Download - GMOクラウド - fisco.co.jp · 得、ウィルスチェックなどのセキュリティ対策、webサイトの開設など多岐 に渡る。こうしたサービス内容と使用するサーバーの性能、記憶容量によっ
GMOクラウド 3788 東証マザーズ
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2011年9月30日(金)
Company Research and Analysis Report FISCO Ltd. http://www.fisco.co.jp
■Check Point・2011年12月期の第2四半期(1-6月期)はクラウドへ先行投資
・セキュリティサービスは海外展開の強化で更なる成長
・クラウド拡大と償却費減で2012年12月期は増益の可能性
ホスティングサービスとセキュリティサービスを中心としたインターネッ
トソリューションの開発・運用を手がける。
ホスティングサービス事業では、企業の情報システムのクラウド化が進展
するなかで、新たなビジネスチャンスが到来。クラウド対応の新サービスを
今期に入って相次いで立ち上げている。一方、セキュリティサービス事業で
も、企業の情報セキュリティ強化、Eコマース市場の拡大を追い風に順調に
契約件数を伸ばしており、今後も国内外で安定的な成長が見込まれる。
2011年12月期の通期業績見通しは、クラウドサービスの立ち上げ費用増
が響いて、会社計画に対して若干弱含みで推移しているものの、先行投資に
よる端境期と捉えることもできる。2012年以降は新サービスの収益本格寄与
に加えて、営業費用やのれん代の償却負担も軽減することが見込まれてお
り、収益は再び拡大局面に入る可能性が高い。ビジネスモデルがストック型
ビジネスであるとともに、クラウド市場の潜在成長性は高く、今後の同社の
動向に注目したい。
企業調査レポート執筆 客員アナリスト佐藤 譲
■クラウドサービスが本格的に始動
6,7427,187
7,5948,333
9,791
1,156
1,0641,141
804
943
-1,000
1,000
3,000
5,000
7,000
9,000
11,000
13,000
15,000
07.12期 08.12期 09.12期 10.12期 11.12期(予) 0
200
400
600
800
1,000
1,200
1,400
売上高 営業利益
売上高と営業利益の推移(単位:百万円)
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■会社沿革
1993年12月、テレコミュニケーションのシステム設計並びにコンサルティングを主業務として、同社の前身となる有限会社アイルが設立されたのが始まり。90年代に入ってパソコンの普及拡大、インターネット環境の整備が進んだことで、企業向けのホスティングサービス(サーバーの貸し出し)の需要が立ち上がるとみて、96年に現在の中核事業となるホスティングサービス事業を開始した。また、97年には有限会社から株式会社に改組したほか、米国でのホスティングサービス子会社としてWEBKEEPERSを設立。国内でもホスティングに対する顧客の様々なニーズに応えるため、別会社としてラピッドサイトを設立した。
その後、2001年にグローバルメディアオンライン(現GMOインターネット<9449>)の資本参加を受け、グループ入りを果たした。資本参加を受けた背景には、将来的な寡占化の流れなかで、競争力を保ち続けるためには、スケールメリットを活かすことが 重要課題であったことなどが挙げられる。そうしたなかで、経営理念や今後の方向性などが一致したグローバルメディアオンラインの資本参加を受けることを決断した。
2003年には事業合理化の一環として子会社のラピッドサイトを吸収合併。2003年にはセキュリティサービス事業へ参入するため、業界第2位であった米ジオトラストと日本での独占販売契約を結び、日本ジオトラストを設立した。また、同年に会社名をGMOホスティングアンドテクノロジーズに変更している。
その後、同社は競争力強化のため積極的にM&Aを展開していく。2005年にホスティングサービス事業強化のため、アット・ワイエムシーを子会社化。また、同年9月に会社名をGMOホスティング&セキュリティに変更し、12月には東証マザーズに新規上場を果たした。
2006年にはセキュリティサービス事業で大きな転機が訪れる。日本ジオトラストの契約先であった米ジオトラストが業界トップの米ベリサインに買収され、今後の経営方針の転換を余儀なくされたためだ。日本にも既にベリサインの子会社があったため、ジオトラストのセキュリティサービスはいずれ収束せざるを得ないと判断。逆に、この機をチャンスとみて海外での積極展開に打って出た。まず、同年8月に欧州におけるジオトラストの主要販売代理店であったCertification Services(英)を日本ジオトラストが買収、次いで10月に同子会社を通じて電子証明書発行サービス会社であったグローバルサイン(ベルギー)の買収を実施。これにより、ジオトラストのマイナスの埋め合わせをできただけでなく、海外での事業拡大も可能となった。実際、2007年に米国、2008年に中国、2010年にシンガポールと相次いでセキュリティサービス事業の子会社を設立し、海外展開の強化を進めている。
