患者さんの 手引き - tokyo medical and dental university...はじめに...

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~より快適な生活へ~ 患者んの 手引き 人工股関節置換術 お名前

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  • ~より快適な生活へ~

    患者さんの手引き

    人工股関節置換術

    - 0 -

    お名前

  • ●目次

    はじめに・・・・・・・・・・2

    股関節のはたらき・・・・・3

    手術による効果・・・・・・7

    手術の準備(入院までに)・・9

    股関節置換術の手術・・・・14

    手術後・・・・・・・・・・19

    退院後の注意・・・・・・・23

    メモ/連絡先・・・・・・・25

    質問コーナー・・・・・・・26

    治療(手術)の記録・・・・28

    定期検診のメモ・・・・・・30 - 1 -

  • はじめに

    患者さんとご家族の方へ

    股関節は体重を支えて立ったり、歩行するなどの移動を行う上で大切な関節です。

    股関節に障害がありますと動きが悪くなり、歩行時などに痛みが出たり、日常生活に

    大変困ってしまいます。

    このたび人工じんこ う

    関節かんせつ

    への置換ち か ん

    手術しゅじゅつ

    を受けるにあたり、わからないことやご心配なこと

    もおありかと思います。そういった疑問にお答えできれば、と考えこの手引きを作りま

    した。手術を受けられる前に、医師・看護師・理学り が く

    療法士り ょ う ほ う し

    などがこの手引きに沿って

    ご説明致します。

    人工関節置換術は、手術はもちろんのこと手術後のリハビリテーションなど、患者さ

    んの積極的な取り組みによってより大きな効果が期待できます。患者さん、ご家族、

    そして私たち職員が一緒になって患者さんの「より快適な生活」へ向かって協力して

    いきましょう。

    治療について何かわからない事や、ご心配なことがありましたらいつでも医師、看

    護師など職員にお申し出下さい。

    - 2 -

  • 股関節のはたらき

    股関節は身体の中の最も大きな関節で、体重を支えています。健康な股関節では

    ねじったり、大きく動かしてもはずれたりせず、安定しているので、痛みなく歩いたり、

    しゃがんだり振り向いたりできるのです。しかし、股関節に問題が生じると、動くと痛

    むようになり、ひどい場合にはただ立っているだけで痛むようにもなります。

    - 3 -

    健康な股関節

    股関節は太腿ふともも

    の骨(大腿骨だいたいこつ

    )の上端、丸くなって

    いる骨頭が骨盤のくぼみ(寛骨臼かんこつきゅう

    )にはまり込む

    ようになって関節を形作っています。関節の表面

    はなめらかな軟骨におおわれており、大きな筋

    肉によって自在に動かすことができます。

    ○関節軟骨なんこつ

    は、関節の表面(骨の端)をおおっ

    ているなめらかな層です。健康な軟骨は股関節

    にかかる体重を吸収し、なめらかにすべって動く

    ようにしています。

    ○筋肉きんにく

