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AGN観測 寺島 雄一 (愛媛大) 1. 銀河と中心核ブラックホールの関係とSMBH形成・進化への制限 小質量/大質量の巨大質量ブラックホール(SMBH) 2. AGNアウトフローによる環境へのフィードバック 3. 特異なSMBHの観測例

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Page 1: AGN観測...BH- σ関係は、エディントン比や赤方偏移に依存し、進化の段階に 応じて異なったM BH-σ関係を示す • 銀河と中心核ブラックホールは完全同時に共進化するのではなく

AGN観測寺島 雄一 (愛媛大)

1. 銀河と中心核ブラックホールの関係とSMBH形成・進化への制限小質量/大質量の巨大質量ブラックホール(SMBH)

2. AGNアウトフローによる環境へのフィードバック3. 特異なSMBHの観測例

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MBH-σ関係、MBH-Mbulge関係

Gultekin+09

¨Marconi & Hunt 03

テキストMBH

(Msolar)

σ (km s-1)

銀河と中心核BHには密接な関係

BHの形成と進化の情報は? ‥‥(1)

互いに影響を及ぼしあいながら進化「共進化」→BHが周囲に与えるフィードバック‥‥(2)

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1. 銀河-中心核BH関係からのSMBH形成・進化への制限

(1) 種ブラックホールの形成

  → その「痕跡」はどう観測されるか

(2) BH形成・進化への観測的制限

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SMBH: 形成と成長Direct Collpase

(Heavy seed)~104MsolarPop III remnant

(Light seed)~100Msolar

  ↓ 質量降着 合体

  ↓

Bulgeを持つ銀河の中心にはSMBHが存在

テキスト

Greene12 arXiv:1211.7082

Runaway stellarmergers

103Msolar

seed BH

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MBH-σ関係の進化 (シミュレーション)

Volonteri 10

Light seed

Heavy seed仮定:

- extended Press-Schechter + numerical merger tree- major mergerで 質量降着がトリガー- MBHがMBH-σ関係を超えたら 成長を止める

大質量BH: 質量降着と合体でseedの情報が消える

Initial MF↓   

Initial MF↓   

Heavy seedならσが小さいところで大質量側にずれる(あまり成長していない seeds)

Light seedならσが小さいところで小質量側にずれる

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BH形成・進化への観測的制限

• 小質量側でのMBH-σ, MBH-Lbulge関係

• 中心核BHを持つ低質量の銀河の割合

• 大質量側でのMBH-σ, MBH-Lbulge関係

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小質量のSMBH:

中間質量ブラックホールの探査

• 典型的なAGNのSMBH質量

• セイファート銀河: 107 - 108Msolar

• クェーサー: 108 - 109Msolar

• cf. 恒星質量BH 10Msolar

• SMBHと恒星質量BHの間: 中間質量BH 102-106Msolar

<106MsolarのAGNも多数見つかってきている

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小質量のSMBHを持つAGN

数密度(Mpc-3)

BH質量関数

SDSS スペクトル広輝線幅を測定中心から広輝線領域までの距離Rは光度から推定  (経験則を使う)

→Virial BH mass MBH = f R Δv2 /G   (f~0.75は放射領域の形状による)

現在では約200個のAGN (<2x106Msolar)が見つかっている

別の方法 -- 後述

Greene+04, 07, Dong+12 Greene+06

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小質量側でのMBH-σ, MBH-Lbulge関係Xiao+11

SDSS低質量AGN

大質量側(AGN, 通常銀河)のほぼ延長上ややBH質量が小さめか?

実線: inactiveなBHのMBH-Lbulge関係

ばらつきが大きいinactive BHの関係に比べBH質量が小さい小質量でflatになっている? massive seedか?

小質量BHは観測されにくいバイアスに注意

○: <2x106 Msolarサンプル

Jiang+11a

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小質量のSMBHを持つAGNの母銀河

Sa SBc Bulgeless spiral

classical bulgeを持つものは少なくpseudo bulgeを持つ円盤銀河が多い bulgeのように見えるが、星生成率や輝度分布を見ると円盤的

  secularな進化をしてきた (Kormendy+11)

- 晩期型が多い- 光度は小さい (~L*-1 mag )- Bulgeを持たないものも ある(5%)

SMBHが存在するためにbulgeは必ずしも必要ない

Jiang+11b

HST/WFPC2 F814W

小質量のSMBHはmergingを経ずに、secularに進化してきたことを示唆

←→ 大質量SMBH + classical bulgeの系は   major mergerを経験してきた

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AGNのMBH-σ, MBH-Mbulge関係Greene+10

水メーザーでBH質量が測られているAGN(円盤銀河)  信頼性高い

 通常銀河よりBHはundermassive

  

Kim+08

エディントン比が大きいAGNのBHはundermassive

より大質量への進化途上を見ている?

z<0.35のtype 1 AGNサンプル

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BHを持つ銀河の割合(Occupation Fraction)

X線中心核の観測:

●: Desroches & Ho 09●: Gallo+10 heavy seedを示唆(tentative)

Prediction>3x105Msolar

Light seed→

Heavy seed ↓

← MBH>3x105Msolar← MBH>1x106Msolar

Model: Volonteri10 (実線、破線)