一方、国内では、2009年にホスティングサービスの営業強化、並びにソリューションサービス事業参入のため、コミュニケーションテレコムを買収。2010年にはホスティングサービス事業強化のため、アイティーネクストホールディングス並びにその子会社であるワダックスの買収を行った。
情報システム業界のなかで今後、普及が進んでいくとみられるクラウドコンピューティングシステム、その成長の一端を同社も担っていくという意気込みのもと、2011年4月には会社名をGMOクラウドに変更した。
クラウド市場の成長を担う意気込みで社名を変更
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■事業概要
(1)ホスティングサービス事業
ホスティングサービス事業は、2010年12月期で売上高が6,153百万円、営業
利益が835百万円とそれぞれ全体の73.5%、80.2%を占める中核事業となって
いる。ホスティングサービスとは、インターネットを介して情報を発信する
サーバーの容量の一部を顧客である企業や個人に貸し出すサービスのこと。
通常インターネットにある情報は、サーバーと呼ばれるコンピューターに
保存されており、そのサーバーにあるファイルにインターネットを介して遠
隔地からアクセスし、その情報を閲覧・利用している。企業や個人が自前で
サーバーを用意し、運用・管理していくにはコスト負担が重いといった場合
に、ホスティングサービスを利用する。
サービスの内容は、ドメイン(インターネット上の住所のようなもので、
企業の場合xxx.co.jpなど@以下のアドレス)の取得からメールアドレスの取
得、ウィルスチェックなどのセキュリティ対策、WEBサイトの開設など多岐
に渡る。こうしたサービス内容と使用するサーバーの性能、記憶容量によっ
て使用料金が細かく分かれている。
また、サーバーの使い方によって、共用サービス、VPSサービス、専用サー
ビスなどに分けられる。
・共用サービス
1台のサーバーを複数の顧客で利用・運営するサービス。1顧客で1台の
サーバーを専有するよりも低価格でサービスを利用することができる。
・VPS(仮想専用サーバー)サービス
共用サーバーでありながらサーバーの稼動性を確保するなど、専用サービ
ス特有のサービスも取り入れたサービスのこと。共用サーバーに特殊なソフ
トをインストールし、仮想的に専用サーバーと同等の機能を提供する。この
ため専用サーバーよりも低い料金で利用することができる。
・専用サービス
1台のサーバーを1顧客が貸し切りで使用するサービス。 1台のサーバーを
独占できるため、他顧客の利用状況に影響を受けることなく、ハードウェア
やソフトウェアの拡張ができ、高速かつ安全な運用が可能となる。その分、
使用料金は割高となっている。
2010年の国内市場規模は4,000億円強とみられており、その大半は大企業が
利用する専用ホスティングサービスで、中小企業や個人事業主などが主に利
用する共有サービスは500億円弱となっている。同社の直近5年間の売上高と
償却前営業利益率の推移はグラフの通りで、利益率がここ数年低下傾向にあ
る。これは業界内での価格競争により共用サービス、VPSサービスの1契約あ
たりの平均単価が下がっているためとみられる。
平均単価は下落も契約件数は順調に拡大
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2010年12月期のサービス別売上高の内訳は、共用サービスが2,203百万円、
VPSサービスが744百万円、専用サービスが2,400百万円、OEM・他が807百万
円となっている。専用サービスのなかには上位プランのサービスとなるマ
ネージドホスティングサービス(サーバーの調達からシステム構築、運用管
理、障害発生時の対応までシステム管理全体を請け負う)も含まれている。
なお、契約件数は2010年度末で合計約130,000件となっている。OEM契約を除
く全てのサービスで契約件数は順調に伸びている。2010年12月期に共用サー
ビスの件数が大きく伸びたのは、買収したワダックスの効果(約24,000件)
も大きい。
ホスティングサービス事業の業績推移
5,136
5,7426,007 6,148 6,153
21.40%
24.30%23.00%
25.00%
27.40%
0
1,000
2,000
3,000
4,000
5,000
6,000
7,000
8,000
9,000
10,000
06/12 07/12 08/12 09/12 10/12