    は股関節や脚を動かしています。特に中殿筋は立ったり、歩いたりする

    際に重要です。

  • 股関節のはたらき

    - 4 -

    臼蓋形成不全と変形性股関節症

    正常な股関節では大腿骨頭だいたいこつとう

    のかなり外側まで骨盤の骨(臼蓋きゅうがい

    )が覆っています。

    このように覆いが大きければ体重が分散されるので軟骨が長持ちします。

    正常の股関節 臼蓋形成不全

    ところが日本人には生まれつき骨盤の覆いが小さい人が多く(臼蓋形成不全きゅうがいけいせいふぜん

    とい

    います)、狭い覆いに体重が集中するせいで軟骨が早い時期からすり減ってしま

    います。臼蓋形成不全は女性に多いことが知られています。

    軟骨がすり減ってくる状態を変形性へんけいせい

    股こ

    関節症かんせつしょう

    といい、年とともに前股関節症→初

    期股関節症→進行期股関節症→末期股関節症と進行し、痛みや、股関節の動

    きが悪くなる、日常生活が不便になるといった症状が出てきます。

  • 股関節のはたらき

    初期 前股関節症

    進行期 末期

    日本人ではこのように臼蓋形成不全による二次性の変形性股関節症が大多数

    を占めているといわれていますが、大腿骨頭壊死や外傷といった他の原因でも

    変形性股関節症は起こることがあります。

    ○治療

    治療法は患者さんの関節の変形の程度や、年齢、性別、職業などを考慮して決

    めますが、一般的には関節の変形が少なく若い患者さんに対しては自分の関節

    を生かした骨切り術、関節変形が強く高齢であれば人工股関節置換術を選択す

    ることが多くなっています。

    - 5 -

  • 股関節のはたらき

    人工股関節とその固定方法

    - 6 -

    人工股関節は特殊な金属、プラスチック(ポリエチレン)、セラミックなどで作られてい

    ます(写真下例)。

    大腿骨側(ステム)と骨頭、寛骨臼側(カッ

    プ)の部品が組み合わさって人工関節を構

    成します。

    大きさや機種など、患者さんに適したもの

    を選んで使用します。

    人工股関節の固定方法として、セメントを

    用いる方法と、用いない方法があります。

    セメントは糊のようなもので金属と骨の間を固定するもので

    す。一方、セメントを使用しないシステムは表面に特殊な

    加工がされていて、手術後骨が入り込

    んで固定されます。骨が入り込んで金属

    と固定されるまで少し日数が必要ですが、

    体重は術後早期からかけることができま

    す。

    人工股関節は、大切に用いれば長い耐

    久性があります。もしすり減ってしまった

    場合には再度取り替えることもできます。

  • 手術による効果 股関節に障害があると、痛み、可動域制限(動きが悪くなる)があり、そのため、

    重い物をもてない、長く歩けない、階段を昇降しにくい、靴下・爪切りができない、な

    ど、日常生活上大変不便です。薬などの治療(保存療法)で十分に改善が得られな

    い場合、手術をします。

    人工股関節置換術は、患者さんの関節の痛みを和らげることが期待できます。手

    術によって、股関節を人工の関節と取り替えます。

    股関節置換術の効果

    ●股関節の痛みがなくなります。(大きく和らぎます。)

