾患「呼吸不全J調査研究費補助金によっ

たことを付記する

文 献

1) WagenvoortC A and WagenvoortN

Primary pulmonary hypertension A path-

ologic study of the lung vessels in 156 clini-

cally diagnosed cases Circulation 421163-

11831970

2) GurtnerH PGertshMSalzman C

Scherrer MSluckiP and WyssF

Haufen sich die primar Vaskularen For

man des chronischen Cor pulmonale Sch-

weiz Med Wschr 981579-15891968

3) Report on a WHO meeting Primary pulm-

onary hypertension WHOGeneva1975

4) WatanabeS and OgataT Clinical and

experimental study upon primary pulmonary

hypertension Jap Circul J 40603-610

1976

5) FultonR MHutchinsonE C and Mo-

rganJ A Ventricular weight in cardiac

hypertrophy Br Heart J14413-4201952

6)栗山喬之椙田 隆滝沢弘隆渡辺昌平 小

形岳三郎肺高血圧症の実験的研究ー肺動脈圧

上昇と肺脈管系の形態学的変化の相関一 日胸

疾会誌 14694-5051976

7)椙田 隆栗山喬之滝沢弘隆渡辺昌平 小

形岳三郎原発性肺高血圧症の臨床的ならびに

病理学的研究(第 1報)ー肺の組織学的所見と

臨床所見との対比一特定疾患原発性肺高血圧症

調査研究班研究業績集 1976年 109-114

8) McLeanE K The toxic action of pyrr-

olizidine (Senecio) alkaloids Parmacological

Rewiews 22429-4831970

9) SchoentalR and HeadM A Pathol

ogical changes in rats as a result of treatm-

ent with monocrotaline Br Cancer 9

65 実験的肺高血圧症

229-2371955

10) HarrisD NAndersonR C and Chen

KK The action of senecionine integerr-

iminejacobinelongilobine and spartiodine

especially in the liver J PharmacolExp

Ther 78372-3741942

11) AllenJ R Crotalaria spectabilis toxi-

city studies in turkeys Avian Dis 7318-

3241963

12) EmmelM WSandersA and Henley

W W Crotalaria spectabilis seed pois-

oning in swine J Am Vet Med Ass 39 43-491935

13) LawsL Toxicity of crotalaria mucronata

to sheep Aust Vet J 44453-4551968

14) BullLBCulvenorC C J and Dick

A T The pyrrolzidine alkaloids Chap

7 John Wiley ampSons Inc New York1968

15) RoseA L GardnerC AMc Connell

J D and Bul1 LB Field and experim-

ental investigation of ldquowalk-about disease

of horses (Kimberly horse disease) in Nor-

thern Australia Part 1 Aust Vet J 33

25-331957

16) KhaninM N The aetiology and patho-

genesis of toxic hepatitis with ascietes

Arkh Pathol1835-451956

17) ChesneyC F and AllenJ R Endoca-

rdial五hrosisassociated with monocrotaline-

induced pulmonary hypertension in nonhu

man primates (Macacaarctoides) Am J

VetRes 341577-15811973

18) LalichJ J and MerkowL Pulmonary

arteritis produced in rats by feeding crota-

laria spectabilis Lab Invest 10744-750 1961

19) KayJ MHarrisP and HeathD

Pulmonary hypertension produced in rats by

ingestion of crotalaria spectabilis seeds

Thorax22176-1791967

20) MattocksA R Toxicity of pyrrolizidine

alkaloids Nature 217723ー7281968

21) WagenvoortC AWagenvortN and

DijkH J Effect of fulvine on pulmon-

ary arteries and vein of the rat Thorax

29522-5291974

22)栗山喬之椙田 隆滝沢弘隆渡辺昌平 小

形岳三郎肺高血圧症の実験的研究(第E報)