0.00%
5.00%
10.00%
15.00%
20.00%
25.00%
30.00%
売上高(百万円) 償却前営業利益率(%)
契 約 件 数 の 推 移 ( 単 位 : 件 )
0
20,000
40,000
60,000
80,000
100,000
120,000
140,000
160,000
06/12 07/12 08/12 09/12 10/12
共用 VPS 専用 OEM
ホスティングサービスの利益率は徐々に低下
OEM契約を除くサービスで契約件数は順調
2010年12月期の共用サービス件数の大きな伸びは、買収したワダックスの効果も大きい
■事業概要
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同社の競合企業としては、さくらインターネット<3778>、NTTコミュニケーションズ、NTTPCコミュニケーションズ、KDDI<9433>などが挙げられるが、参入企業は中小含めて多数にのぼる。サービスの内容、機能に関しては殆ど変わらないことから、同社では子会社も含めて複数のサービスブランドで商品ラインナップを揃え、顧客の多様なニーズに応えていくことで、契約件数の維持・拡大を進めていく戦略だ。
なお、ホスティングサービスの販売チャネルとしては、自社での直接販売以外に、ビジネスパートナーや販売代理店など約6,300社と提携し、全国規模で展開している。連結子会社としては、国内ではアット・ワイエムシー、ワダックス、米国ではGMO CLOUD AMERICA INC.が同事業を展開している。
契 約 件 数 の 推 移 ( 単 位 : 件 )
(2)セキュリティサービス事業
セキュリティサービス事業は、2010年12月期で売上高が1,649百万円、営業利益が204百万円とそれぞれ全体の20.2%、19.7%を占める事業となっている。同事業はインターネットを介して電子認証を行うときに必要となる「電子証明書」を発行するサービスのこと。インターネットを介して取引を行うときに、相手先が実在している相手かどうかの確認、あるいは送受信する内容が第三者に不正利用されることを防ぐために電子認証が必要となっている。この電子認証を行うために必要な「電子証明書」の発行を行っているのが子会社のグローバルサイン(ベルギー)で、顧客からの申請の取次ぎサービスを日本、米国、英国、中国、シンガポールの子会社などで行っている構図だ。
また、認証サービスの種類としては、SSLサーバ証明書、クライアント証明書、ドキュメント証明書、ソフトウェア証明書の4つに分かれており、同社の売上げの大半はSSLサーバ証明書の発行サービスとなっている。SSLサーバ証明書とはウェブサイトの所有者の情報、送信者情報の暗号化に必要な鍵、発行者の署名データを持った電子証明書のこと。役割としては、①証明書に表示されたドメイン(サーバー)の所有者であることの証明、②ブラウザとウェブサーバー間でのSSL暗号化通信の実現、がある。これによりサイトの訪問者は「情報の送信先」や「送信する情報が暗号化されること」を確認することができ、安心して情報を送ることが可能となる。料金に関しては、証明書の種類や契約期間によって異なっている。
グローバル市場で着々とトップを追い上げ
■事業概要
種類年額
(税込)特徴
審査のオンライン化による低価格を実現
短2分のスピード発行
書類不要の簡単申し込み
企業実在証明で信頼度アップ
短即日発行
書類不要の簡単申し込み
フィッシング対策強化
短10営業日発行
安全を一目で認識可能な緑のアドレスバー
出所:GMOグローバルサインHPより抜粋
SSLサーバ証明書のタイプ別価格表
クイック認証SSL
企業認証SSL
EV SSL
36,540円
62,790円
134,400円
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同市場ではベリサインが圧倒的なシェアを握っているが、国内ではグローバ
ルサインが2番手となっており、セコムトラストシステムズ、サイバートラスト
などが続いている。一方、欧米市場ではベリサイン、コモド、ゴーダディに次
いでグローバルサインは4番手につけている。業界の構図としてはトップシェア
を持つベリサインに対して、価格面での割安感を出して2番手以下の企業が着々
と追い上げているといった状況がここ数年続いている。
直近5年間の売上高、償却前営業利益率、発行枚数、販売代理店などの推移は
グラフの通りで、発行枚数、売上高の増加に伴って利益率も上昇していること
がわかる。2007年12月期に利益率が一旦落ち込んだのは、前述したように米ジ
オトラストがベリサインに買収され、同社がグローバルサインの買収を行って
ブランドを切り替える端境期にあたったためだ。
契 約 件 数 の 推 移 ( 単 位 : 件 )
セキュリティサービス事業の業績推移
営業利益と償却費の推移(単位:百万円)
583
974
1,097
1,333
1,650