    ●手術後、股関節の動きがよくなります。

    ○脚の力が強くなります。股関節の痛みがなくなれば、もっと脚を使うことができます

    ので筋肉が付いてくるのです。それに伴って歩行時の骨盤のゆれも減ってきま

    す。

    ○日常生活の動作や、運動がずっと楽にできるようになります(人工関節の耐久性の

    点から激しい運動は控えて下さい)。

    ○人工股関節は長くもちます(長い耐久性)。しかし適切な使い方と定期検診が必要

    です。一概には言えませんが、15年程度の耐用年数が期待できます。

    ○術前、股関節の動きが制限されている場合、手術によって椅子への腰かけや敷居

    をまたぐなどの基本動作が楽になることが期待できます。

    - 7 -

  • 手術による効果

    家事を行うことも楽になります。杖が近くにあると便利です。

    - 8 -

  • 手術の準備(入院までに) 手術の前から、「手術を受けたあとの自宅での生活」についてお考え下さい。退

    院後に生活しやすいようご自宅の内外を少し準備された方が良いと思います。また、

    かかりつけの医師や歯科医にもかかっておいたほうが良いでしょう。喫煙する方は、

    禁煙するか減らすように心がけて下さい。手術の危険性を減らし、回復の度合いが

    より良くなるでしょう。

    自宅の準備

    手術後の生活を、より楽で安全なものにしましょう。家の中の危険物は取り除いて

    おきましょう。また、歩いたり階段を昇ったりする回数が少なくてすむようにしましょう。

    また、ふとんよりベッド、トイレも洋式が便利です。いすに座る生活中心が望ましいで

    しょう。

    床の上の小さい敷物などは取り払うか、ピン

    などでしっかり固定しましょう。また、つま

    ずいたりしないよう、電気のコードなどもテ

    ープで固定したりしましょう。トイレの手す

    りなどもあると、楽です。

    退院直後は松葉杖あるいは杖が必要です。必要に応じて廊下や階段の手すり、浴

    室の手すりや入浴用の座イスの準備があると快適です。入院時に病院スタッフがご

    自宅の状況やご家族の状況をお聞し、必要に応じてアドバイス致します。入院時に

    病院スタッフにご相談ください。

    - 9 -

  • 〈入院前の生活環境チェック〉 手術の準備

    どちらかに○をつけて下さい。

    自宅の建物 平屋・一戸建て( 階建)・アパート、マンション( 階)・

    エレベーター使用する・しない

    生活の場 1階 2階

    生活スタイル 畳中心( につかまって立つ)・

    椅子、ソファー中心(高さ センチ位)

    階段の利用 なし あり 高さ センチ位

    階段の手すり なし あり

    部屋の段差 なし あり 段差 センチ位

    廊下の幅 幅 メートル位

    トイレ 和式 様式

    トイレの手すり なし あり

    睡眠 布団 ベッド ベッドの場合、高さ センチ位

    風呂場 浴槽の幅 cm、奥行き cm、床からの高さ cm

    風呂場の手すり なし あり

    風呂場の椅子 なし あり

    家事 しない する

    介助者 いない いる 主にだれですか?

    - 10 -

    薬について 服用している薬は、薬局で買ったものも含めて全て医師・看護師にお見せ下さい。

    これは非常に重要なことです。薬によっては麻酔と一緒に

    服用してはいけないものがあるからです。その他にも、心

    臓の病気に対する内服をおこなっている場合は、出血を

    増やす恐れのある薬があります。手術中の危険を避ける

    ためにも、手術が終わるまで服用をやめる必要がある場

    合があります。もともと飲んでいる薬が当院にあるとは限り

    ませんので、入院中の分を持参していただくことがあります。

  • 手術の準備

    歯科治療について

    歯や歯ぐきに問題がある場合には、手術の前に治療しておきましょう。口の中の

    細菌さいきん

    が血液中に入って、新しい人工股関節に感染かんせん

    する危険性があるからです。こう

    なると回復を遅らせる場合がありますし、ひどい場合には人工関節を取り出さなけれ

    ばならなくなります。

    麻酔について

    あらかじめ麻酔科を受診していただきます。今までに薬や麻酔などで具合が悪く

    なったことがありましたらお知らせください。麻酔は通常下半身麻酔(腰椎麻酔)にて

    行います。また、術後の疼痛を和らげる意味で痛み止めの細いチューブが背中から

    入ります(硬膜外麻酔)。このチューブは通常術後 2日間ほど入れておきます。

    下半身麻酔とはいっても手術中に完全に起きているわけではなく、ご希望があれ

    ば点滴から、眠るための薬を入れて眠っていただくこともできます。

    - 11 -

    手術中の出血を補うために輸血を行うことがあります。副

    作用の危険性を少なくするため、原則的に手術前に患者

    さん自身の血液(自己血じ こ け つ

    )を採血しておき、冷蔵保存しま

    す。外来あるいは、入院後に採血します。手術時あるいは手術後に患者さんに戻し

    ます。自己血採取後手術までの間は、鉄剤を服用して頂きます。出血による貧血が

    強く自己血だけでは不足の場合や、自己血が採取できない場合には、赤十字から

    輸血用の血液(他家血)を手配します。この血液は、病原菌の検査をしたものです。

    自己血輸血と採血について

  • - 12 -

    体重が重い場合、股関節により多くの負担をかける事に

    なります。人工股関節を長もちさせるためにも肥満にならな

    いよう気をつけましょう。

    標準体重を大きく越えている方は減量の必要があります

    が、適切な栄養の摂取も大事ですから必要な場合は栄養士に指導を受けましょう。

    人工股関節置換術を受けると片側の場合 4級、両側の場合 3級の身体障害者と

    認定されます。希望される方は各市町村の担当課より申請書類をもらってきてくださ

    い。手術後に医師が記入いたします。

    また、すでに身体障害者手帳を持っていて、更正医療の使用を希望される方は、

    入院前に手続きが必要になります。

    不明な点は医師にご相談ください。

    ○チェックしましょう

    □ 浴衣(1枚)