Monocrotaline肺高血圧症の成立に対する

Immunosuppressive Agents の影響 日胸疾

会誌14(増刊号) 1361976

23)椙田 隆栗山喬之滝沢弘隆渡辺昌平 小

形岳三郎肺高血圧症の実験的研究 (m)Mon-

ocrotaline肺高血圧症の成立に及ぼす Angio-

tensin 1-Converting Enzyme Inhibitor (SQ

20881)投与の影響特定疾患原発性肺高血圧症

調査研究班研究業績集 1977143-147

24) BerkovS and MelmonK L Effect of

Angiotensin II blockade on hypoxic pulm-

onary vasoconstriction in vitro and in vivo

in the rat Clin Res 224991974

25)石原陽子北村諭小坂樹徳原沢直美肺

における VasoactiveSubstanceの代謝と作用

第7報ウサギ肺動脈系および大動脈系におけ

る Angiotensin IIの作用について 日胸疾会

誌 14373-378

26)栗山喬之椙田 隆渡辺昌平 小形岳三郎

肺高血圧症の実験的研究 (IV)Monocrotaline

肺高血圧症における Vasoactivesubstanceの

役割 特定疾患原発性肺高血圧症調査研究班研

究業績集 1977139-142

27)栗山喬之椙田 隆渡辺昌平 小形岳三郎

血管作動性物質の代謝と肺高血圧症 日胸疾会

誌 16418-4241978

28) Takeoka0ArgeunieD M and Lalich

J J Stimulation of Mast cells in rat fed

various chemicals Am J Path 40545-

5541962

29) KayJ MCrawfordN and HeathD

Blood 5Hydroxytryptamine in rats with

pulmonary hypertension produced by ingest-

ion of crotalaria spectabilis seeds Experie-

ntia 24 1149-11501968

30)椙田 隆沢田晶夫栗山喬之渡辺昌平小

形岳三郎肺高血圧の実験的研究-Monocrota-

line肺高血圧症における液性因子の検討一特

定疾患呼吸不全調査研究班研究業績集 1979

153-159

Page 7: kuタl タアIxウヌ 一 - Chiba Uopac.ll.chiba-u.jp/da/curator/900108437/KJ00004742141.pdfloids ヘ24ヤネノョSノモウニ「B ア フ Pyrrolizidine alkaloids ャョィCチノc

65 実験的肺高血圧症

229-2371955

10) HarrisD NAndersonR C and Chen

KK The action of senecionine integerr-

iminejacobinelongilobine and spartiodine

especially in the liver J PharmacolExp

Ther 78372-3741942

11) AllenJ R Crotalaria spectabilis toxi-

city studies in turkeys Avian Dis 7318-

3241963

12) EmmelM WSandersA and Henley

W W Crotalaria spectabilis seed pois-

oning in swine J Am Vet Med Ass 39 43-491935

13) LawsL Toxicity of crotalaria mucronata

to sheep Aust Vet J 44453-4551968

14) BullLBCulvenorC C J and Dick

A T The pyrrolzidine alkaloids Chap

7 John Wiley ampSons Inc New York1968

15) RoseA L GardnerC AMc Connell

J D and Bul1 LB Field and experim-

ental investigation of ldquowalk-about disease

of horses (Kimberly horse disease) in Nor-

thern Australia Part 1 Aust Vet J 33

25-331957

16) KhaninM N The aetiology and patho-

genesis of toxic hepatitis with ascietes

Arkh Pathol1835-451956

17) ChesneyC F and AllenJ R Endoca-

rdial五hrosisassociated with monocrotaline-

induced pulmonary hypertension in nonhu

man primates (Macacaarctoides) Am J

VetRes 341577-15811973

18) LalichJ J and MerkowL Pulmonary

arteritis produced in rats by feeding crota-

laria spectabilis Lab Invest 10744-750 1961

19) KayJ MHarrisP and HeathD

Pulmonary hypertension produced in rats by

ingestion of crotalaria spectabilis seeds

Thorax22176-1791967

20) MattocksA R Toxicity of pyrrolizidine

alkaloids Nature 217723ー7281968

21) WagenvoortC AWagenvortN and

DijkH J Effect of fulvine on pulmon-

ary arteries and vein of the rat Thorax

29522-5291974

22)栗山喬之椙田 隆滝沢弘隆渡辺昌平 小

形岳三郎肺高血圧症の実験的研究(第E報)

Monocrotaline肺高血圧症の成立に対する

Immunosuppressive Agents の影響 日胸疾

会誌14(増刊号) 1361976

23)椙田 隆栗山喬之滝沢弘隆渡辺昌平 小

形岳三郎肺高血圧症の実験的研究 (m)Mon-

ocrotaline肺高血圧症の成立に及ぼす Angio-

tensin 1-Converting Enzyme Inhibitor (SQ

20881)投与の影響特定疾患原発性肺高血圧症

調査研究班研究業績集 1977143-147

24) BerkovS and MelmonK L Effect of

Angiotensin II blockade on hypoxic pulm-

onary vasoconstriction in vitro and in vivo

in the rat Clin Res 224991974

25)石原陽子北村諭小坂樹徳原沢直美肺

における VasoactiveSubstanceの代謝と作用

第7報ウサギ肺動脈系および大動脈系におけ

る Angiotensin IIの作用について 日胸疾会

誌 14373-378

26)栗山喬之椙田 隆渡辺昌平 小形岳三郎

肺高血圧症の実験的研究 (IV)Monocrotaline

肺高血圧症における Vasoactivesubstanceの

役割 特定疾患原発性肺高血圧症調査研究班研

究業績集 1977139-142

27)栗山喬之椙田 隆渡辺昌平 小形岳三郎

血管作動性物質の代謝と肺高血圧症 日胸疾会

誌 16418-4241978

28) Takeoka0ArgeunieD M and Lalich

J J Stimulation of Mast cells in rat fed

various chemicals Am J Path 40545-

5541962

29) KayJ MCrawfordN and HeathD

Blood 5Hydroxytryptamine in rats with

pulmonary hypertension produced by ingest-

ion of crotalaria spectabilis seeds Experie-

ntia 24 1149-11501968

30)椙田 隆沢田晶夫栗山喬之渡辺昌平小

形岳三郎肺高血圧の実験的研究-Monocrota-

line肺高血圧症における液性因子の検討一特

定疾患呼吸不全調査研究班研究業績集 1979

153-159