26.68%
20.13%
10.52%
0.00%
31.22%
0
200
400
600
800
1,000
1,200
1,400
1,600
1,800
06/12 07/12 08/12 09/12 10/12
0.00%
5.00%
10.00%
15.00%
20.00%
25.00%
30.00%
35.00%
売上高(百万円) 償却前営業利益率(%)
132
-211
-282
56
205
50
211
397
212
235
-400
-300
-200
-100
0
100
200
300
06/12 07/12 08/12 09/12 10/12
0
50
100
150
200
250
300
350
400
450
営業損益 償却費グローバルサインの買収で2007年12月期より償却費が増加
グローバルサイン買収を軌道に乗せて利益率が急激に回復
■事業概要
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契 約 件 数 の 推 移 ( 単 位 : 件 )
販 売 代 理 店 の 推 移
SSL サ ー バ 証 明 書 発 行 枚 数
海外代理店の急拡大が証明書発行枚数の拡大を支えている
国内も高い成長率だが、海外は更に高い成長率を達成している
5,051 5,946 6,955 7,802
3,227
10,223
14,455
18,869
0
5,000
10,000
15,000
20,000
25,000
30,000
08/12 09/12 10/12 11/6
日本 海外
544 613 675 697
954
1,391
2,019
2,537
0
500
1,000
1,500
2,000
2,500
3,000
3,500
08/12 09/12 10/12 11/6
日本 海外
■事業概要
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2011年9月30日(金)
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(3)ソリューションサービス事業
ソリューションサービス事業は、2010年12月期で売上高が530百万円、営業利益が0.7百万円とそれぞれ全体の6.3%、0.1%とまだ同社グループのなかでは小さい事業となっている。現在は子会社のGMOスピード翻訳において展開している「スピード翻訳サービス」、子会社のコミュニケーションテレコムにおいてホームページ制作のコンサルティングサービスを提供する「WEBコンサルティングサービス」、オフィス機器・情報通信サービスのトータルコーディネートを行う「オフィスコンサルティングサービス」等のIT支援サービスを、中小企業や大学、個人事業主向けなどを対象に展開している。2010年12月期に売上高が大きく伸びたのは、2009年11月に買収したコミュニケーションテレコムの上乗せ効果が大半を占める。
国内の翻訳サービス市場については年間2,000億円規模と言われており、今後の成長ポテンシャルは大きい。ただ、一般企業などは翻訳業者が固定化されている傾向が強く、売上げの拡大ペースは緩やかなものに留まっている。
契 約 件 数 の 推 移 ( 単 位 : 件 )
ソリューションサービス事業の業績推移
2010年12月期の売上高の大きな伸びは2009年11月に買収したコミュニケーションテレコムの上乗せ効果
24 25
83
113
530
4
9
-6
-4
1
0
100
200
300
400
500
600
06/12 07/12 08/12 09/12 10/12
-20
-15
-10
-5
0
5
10
15
売上高(百万円) 営業利益(百万円)
2000億円規模の翻訳市場を攻略へ
■事業概要
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■業績動向
(1)2011年12月期の第2四半期決算
8月8日に発表された2011年12月期の第2四半期(4-6月期)決算は、売上高が前年同期比8.6%増の2,236百万円、営業利益が同39.4%減の167百万円、経常利益が同33.7%減の190百万円、四半期純利益が同20.3%減の128百万円と増収減益の決算となった。
売上高は前年8月に子会社化したワダックスのホスティングサービス事業の売上げ上乗せ分が寄与したものの、クラウドサービス開始に伴う営業費用の増加が嵩んだことが響き減益決算となった。特に、この5月にクラウド市場での認知度向上を図るため、「クラウドコンピューティングEXPO春」に出展したこと(出展費用で約30百万円)、また、のれん代を含めた償却費も前年比で54百万円増加したことが、主な減益要因として挙げられる。部門別の状況は以下の通り。
①ホスティングサービス事業2011年12月期の第2四半期(4-6月期)の売上高は前年同期比12.1%増の1,682