    手術翌日以降に使用します。

    □ T字帯(2枚)

    尿の管が入っている間使用します。

    □ バスタオル(2枚)

    ベッド上安静の間、体の下に敷きます。

    体重管理について

    手術の準備

    入院時に持ってきて頂くもの

    身体障害者申請・更正医療

  • - 13 -

    □ 普通のタオル(2枚)

    いたものは避けてください。

    ます。旧棟の和同会売店にてお買い求めいただけます。

    □ 紙おむつ( 枚)

    飲み・ストロー

    □ ゆの

    □ 運動靴

    リハビリで使用します。足がむくむことがあるので、

    マジックテープやゴムで多少調整できるほうが便

    利です。紐のつ

    □ 圧迫ストッキング(一足)

    術後の合併症の一つである、肺塞栓症を予防するために着用し

    2

    ベッド上安静のときに使用します。ギャザーやテープのない、平た

    いものをご用意ください。

    □ 下着・ねまき(パジャマ)

    術後ガーゼできつくなることがあります。ゆったりしたものをお選び

    ください。

    □ マジックハンド

    届かないところの物をはさんで取る道 です。旧棟の和同会売店

    にて取り扱っております。

    □ 洗面用具 □ 吸い

    み・箸 □ 靴下

    □ 長めの靴べら □

    指輪・ネックレス・

    現金・印鑑など貴重品の管理に気をつ

    けて下さい。

    手術の準備

  • 股関節置換術の手術(入院から手術まで)

    手術前の検査をいくつか行います。主治医・看護師の指示

    麻酔の説明があります。手術前に手術の内容に

    に従って下さい。また、

    術前に ついて説明をいたします。

    家族の方を含めてお話ししますので、主治医と日時の打ち合わせをします。

    練習をしましょ

    ●術前

    うまくできた項目に○をつけましょう。

    入院後

    院時 、手術までにベッド上の生活、車イス、松葉杖、下肢運動の

    。(下のチェックリスト例に沿って進めます

    チェックリスト 練習した日

    車いす移乗、移動

    車いす専用トイレ

    杖歩行

    ベッド上での排尿 尿器( ) 便器( ) 腰上げ( )

