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2016/01/30-31 FOSDEM2016報告

西村明生本稿の内容はクリエイティブ・コモンズの 表示 - 継承 4.0 国際のライセンスで利用できます。

http://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0/

cba

2016年 4月 7日

29 日の朝 10:05 に Rennes 駅を出発し、14:07 に Lille Europe 駅着で乗換

14:35発、15:12に BRUXELLES MIDI駅着でブリュッセルまで行きました。

地下鉄で Comte de Flandre駅まで行き、ホステルに着きました。ホステルは

ネットのレビュー通りかなり良いところでした。ホステルの近くを散歩して

みると、近くにモスクが 2件あってどうやらムスリム地区らしくムスリム向け

の店がたくさんあって、それからなぜか自動車の修理工場、部品屋、洗車屋な

どがかなりの数で連なっていました。ベルギーは工業国なのだなと実感しま

した。

30日の朝、ホステルから地下鉄を使って De Broukère駅まで行ってそこか

ら 72番バスで FOSDEM会場のブリュッセル自由大学 (ULB)へ向かう予定

だったのですが、De Broukère にはバスが交通事情で来ないという張り紙が

あって、結局また地下鉄に乗り直して Naamsepoort駅まで行ってバスに乗る

ということになりました。ところで、ブリュッセルはフランドル地方 (オラン

ダ語圏) なのにも関わらず、1830 年のベルギー独立当時石炭と鉄鋼業で栄え

ていたフランス語圏のワロンが強かったためにフランス語が公用語になってい

て、しかしながら主要エネルギーが石油に代わってからは自動車工業が発達し

たオランダ語圏の方が発言力が強くなっているという、かなりややこしい所の

ようです [1]。そしてブリュッセルでの仕事の大半はフランス語、オランダ語

そして英語の全てが使えることが条件になっているようです。そのような背景

のためか、ホステルで係員にフランス語であいさつするとあまり良いような感

じでなく、むしろ英語を話したい、というような感じを受けました。異言語・

異文化が陸続きで衝突するのがヨーロッパの特徴の一つのように思うのです

が、ブリュッセルはその特徴の極みのような場所のように感じました。EUの首都と言われるのも何かそのような因

縁があるように思います。

さて、FOSDEMでは目当ての講演の一つ Lennart Poettering氏による"systemd and Where We Want to Take

the Basic Linux Userspace in 2016"[2]を聴きました。システムを単一ソフトウェアで統率し中央集権化し、従来の

GNU/Linuxの UNIX哲学をベースにしたシステムを破壊しつつある systemdの主な開発者である Poettering氏に

よる、systemdがこれからどういう方向に向かうのかという概観を期待していたのですが、実際はかなり細々した開

発方針しか話さなくて、いまいちでした。名前解決には DNS(Domain Name System)というシステムが使われてい

るのですが、本当に信頼できる名前解決をしているのかというのを保証する仕組みが整っていなくて、DNSSECと

いうのがその解決策として提唱されているのですが、DNSSECがまだ普及していないから、systemdの名前解決担

1

当の systemd-resolvedで対応するという話。まだ ISPやエンドユーザーの DNSサーバーがゆる信頼チェインがう

まくいかない状況なので、systemd-resolvedは積極的に証明をダウングレードするが、とりあえずデフォルトにする

ことで普及させようとのことでした。systemdは多くの GNU/Linuxディストリビューションが採用していて、僕は

Linuxのシステムのバランスが崩れるのを心配していたのですが、Poettering氏はそれほど大きなビジョンを持って

やっているわけではなさそうなので、そんなに心配する必要は無いのかもしれないと思いました。

その後、主に「マイクロカーネル」の講演を聴いていました。カーネルには大きく分けて 2 種類あり、モノリ

シックカーネルとマイクロカーネルがあります。モノリシックカーネルの「モノリシック」は映画「2001 年宇宙

の旅」に出てくる物体「モノリス」から来ていて、「モノリスのような一枚岩の」という意味です。モノリシッ

クカーネルは OS が必要なこと (入出力、ネットワーク、デバイスとのやりとりなど) をカーネルの機能に上乗

せしていって同一のメモリ上で行なうカーネルの設計思想のことで、Linux や BSD 系カーネルの多くがこれで

す。一方、マイクロカーネルはカーネルの機能を最小限にして、他の OS に必要な機能ごとに切り離す設計思

想です。GNU プロジェクトの Richard Matthew Stallman(通称 RMS) は GNU システムのカーネルをマイクロ

カーネルで作ろうとして、Linus のモノリシックカーネル Linux に先を越されてしまったというのが有名です。