百万円、営業利益は同41.9%減の119百万円となった。売上高の増収要因は前述したようにワダックスの売上げ寄与分が大半を占めた。ただ、既存の共用ホスティングサービスは昨年立ち上げた低価格ブランド「ロケットネット」や「DOMAINKING」に注力したこともあり、契約件数は順調に伸びたものの、利益面が伸び悩んだ。一方、専用ホスティングサービス事業は、業界全体では景気低迷の影響で苦戦が続いているが、同社はVPSサービスの拡充もあって堅調に推移している。
営業利益が大きく落ち込んだのは、クラウドサービス事業開始に伴う広告宣伝費、営業人員増などの費用増加と、ワダックスの子会社化によるのれん代によるもので、こうした負担増がなければほぼ前年同期並みの利益水準だったと言える。
②セキュリティサービス事業2011年12月期の第2四半期(4-6月期)の売上高は前年同期比2.5%増の450百
万円、営業利益は同23.4%減の47百万円となった。売上高こそ伸び悩んだものの、SSLサーバ証明書の発行枚数に関しては、国内が前年同期比13.4%増の7,802枚、海外が同61.6%増の18,869枚と2桁成長が続いている。販売代理店に関しても、この5月にKDDIと代理店契約を結ぶなど順調に増加、6月末では前年同期比で36.2%増の3,234件となった。
売上高の伸びが発行枚数と比べて鈍かったのは、単価の低い証明書の比率が上昇したことに加え、為替の円高シフトなどが要因として挙げられる。また、減益となったのも円高の影響と商品構成の変化が要因とみられる。
③ソリューションサービス事業2011年12月期の第2四半期(4-6月期)の売上高は前年同期比5.0%増の143百
万円、営業利益は同73.4%増の4百万円となった。3月の震災の影響で東北地方の一部において物流面での影響がでたものの、全体的にはスマートフォン向けのWEBサイト制作サービスの受注増加や電子ブック配信サービス、スピード翻訳サービスなどが順調に推移し、増収増益となった。スピード翻訳サービスとは、インターネット上で顧客である会員がスピード翻訳に登録している翻訳家に注文を出す形態をとっており、WEB上で各翻訳家のスキルや価格なども一覧で把握でき、使い勝手の良いシステムとなっている。このため、個人や大学・中小企業を中心に会員数は順調に拡大、6月末は前年同期比で61.1%増の13,556件に達している。
クラウドサービスへの先行投資を敢行
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(2)2011年12月期見通し
2011年12月通期の業績見通しについて、会社側では売上高が前期比17.5%増の9,791百万円、営業利益が同8.6%増の1,156百万円、経常利益が同7.6%増の1,150百万円、当期純利益が同6.6%減の636百万円という期初の計画を維持した。
上期業績については期初の会社計画に対して売上高で299百万円、営業利益で73百万円、経常利益で41百万円下回ったことから、通期計画の達成に対しても未達懸念が残るところだ。これに対して、会社側では上期の計画下振れの要因については、クラウドサービス開始に向けた先行投資負担増が嵩んだことが主な要因とみている。一方、通期計画に対しては売上げの進捗ペースは確かに厳しいものの、現在、クラウドサービスにおけるエンタープライズ系の引き合いが予想以上に多く入ってきており、こうした大口案件が第4四半期で寄与してくるようだと期初計画線まで挽回の可能性もあるとし、今回は期初計画を維持している。こうした大口案件の売上げまでのリードタイムは2~4ヶ月あるため、第3四半期の決算発表頃には通期の見通しもある程度見えてこよう。
いずれにしても、今期にサービスを開始したパブリッククラウドサービス「 GMOク ラ ウ ド Public 」 と バ ー チ ャ ル プ ラ イ ベ ー ト ク ラ ウ ド サ ー ビ ス「IQcloud」がどの程度、契約を伸ばせるかが、今下期以降の同社の業績の鍵を握っていると言えよう。
クラウドサービスでエンタープライズ系の引き合い予想以上
■業績動向
決算期 売上高 前期比 営業利益 前期比 経常利益 前期比 純利益 前期比EPS(円)
配当(円)
07.12期 6,742 17.4% 943 -30.3% 812 -43.5% 371 -56.2% 3,195.82 2,180.00
08.12期 7,187 6.6% 804 -14.8% 787 -3.0% 70 -81.0% 606.60 1,600.00
09.12期 7,594 5.7% 1,141 41.9% 1,159 47.2% 613 769.2% 5,270.52 1,850.00
10.12期 8,333 9.7% 1,064 -6.7% 1,069 -7.8% 681 11.1% 5,859.72 -
11.12期(予) 9,791 17.5% 1,156 8.6% 1,150 7.6% 636 -6.6% 5,485.43 2,000.00