    外転枕 、体位変換

    下股の運動

    術前日の飲食を止める時刻は医師・看護師に確認してください。

    日のんでいる薬があったら、手術の朝ものむかどうか確認して下さい。

    必要に応じて手術部位の除毛、消毒。

    抗生物質こうせいぶっしつ

    浣腸、その

    院では、手術前に次のような準備を行います。

    術前リハビリ

    アレルギーテスト。

    術前日

    - 14 -

  • - 15 -

    感染かんせん

    る問題

    ○出 0-10 mlほど出血します。術中・術後の出血は、洗浄して体に

    戻すことが に自己血 で基本的に他人の血液は使用

    しま

    あるため、細菌感染が起こりやすい環境で

    を払い、今までのところわれわれの施設では感染は起こっ

    ていませんが、感染すると赤みや腫れ、膿が出て治りにくく、人工関節を抜去しなけ

    何年か経ってから膀胱

    くことがあります。そのため、この手術をした方は、

    股関節置換術の手術

    手術に伴う諸問題について

    の手術と同様、人工股関節置換術にも下記の諸問題が起こる場合があります。

    ○麻酔に伴うこと

    ○肺はい

    動脈どうみゃく

    塞栓症そくせんしょう

    ○輸血によ

    そのほか手術中の予測不可能な出来事に対して、医療処置が必要になることが

    あります。

    人 股関節置換術がっぺいしょう

    工 の合併症

    血: 術中に 50 00

    できますし、術前 を貯血しますの

    せん。

    ○細菌感染: 人工関節は大きな異物で

    す。予防には細心の注意

    ればならない場合があります。

    術中感染がなくても、遅発性感染といって 炎などをこじらせた

    際に血行性に菌が人工関節につ

    膀胱炎、歯槽膿漏などに注意し、きちんと治療するように気をつけて下さい。

  • - 16 -

    固ょ う こ

    する)、肺塞栓症: 新聞などで報道され

    栓が肺にとぶと肺塞栓症となります。血栓を作らないよう予防す

    のためにフットポンプや弾性ストッキングの使用・術後早期からの

    動(p.21参照)が有効です。

    早期発見できれば血栓溶解療法が可能です。

    節が外れてしまうこと。一定の姿勢をしなければ外れませんので、

    ってはいけない姿勢をリハビリで指導してもらいます。p.24 に一部紹介しています

    るのは危険な姿勢です。

    ます。そのため、ある位置ではぴったりのサイズでも、他の部位ではき

    すぎるといったことが起こることがあり、まれに大腿骨にひびが入ることがあります。

    心の注意を払います。筋肉を介して神経に力が加

    ったり脚を伸ばすことで神経が引き伸ばされ、正座の後のようなしびれが術後しば

    ます。

    ○深部し ん ぶ

    静脈じょうみゃく

    血栓けっせん

    (血管の中で血液が凝ぎ

    ている「エコノミークラス症候群」と同じものです。血液の流れが悪くなることで深い静

    脈に血栓ができ、血

    ることが大事で、そ

    下肢の運

    肺塞栓を起こしても

    ○脱臼だっきゅう

    : 人工関

    が、股関節を深く曲げた状態で内側にひね

    ○骨折: 体内に入れる人工関節はオーダーメイドではなく、既製品から一番合うサ

    イズを選択し

    術中に判明すれば針金で巻きつけることで対応しますが、術後リハビリを始めてから

    判明した場合はリハビリを遅らせたり、再手術を要することがあります。

    ○神経・血管損傷: 予防には細

    らく続いたり、一時的に筋力が低下することがあります。また、体を横向きに固定する

    ための器具による圧迫で、大腿外側のしびれや知覚低下がやはり術後しばらく出る

    ことがあります(手術していない側に出ることもあります)が、時間とともに軽快し

    股関節置換術の手術

  • 股関節置換術の手術

    - 17 -

    いわゆる耐用年数です。ゆるみなどは、痛み

    較的小さな手術

    再置換できますので、定期的に通院していただき、場合によっては痛みがなくても

    くことは非常に大切なことです。ご自分が受ける手術ですので、よく読んでいただ

    ○人工材料に対する反応(アレルギー反応): ごくまれに金属などにアレルギー反

    応を示す方がいます。以前にイヤリング、指輪、時計などの金属製品によるアレルギ

    ーで困ったことがある方は、事前に医師にご相談ください。

    ○人工股関節のゆるみ、破損、摩耗:

    が出る前にレントゲンで発見されます。早期に再置換術をすれば比

    再置換術をお勧めすることがあるかもしれません。

    いろいろと怖いことを並べていますが、事前にどのようなリスクがあるのかを理解して

    き、わからない事がありましたらなんでも主治医にご相談ください。

  • - 18 -

    て股関節をひらき、傷ん

    手術の準備が整うととのう

    と、患者さんを手術室へお連れします。そこで麻酔ま す い

    をかけます。

    麻酔の効きを確認してから手術を行います。股関節を分け

    手 術

    だ骨を全てきれいに取り除き、人工関節を固定します。

    骨の切除

    太腿の骨の骨頭を切り、骨盤側の

    受け口(

    寛骨臼)の表面を滑らか

    にします。人工関節のカップを骨

    盤にはめ込みます。ネジやセメン

    新しい関節の設置 人工関節を太腿の骨にはめ込み

    ます。 人工関節がしっかりはまったら、

    人工の骨頭とカップを組み合わ

    せます。 この場合もセメントを使うこと

    があります。セメントを使うかど

    うかは主治医が患者さんの骨を

    見て、最適な方法を選びます

    トを使って固定します。

  • - 19 -

    尿カテーテル(尿を出す細い管)とドレーン(出血した血液が体内にたまらない様

    が入っています。背中には麻酔のチューブが入っています。

    観察し

    ○外転枕(がいてんまくら)と呼ばれる三角形の固めのスポンジを両足の間にはさみ

    ます。これは関節が脱臼しないように正しい位置に保っておくためのものです。

    ○静脈血栓予防のために下肢を圧迫して血行を促す器械を装着(フットポンプ)しま

    す。また、腫れを抑えるため局所を冷やす場合もあります。車椅子に移れるように

    なったらフットポンプははずしますが、その後は弾性ストッキングを着用します。

    ○股関節の動きが悪い方は、手術後数日目からCPMと呼ばれる器械を使って股関

    、坐薬で鎮ちん

    た、

    背中から麻酔のチューブが入っており、痛み 膜外

    麻酔といいます)。痛みが強いときに自分で薬を 痛

    剤を使っても、多少の痛みを感じることもあ ない場

    合や何か変ったことがおこりましたら、必ず看護師にお申し出下さい。

    に外に出す管)

    手術直後から、患者さんの様子を ます。

    節、膝関節を動かします。

    手術後数日間は注射や点滴てんてき

    痛剤つうざい

    を投与される場合があります。ま

    止めがゆっくりと入っていきます(硬

    追加する装置も付いています。鎮

    ります。しかし、薬で痛みが和らが

    手術後

    手術後

    病室で

    痛みの除去

  • リハビリテーション:後療法

    - 20 -

    リハビリテーションはベッド上での簡単な運動から始まります。

    くして腫れは れ

    を引かせる方法などをお教えします。太腿ふとも も

    の前面の筋肉をき

    ~7日目)には、立ち上がって歩きはじめ

    の内容により個人差がありますが、大多数の患者さんではリハビリ開始時

    を の

    起こすことはかまいません。看護師とともに行ってください。

    血行を良

    えて、脚の力を強くしましょう。この運動によって股関節を安定に保ち、新しい関節

    を守ります。運動は痛みなしに体重を支える役にも立ちます。

    手術後 2~3日目(再置換の場合術後 2

    ます。手術

    は体重をすべてかけてもかまいません。

    ※ 個人ごとに、リハビリテーションの内容が異なることがあります。

    手術当日

    ハビリは手術当日から始まります。麻酔が覚めてきたら、足関節の曲げ伸ばし、膝

    伸ばす運動をしていただきます。可能なら膝立てをしてもかまいません。これら

    運動は合併症を予防する効果もあります。

    術後翌日 :第 1 日目

    1)運動練習:膝、足首の運動を続けます。深呼吸も忘れずにしてください。

    2)体位交換、上半身を

    介助のもとに側臥位を取ることも可能です。

    3)車椅子:術後1日目、もしくは 2 日目には車椅子に移ります。医師の指導のもとに、

    車椅子に移ります。

  • の内容、筋

    運動がたくさん

    )関節可動域訓練

    股関節を曲げる方向、開く方向を中

    手術後

    ※これ以外の運動も、医

    手術後数日~退院 :手術

    車椅子に移った翌日(術後 2-3日目)に

    1)歩行訓練(理学療法部にて練習しま

    平行棒の間で歩くことから始め、そ

    2)筋力強化

    ベッド上でも行える

    3

    脚をまっすぐに伸ばし、太腿の筋肉にゆっ

    左右 10 回ずつ行ないます。

    の筋肉に力を入れ大声で 10 数えます。

    外転運動 脚の間に枕をはさみます。一方の脚を外側

    四頭筋運動

    くり力を入れて大きな声で 10 数えます。

    足首屈伸 足首を曲げ伸ばしします。左右交互に各10 回ずつ行ないます。 殿筋運動 お尻

    10 回繰返します。

    に広げます。この時、膝のお皿が上を向いているようにします。ゆっくり脚を元に戻します。各 10 回ずつ繰返します。

    - 21 -

    力などに応じて時期は異なります。

    器や杖を使って歩く練習をします。

    ありますので頑張りましょう

    心に訓練します。関節が柔らかくなると

    師・理学療法士の指示に従って行ないましょう。

    はリハビリ室でのリハビリが始まります

    す)