Martin Děcký 氏による"Porting HelenOS to RISC-V"[3] を聴きました。

HelenOS はマイクロカーネルを採用した OS で、チェコにあるプラハ・カレ

ル大学の数理物理学部の学生を中心にコミュニティベースで開発されている

ようです。BSDライセンスを採用しています。実装を抽象化し、1つの CPU

アーキテクチュアだけに依存しないように作っているようです。

そして、RISC-Vとは、CPU設計の一つで、オープンソースな設計である

ことが最大の特徴です。CPU設計には、現在有名なところで、Intelの CPU

で使われている x86 や x64 があります。そしてこの従来の CPU 設計という

のは、「特許の鉱山」と言われるほどたくさんの特許の塊となっていて、大変や

やこしいのです。そこで、オープンな設計を作ろうという流れが起こっている

のです。Googleなど大きな企業がこのプロジェクトを支援しているようです。

また、GNU Hurd というマイクロカーネルの話 [4] も聴きました。この

GNU Hurdというのが、RMSのGNUプロジェクトのカーネルとなる部分で

す。Linuxに先にスタンダードを奪われてしまったものの、Hurdの開発は続

けられております。ドライバがクラッシュしても、モノリシックカーネルのよ

うにアプリケーションはクラッシュせず、ドライバが再起動するのを待つこと

ができる、というような興味深いデモを見せてくれました。Linuxは未だカー

ネルの完成形ではないということを認識すると同時に、今後マイクロカーネル

の発展に期待を感じました。

この日の最後に、Ludovic Courtès 氏による"Reproducible and Cus-

tomizable Deployments with GNU Guix"という講演 [5] を聴きました。

GNU/Linux のシステムでは、多数のソフトウェアが複雑な依存関係を持っているため、あるソフトウェアをイ

ンストールしたりアップグレードしつつシステムの安定性を保つというのはかなり大変なことなのです。Guixはそ

のような GNU/Linuxのシステムの状態遷移を記録していくことで、システムをより安全にコントロールするための

プロジェクトということを知りました。

30 日はその他いろいろなフリーソフトウェア・オープンソースプロジェクトのブースがあったので見て周りまし

た。Mediawikiの人たちともほんの少し話しました。人がたくさんいて忙しそうだったので、あまり話せる状況では

なかったです。どちらかというとマイナーなディストリビューションの Gentoo Linuxのブースはあったですが、僕

が使っている Slackware Linuxはありませんでした。たぶん、企業のサポートを受けていないから出展する資金が無

いというのと、このような公のイベントに参加するタイプの人たちではないのだと思います。

2

31 日は朝に RMS(Richard Stallman) と Tom Marble 氏のディスカッション [6] を見に行きました。今回の

FOSDEMの目当ての一つです。予想はしていましたが、会場は人がいっぱいでした。RMSはやはり風格がありま

した。フリーソフトウェアについての話を聴きました。彼は最近は「プロプライエタリソフトウェアはマルウェアで

ある」というかなり強烈な主張をしているようです。

その後、いくつか講演を聴いてから、午後に Grand Place周辺を少しだけ観光しました。

参考文献

[1] 国の真ん中に言語境界線?ベルギーの言語事情がすごい - NAVER まとめ, http://matome.naver.jp/odai/

2138097743245154301

[2] FOSDEM 2016 - systemd and Where We Want to Take the Basic Linux Userspace in 2016, https:

//fosdem.org/2016/schedule/event/systemd/

[3] FOSDEM 2016 - Porting HelenOS to RISC-V https://fosdem.org/2016/schedule/event/

microkernels_helenos_riscv/

[4] FOSDEM 2016 - Hurd, Rump kernel, sound, and USB, https://fosdem.org/2016/schedule/event/

microkernels_hurd_rump_sound_usb/

[5] FOSDEM 2016 - Reproducible and Customizable Deployments with GNU Guix, https://fosdem.org/

2016/schedule/event/deployments_with_gnu_guix/

[6] FOSDEM 2016 - A discussion with Richard Stallman, https://fosdem.org/2016/schedule/event/

discussion_with_rms/

3

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