Heavy seed - dard haloの一部で作られる - BHを持たない銀河の割合が  Light seedの場合に比べ大きい

課題- 中心核BHの10%がactiveと仮定して しまっている- 低光度になるほどstellar mass BHと区別 しにくい

Greene12

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大質量側でのMBH-σ, MBH-L関係

McConnell+11

銀河団中の巨大銀河(Brightest Cluster Galaxy, BCG)のBH質量NGC 3842 (A1367) 9.7x109 MsolarNGC 4889 (COMA cluster) 2.1x1010Mdolar (場所ごとの星の速度分散の面分光観測)

1. major mergerを経て成長 σがあまり変わらずにBH質量と 銀河質量が大きくなる 1015h-1Msolarのdark haloで1010Msolar

 BHもできる (Yoo+07)

  (z~2まではacceretionで成長  extended Press-Scechter+numerical merger tree)

2. 特にmassiveなseedが成長 z~6ですでに109Msolarに成長して いたBHを持つ銀河が、現在のBCG

 へと進化

MBHがややovermassive?

他のBCGのBH質量 (Hlavacek-Larrondo+12)

X線と電波光度を使った間接的な推定 (MBH, LX, Lradの間の関係“BH fundamental plane”)

MBHが約10倍overmassive

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共進化のまとめ

‣ “tentative” picture

• 大質量ブラックホールはmajor mergerを経て進化• バルジの形成、ブラックホールへのfueling+降着

• 小質量ブラックホールはmajor mergerを経ずに少しずつ降着• pseudo bulgeの形成、seed BHの質量の情報を残している

• MBH-σ関係は、エディントン比や赤方偏移に依存し、進化の段階に 応じて異なったMBH-σ関係を示す• 銀河と中心核ブラックホールは完全同時に共進化するのではなく時間差があることを示唆

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2. AGNアウトフローによる環境へのフィードバック

• 1型AGNはUV/X線で吸収線スペクトルを示すものが多い• 中心核からの光で電離されたガスによる吸収

• blueshiftしている → アウトフロー• アウトフローの持つ質量/運動量/エネルギー次第では、周囲の環境に影響をおよぼす‥‥AGNフィードバック• BHへの質量降着を止める• 母銀河での星生成活動を止める• 銀河と中心核BHを共進化させるために注目されている 特にX線で見られる超高速アウトフロー   Ultrafast Outflow; UFO

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電離吸収体 超高速アウトフロー(Ultrafast Outflow; UFO)

• He-like, H-likeにまで電離が進んだ鉄(6.7, 6.97 keV)による吸収線

• 7-9 keVにblueshift → >0.1cのアウトフロー

Cappi 06, Tombesi+10

PG1115+080 Chartas+030.1c, 0.34c

PG1211+643 Pounds+03

PDS 456Reeves+09

0.08c

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セイファート銀河のUFO

XMM-Newton Tombesi+10

42 セイファート40%がアウトフローを示す

アウトフローのcovering fraction ~半分検出限界以下のものも含めるともっと増える→ あまりコリメートされず、大きな  立体角にわたってアウトフローしている

アウトフローが検出されているもののうち 35% >104 km s-1 --- UFO

 25% > 0.1c

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Mechanical Polwer

天体の番号

UFO Non-UFO

LK = Moutflow v2 / 2.

UFO log LK = 42.6-44.6

LK/Lbol > 0.3% 最大のもので LK ~ Lbol

周辺環境にフィードバックを与える 目安 > ~5%

Non-UFO (UV、X線)

log LK = 41.3-42 LK/Lbol ~ 0.02-0.8%

誤差: 不定性を考慮したパラメータ範囲(BH質量、geometry、bolometric correction factor)

Tombesi+12

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ASTRO-H シミュレーション

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現状(XMM, すざく)

- S/N悪い- He-like, H-likeの区別が できないとvelocityの不定性大

ASTRO-H- UFOが本当にあるか検証- He-like, H-likeを確実に区別- outflow velocityを精密に決定- 弱い吸収線、等価幅の変動も  測定可能

(emitter frame)

...... 優れたエネルギー分解能

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フィードバックの現場は見えるかFabian 12

銀河団銀河群の中心銀河

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NGC 5813 (銀河群の中心銀河)

Randall+11Chandra image

ほぼ軸の揃った3つのcavity

  ↓3回のAGN outburst

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まとめ

‣ MBH-σ関係• 銀河と中心核ブラックホールは互いに影響を及ぼしあいながら進化したことを示唆(「共進化」)

• 小質量側はseed BHの痕跡を残している• massive seedを示唆する観測がある• 選択効果の検証、より小質量ブラックホールの観測が必要

• 大質量側は宇宙の高密度領域でのmergingの歴史を反映• 超巨大ブラックホール(~1010Msolar)が検出されつつある

• 進化の兆候は見られるがよくわかっていない• 銀河と中心核BHの共進化は同時に進むのではなく、時間差がありそう

‣ AGNフィードバック• X線で観測されるUltrafast outflow (>10000 km s-1)は、周囲の環境に十分な影響を与える可能性• ASTRO-Hによる定量的測定に期待

‣ 特異なAGN

• データの蓄積から特異な天体が見つかりつつある• 速い変動を示す黒体放射的なX線放射が卓越するAGN

• AGN統一モデルと合致しない2型AGN