    の後歩行

  • - 22 -

    動作が楽になります。関節が硬い方は

    )日常生活指導

    床からの立ち上がりや寝返り、入浴方法といった日常生活動作を脱臼しない肢

    位で行う方法を練習します。

    医師、看護師に従って一歩一歩進めてくださ

    めてはいけません。

    院の目安は杖をついて安定して歩行

    を使って階段の上り下りができることです。

    院期間は片側の手術の場合 2-3 週間

    程度です。

    靴下をはく、爪を切るといった日常生活

    ベッド上で器械を使って股関節を動かします。

    4

    ※ い。自分で勝手にす

    退 ができること、手す

    入 程度、両側を同時に手術した場合 3-5 週

    月/日

    ベッド→車いす移動 /

    車いす移動→トイレ /

    リハビリ-平行棒 /

    杖歩行 /

    階段昇降 /

    床からの立ちあがり /

    シャワー浴 /

    <リハビリの進行状況>

    手術後

  • 退院後の注意 退 に治ってきていることを確認し

    して下さい。手術後おおむね 3か月、6か月、以降 6か月毎に外

    来受

    で受 付に行ってください。撮影

    の痛みがある場合

    ○38度以上発熱している場合

    をかけることがあります。このような動きは脱

    臼や てしまう原因となり得 すので、気を付けましょう。無理を

    しないことが人工関節を長くもたせる上で大切です。以下のことがらに十分注意して

    くだ

    ○足を組まない、ねじらない

    ○低い椅子、ソファーに深く腰掛けない。

    院後の診察で、医師は患者さんの股関節が順調

    ますので必ず受診

    診します。術後 3ヶ月目の外来では先にレントゲン・CTをとってもらいます。1F

    付を済ませたらまず放射線受 が終わったら 4F の整

    形外科外来で股関節予診票を書いてお待ちください。

    - 23 -

    注意すること

    下記のような症状が現れた場合には、お知らせ下さい。

    ○股関節の痛みが増してきた場合

    ○きずぐちが異常に赤くなったり、熱を持ったり、膿うみ

    や血などが出ている場合

    ○呼吸困難や胸

    動き

    危険な動きは避けましょう

    によっては、人工関節に大きな負担

    人工関節をすり減らし ま

    さい。

  • ○過度の股関節屈曲をしない:屈曲 90度までがめやす

    ○過度の股関節伸展(そらせる動作)をしない。

    ○股関節の過度の内転をしない。

    ○走る、ジャンプなどしない

    ○重い物(20kg以上)は持たない

    退院後の注意

    ものを拾うときは手術した方の足を引いて拾

    います。

    下は膝を外側にひらいて着脱します

    。内側にひねるのは危険です。

    - 24 -

    正座はかまいませんが、足を崩すのは危険

    です。

    (当院リハビリテーション科 資料より)

  • メモ/連絡先

    - 25 -

    重要なことは忘れないようにメモしておきましょう。

    □指示された運動は自宅でも行いましょう。

    とです。

    病院名 東京医科歯科大学 整形外科

    再び正常に歩くために必要なこ

    □その他

    □緊急連絡先(病院)

    電話 03-3813-6111(代表)、03-5803-5678(外来)