通期業績の推移(単位:百万円)
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■注目事業の動向
(1)クラウドサービス
クラウドサービス市場の成長性について、IT専門調査会社であるIDCジャパン
が今年6月に発表した資料によると、2010年に前年比43.5%増の454億円だった
国内の市場規模は2015年に5.6倍増の2,557億円に急成長すると予測している。
5年間の年平均成長率では41.3%成長となる計算だ。
高成長が見込まれるクラウドサービス市場
国内クラウド市場の見通し(単位:億円)
316
454
660
2,557
0
500
1,000
1,500
2,000
2,500
3,000
2009年 2010年 2011年 2015年
企業の情報システムをクラウド化することに対して、従前はセキュリティ面
での心配を挙げる声が多かったが、3月の震災後は情報システムの維持管理コ
ストの低さだけでなく、災害に対するリスク分散という観点からも、クラウド
化に対する評価が高まってきているようだ。世界のクラウドサービスの市場規
模は2015年で2010年対比3.4倍の729億ドルに達するとも予測されており、情
報システムの構築形態が一気にクラウド化へ移行していく勢いとなっている。
そもそもクラウドコンピューティングとは、情報処理システムの形態の一種
でインターネットを介したコンピューターの利用形態のことを言う。対極に位
置するのは、コンピューターなどのハードウェア、ソフトウェア、データなど
を自分自身で保有・管理し、情報処理を完結する形態となる。このためクラウ
ドの概念自体はなんら新しいものではなく、従前からも利用されてきたもの
だ。
IDC調べ国内クラウド市場の5年平均成長率は41.3%と急拡大
GMOクラウド
12
2011年9月30日(金)
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ただ、ここにきて注目を浴びているのは、インターネットの高速化によっ
て、クラウドコンピューティングのサービスの内容がより高度なところまで実
現できるようになったこと(単にデータの処理だけでなく、アプリケーション
ソフトなども一緒にインターネットを介して、サーバーから引き出しクライア
ント側で処理できるようなる等)、セキュリティ対策の強化が進み情報漏えい
のリスクが低くなる等、ユーザー側からみて導入を進めやすい環境が整ってき
たためだ。実際、国内外の政府機関なども一部の情報システムに関して、クラ
ウドサービスへの移行を進めつつある。
クラウドサービスの身近な例としてはWEBメールなどがある。また、現在は
個々のパソコンに必要なアプリケーションソフトを導入し、それぞれの処理を
行っているが、そうしたソフトも全てインターネットを介して必要なときにダ
ウンロードし利用できる環境となる。
クラウドコンピューティングの提供サービスの種類としては大きく分けて以
下の3タイプに分けられる。
■ SaaS(Software as a Searvice)・・・インターネット経由のソフトウェア
パッケージの提供。電子メール、グループウェアなど。
■ PaaS(Platform as a Service)・・・インターネット経由のアプリケーショ
ン実行用のプラットフォームの提供。仮想化されたアプリケーションサー
バーなどで顧客が自分のアプリケーションを配置し運用できる。
■ IaaS(Infrastructure as a Service)・・・インターネット経由のハードウェ
ア、インフラの提供。仮想化サーバーや共有ディスクなど。顧客が自分で
基本ソフトなどを含めてシステム構築・運用できる。
いずれにしても、こうした情報システムのクラウド化の流れは今後ますます
進んでいくのは必然の流れで、同社にとっても新たなビジネスチャンスになる
ことは間違いない。同社では、今年4月に「IQcloud」、6月に「GMOクラウド
Public」のサービスをスタートさせた。
「IQcloud」は中小企業~大企業向けのサービスで高信頼、高い柔軟性(カス
タム対応、申し込みから2日でサーバー準備可能など)、高いコストパフォー
マンス(3,500円/日)が特徴だ。
一方、「GMOクラウド Public」は、必要なリソース分にあわせたスペック構
成が可能で、安価(1.5円/時間)な料金設定とサービス開始まで3分という速
さが特徴となっている。いずれもIaaS型のサービスとなっており、サーバー負
荷量が時間ごとに変わってくるコンテンツ企業やネット販売業など様々な業種
に営業活動を展開中だ。
■注目事業の動向
バーチャルプライベートクラウド「IQcloud」
パブリッククラウド「GMOクラウド Public」
「IQcloud」SLA 99.999%初期0円/月102,900円からの低価格運用・監視の代行サービス月3,150円