    ファックス 03-5803- 形外科医局) 5281(整

    主治医

    股関節専門外来は木曜午後です。

  • - 26 -

    QA 人工関節置換術をすると痛みはとれますか? 痛みはほぼなくなります。傷んだ関節、骨を取り除いてしまいますので痛みの

    筋肉の痛みは術後の筋力強化に

    す。

    Q 手術した股関節を下にして横になってもよいですか? かまいません。多くの場合手術創が大腿の外側にありますので横になったとき

    にあたって痛むことがありますので、すこし軟らかいものを下に敷くとよいでしょ

    う。

    いつまで外転枕を足の間に挟まなければなりませんか? 数日は挟んでおきましょう。その後も横の姿勢(側臥位)では足の間に座布団

    などを挟むか、膝同士をあわせるようにして、脚が交差しないよう気をつけてく

    ださい。

    家でも練習が必要ですか?一日 2倍練習すると、2倍早く直りますか? 筋肉の力を付けたり、関節の動きをよくするための練習はずっと続けてください。

    また、一日にする練習量は適切な量がありますのでそれ以上する必要はあり

    ません。大切なことは毎日休まずに練習することです。

    Q いつまでA 3から 6か月です。筋肉の力の程度、反対の股関節の程度などにより変わりま

    す。杖をはずすことが目

    ようにしてください。また心

    原因が取り除かれるからです。しかし周辺の

    従ってとれてきますので、しばらくは続きま

    A

    QA

    QA

    杖が必要ですか?

    標ではありませんので、十分に力が付いてからはずす

    配な方は 6 ヶ月以降も随時杖を使用してください。

    質問コーナー

  • - 27 -

    車にのってよいですか? かまいません。椅子に座ると同じことですので低い椅子に深く腰掛ける姿勢は

    は入院により長い期間運転か

    して始めてください。 Q かまいません。人工関節置換術をされた方にとってあぐらは脱臼しにくい姿勢

    Q A ます。希望される方は各市町村の担当課より申請書類をもらってきてください。病院で医師が記入いたします。

    自転車に乗ってもよいでしょうか?

    いよ

    Q A 相談下さい。

    いのでしょうか?

    夫婦生活はしてもよいか?

    A かまわないでしょう。股関節をねじらないように気をつけて下さい。

    質問コーナー

    QA避けてください。退院後はじめて運転する場合に

    ら離れますので、十分に練習して、とっさの判断ができるようになってから注意

    あぐらを組んでもよいですか? Aですので大丈夫です。

    人工関節置換術をすると身体障害者の手帳がもらえますか? もらえ

    Q 正座してもよいでしょうか? A 股関節をねじらないようにすればかまいません。足をくずした、いわゆる女座りは避けてください。

    QA かまいません。転倒に気をつけて、また乗り降りの際に股関節をねじらなうにしましょう。

    どの程度の労働が可能でしょうか? 個人や仕事の内容によって異なりますので、主治医にご

    Q 一日に何歩くらいあるいてもよA 他の関節がよければ普通にどうぞ。重い物は持たないように、登山は避けるようにして下さい。

    Q

  • 氏名 患者 殿

    手術日 年 月 日

    手術側 右 左

    人工関節

    治療(手術)の記録

    寛骨臼側

    骨頭

    大腿骨側

    - 28 -

  • 治療(手術)の記録

    - 29 -

    部分 製品名/製造会社/シールなど

    寛骨臼側

    骨頭

    大腿骨側

    使用した人工股関節製品

  • - 30 -

    患者指名

    殿

    手術日 年 月 日

    手術側 右 左

    次回来院 年 月 日

    次回来院 年 月 日

    次回来院 年 月 日

    回来院 年 月 日

    定期検診のメモ

  • - 31 -

    回来院 年 月 日

    回来院 年 月 日

    回来院 年 月 日

    回来院 年 月 日

    回来院 年 月 日

    回来院 年 月 日

    回来院 年 月 日

    定期検診のメモ

  • - 32 -

  • - 33 -

  • - 34 -

    工関節は金属で作られていますので、空港などの金属探知器に反応する可能性

    あります。下記の証明書を参考にしてください。

  • - 35 -

    患者さんの手引き

    人工股関節置換術「より快適な生活へ」

    監修 東京医科歯科大学 整形外科

    古賀大介 神野哲也

    協力 東京医科歯科大学病院 整形外科病棟、理学療法部

    発行 日本ストライカー株式会社

    http://www.stryker.co.jp

    禁無断転載。文章・イラストの一部あるいは全部を引用される場合には、発行元までご連絡ください。

    はじめに股関節のはたらき人工股関節とその固定方法出術による効果手術の準備(入院までに)人工股関節置換術(入院から手術まで)人工股関節置換術の合併症手術後のリハビリテーション退院後の注意メモ/連絡先質問コーナー治療の記録定期検診のメモ