「GMOクラウド Public」初期0円/月950円からの超低価格ソース提供型パブリッククラウドで常にコストの 適化が可能トラフィック課金0円
GMOクラウド
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2011年9月30日(金)
本資料のご利用については、必ず巻末の重要事項(ディスクレーマー)をお読みください。
国内で同様の形態でクラウドサービスを先行させているのはIIJ<3774>。GMOクラウドよりも1年程度早くサービスを開始しており、今期の売上げ計画は前期比5倍増の30億円超を見込んでいる。ちなみに、米国ではNY証券取引所に上場しているRackspace社がある。同社はホスティングサービス専業の会社だが、このうちクラウドサービスの売上高は2008年の25百万ドルから2010年は100百万ドルに、契約件数も34,820件から110,895件へと急成長を続けている。
■注目事業の動向
(2)セキュリティサービス
セキュリティサービス事業はグローバルサインの買収以降、順調に発行枚数を拡大させてきた。今後も電子商取引市場の拡大や企業の情報セキュリティ強化などによって電子認証サービスの需要は右肩上がりに伸びていくと思われる。こうしたなかで、同社はシェアの低い海外市場での展開を一段と強化していく方針だ。
そのために、今8月に米OnApp社、米Parallels社と相次いで業務提携を発表した。両社ともクラウドコンピューティングにおける導入ソフトの開発会社で、グローバルサインが開発した「ワンクリックSSL」を自社のソフトウェアに組み込んで、ホスティング事業者に販売するというのが今回の提携の趣旨だ。このため、これらのソフトウェアを導入したホスティング事業者の顧客は自動的にグローバルサインのSSLサーバ証明書を申請、利用することになる。とりわけParallels社は従来、競合であったコモド社のSSLサーバ証明書をオンラインマーケットの市場で採用してきた経緯があり、今回の提携によってグローバルサインがコモドからシェアを奪うチャンスができたことになる。
今回の提携のきっかけとなった「ワンクリックSSL」とは、従来煩雑な手間と時間を掛けていたSSLサーバ証明書の申請からインストールまでの作業を、1分以内という短時間で実現可能とした世界初の技術。特許も取得し、同業他社に対して競争力のある技術と評価されたわけだ。この「ワンクリックSSL」以外にも、クラウド向けサービスとして複数台で同時利用可能な電子証明書の発行サービスも今期より開始している。こうした先進的な技術開発、顧客提案力などが評価され、今後も提携パートナーが増えていく見通しだ。市場シェアアップのためには販売チャネルをどう拡大していくかが鍵を握るため、ソフト開発会社を含めてホスティングサービス事業者を囲い込む戦略が今後、シェアアップに繋がるものとして期待される。
同社では現在の日米欧の市場を中心に構築した、3,234社(2011年6月末)の販売代理店を、将来的には1万件まで増やし、受注件数で現在の2倍程度までの拡大が実現可能とみている。これに加えて中長期的にはアジア新興国での潜在需要獲得も期待される。そのために、中国に2008年、シンガポールに2010年に子会社を設立し、営業活動を行っている。中国では1年前から外資系、国営企業からの注文が増え始めており、2012年頃から連結対象会社として業績に反映される可能性があり、今後の動向が注目される。
以上、同社の主力となる2つの事業についてみてきたが、2012年12月期以降はこれらの事業が牽引して、収益は再び拡大局面に入る可能性は十分にある。2012年12月期業績に関しては、クラウドサービスの契約状況によるところが大きいが、費用面ではのれん代の償却負担が1億円強減少すること、新サービス導入のための広告宣伝費用や社名変更費用などその他経費の減少も数千万円レベルで減少が見込まれることなどがプラス要因となるため、仮に売上高が伸び悩んだとしても増益となる可能性は高い。
グローバル展開の強化で更なる成長目指す
GMOクラウド
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2011年9月30日(金)
本資料のご利用については、必ず巻末の重要事項(ディスクレーマー)をお読みください。
なお、M&Aに関してはホスティングサービス事業で引き続き案件があれば前向きに検討していく方針。
後に株主還元策に関して、同社では連結ベースでの配当性向基準で35%を一つの目処としている。また、自己株式の購入に関しては今のところ予定はないようだ。
■注目事業の動向
GMOクラウド 2011年9月30日(金)
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以上の点をご了承の上、ご利用ください。
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